伊坂幸太郎著『クジラアタマの王様』(2019年7月5日NHK出版発行)を読んだ。
「特設ページ」にはこうある。
製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく――。
不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。
打ち勝つべき現実とは、いったい何か。
巧みな仕掛けが張り巡らされた、ノンストップ活劇エンターテインメント!
主人公の岸は製菓会社の広報担当。マシュマロの新製品のCMに今人気の小沢ヒジリが出てくれるように栩木係長(とちぎ)が交渉したが事務所に断られる。しかし、なんと小沢がTVで「休みの日はお菓子食べてますよ。マシュマロで包まれた、あれ」「最近、夢中なんですよ」と言ったので、菓子が急に売れ始めた。
しかし、マシュマロに画鋲が入っていたというクレーム電話への担当者対応がまずく、さらにベテランの牧場課長や岸の心配をよそに、変な自信を持つ広報部長が会見で記者たちの怒りを買い、ネットで叩かれるなど大混乱になった。しかし、クレームは……。
クレーマーの夫である都議会議員の池野内から岸へ「ハシビロコウ」の写真付きのメールがあり、会うと、「あの、夢を見ませんか?」と聞かれた。製菓会社員の岸、人気アイドルの小沢、都議会議員の池野内の3人が出会い、現実の世界で共に闘う。昔、3人は金沢のホテル火災現場にいたことがあったとわかる。
3人は現実世界と同時に夢の中で兵士として巨大な化け物と闘が展開される。この夢の中のファンタジー的闘いは文章と、川口澄子によるコミックで描かれる。
コミックは3頁ほどのものがざっと15カ所位文章中に挿入される。文章とコミックの関係は、現実(文章)でトラブルが起きた時、夢の中(コミック)で闘って負けると現実のトラブルが拡大してしまうというという関係がある。
イベントが開かれた埋立地が、橋が壊されて隔離され、サーカスの猛獣が逃げ出して大勢に危機が迫る。
15年後、岸は女子高生・加凛の父親、池野内は厚生労働大臣、栩木は社長になっていた。そして、池野内に疑惑が……。いざ、最後の決戦へ。
タイトルの「クジラアタマの王様」とは前半3人のボスとなる「ハシビロコウ」の学名のラテン語の意味。
本作は書き下ろし。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
いつも文句なしに面白い伊坂作品の中では凡庸レベル。
ファンタジーと漫画が好きでない私には、夢の中では両者が登場するのがマイナスになる。「小説丸」で伊坂さんは、
「小説で殴り合いやカーチェイスを書いても、絶対に映画や漫画で観たほうが迫力がありますよね。なので、小説の中にコミックを入れれば、活き活きさせられるんじゃないかと思ったんです。」と語っているが。
「スマホ」の代わりに「パスカ」という言葉が使われているがなぜ?
魘されて(うなされて)
一世風靡(いっせいふうび)
「お節介なんです。帝王切開で生まれてきましたし」
お節介と切開の駄洒落?