日本では報道されてないようだが、エンロンの不正会計で損害を受けた150万人が今年末までに史上最大の総額7200億ドルの補償を受けることになるだろうと担当弁護士の弁が9日報じられた。気が遠くなるような金額だが、私もその20億分の1程度の補償が手に入ることになった。
それはエンロン事件と同時期に起こった9.11と微かに関っている。今日は9.11後7年目になる。多くの日本人ビジネスマンが犠牲になったのに、何故か日本のメディアは9.11に対して冷淡で他人事のような報道をしている。それはさておき、9.11事件が7年目に私にどう関ったか紹介する。
舞い込んできた小切手
先月の中頃まだ田舎で介護に七転八倒している時、米国大手証券会社(所謂ブローカー)から小切手が転送されてきた。その理由が米国証券取引委員会(SEC)との合意に基づく支払い、というもので最初何のことかさっぱり分からなかった。合計300ドル程度で大きな金額ではない。
日頃付合いのある証券会社の担当に聞いたが、最近SECの調査が入ったというニュースを見た記憶はないという。発行日は7月と8月になっていた。昔なら多分、調べる時間がもったいない、頂く分には何でもいいと割り切り、銀行に行って自分の口座にデポジットして済ませたろう。
SECの命令に基づく払い戻し
だが、生憎なことに今は徹底追及する為の時間と道具がある。道具とは検索マシンのことだ。キーワードを調整しながらネットを調べると、5月初めにSECが該当する銀行を告発したという広報記事と文書を見つけた。それがどうして私に関係があるのか、まだ何のことか分からない。
その記事の内容は、2002年から2004年にかけてこの証券会社は顧客の資産を適切な情報開示なしに無断で傘下の金融会社のラップ口座に移し、法外な手数料を取ったという告発で、合計約10億円を顧客に払い戻すことで落着したという内容だった。
私に送られてきた小切手は小額だが、その根拠は何か調べてみた。
話は9.11に遡る
私に心当たりが無くもなかった。帰国時に米国で住んだ住宅を売り、当時日本は金融不安の最中にあったので、そのお金を現地に投資した。2003年の10月頃だったと思うが、この証券会社から米国に住所の無い特定国の居住者への投資サービスを中止する旨通知を受けた。
担当マネージャに問い合わせると9.11後、会社は方針変更した。全ては9.11のせいと言われると、私はもう議論しても無駄だと諦めた。しかしそれから先が大変だった。その経緯は2005年の初めに「私の9.11」で紹介したように、酷く苦労して資産を流動化し日本に転送した。
問題は流動化した後起こった。頼みもしないのに聞いたことも無いマネーマーケットに一時投資し、日本に転送するまでの短い期間に700ドル弱の手数料を取られた。担当マネージャに抗議すると、これは暫らく安全な駐車場に停めたと思ってくれとの返事で、納得できなかったけど泣き寝入りした。SECのレポートでは、会社ぐるみでやった。
SECがやってくれた
記事を読み進むと傘下の金融会社名も上記と同じだった。ということは、米国には私と同じ経験をした、もっと大金を投資した人が沢山いて、彼らが委員会にクレームしたに違いない。そしてSECとペナルティを払うことで総額を合意した後、顧客名簿に私の名前と投資金額を見つけ小切手を送ってきたということのようだ。
もう一枚の小切手は東海岸にある民間の年金基金を扱う証券会社で、その不公正ビジネス慣行がSECに告発されたようだが詳細はまだ分からない。私はこの会社から直接証券を買った記憶はないが、最初の証券会社にファンマネお任せの口座がありそこを経由して買われたようだ。
理由は良く分からないが、この孫取引先が私の個人情報を持っており直接私の日本の住所に小切手を送ってきたということだろう。ちょっと気持ちが悪い。いずれにしろ、大体の様子が分かったので小切手が失効しないうちに(有効期限は3ヶ月になっていた)、銀行にデポしようと思う。
証拠隠滅は日本官僚の得意技?
日本でもこういうことが起こるだろうか。一時話題になった損害保険金の未払いは近年摘発され被保険者への支払いがされたようだ。しかし、投資家保護の領域はどうだろう。日本の個人投資家はそれほど市場を信用していないし、保護されてもいないように思うが。
多分比較すべきなのは日本の年金問題だろう。宙に浮いたり、消えた年金は、記録が違法に廃棄された為に起こったことで泥沼に陥った。いまだ解決の見込みが立たず、責任者や当事者は罰せられないでいる。馬鹿馬鹿しいことに、彼らは記録が無いことを人質にとって身を守っている。
大分県教委の汚職も同じ羽目に陥っている。試験データが廃棄された為直近の試験を受けたものだけが罰せられるという不公平が起こった。問題を根絶やしにするには証拠が必要だ。一方で、7年前余分に取られた手数料が海外に住む投資家に帰ってきた。この差は何だろう。■