つい最近まで巷を騒がしてきたのに、1年も経たないうちに気が付くと跡形も無く消えてしまった三つのテーマについて語りたい。これらは消えて無くなったのではなく、表舞台から降りて出番を待っているだけのように私には思える。
1.消えた団塊世代
団塊世代の定年退職が始まり、彼らの叩上げの技術が失われ大変なことになると散々心配させた「2007年問題」は何事も無く終わった。期待された巨額の退職金効果は今のところ経済に何らの足跡を残していない。今は米国発のサブプライム問題で景気後退に向かっている。
それでは団塊の世代はどこに消えたのだろう?答えは、どこにも消えてない。労働政策研究・研修機構調査によると何と団塊世代の8割はまだ働いているのだそうだ。私は残りの2割のようだ。大騒ぎしたマスコミは口が聞けなくなったみたいだ。同じ時に騒がれていたテーマとして熟年離婚も最近トンと聞かれない。
団塊の世代は見栄っ張りで自己顕示欲が強いという指摘は正しくとも、一方で経済状況が悪ければ生活を落とすことを何とも思わない世代でもある。彼らは状況を判断して静かに地下に潜っていると私は思う。
団塊世代は再度表舞台に出て来ることがあるだろうか。彼らが後期高齢者に到達し、膨大な健康保険コストが脚光を浴びる日まで水面下にいるかも知れない。そうならないことを祈る。
2.消えたアジアゲートウェイ構想
麻生政権が発足した今日、アジアゲートウェイ構想のことなど思い出した人は誰もいないだろう。安倍政権の打ち出した政策は、公務員制度改革など極めて優れたものが多かったと私は評価している。その中でもアジアゲートウェイ構想は出色だった。
アジアゲートウェイ構想は人口減少に向う日本を活性化するため、目標を明確にして貿易から人材教育・市場創造や農業活性化まで広範かつ具体的な処方箋を打ち出した。それはアジアとの関係の中の日本に焦点を当て、日本を再定義しようとするものであった。
話題の消費者庁も必要ではあるが昨今の議論は内向きに過ぎる。安部政権は21世紀の国の進むべき姿を定める国家戦略を打ち出した。しかし、いかに優れた国家戦略であっても安倍政権の突然の崩壊の道連れになり、不幸な終り方をして忘れ去られたのは残念だ。
3.消えた政府系ファンド(SWF)
サブプライムに端を発した世界的金融不安は、ついに米国の5大投資銀行を消滅させることになった。リーマン・ブラザーズは破綻、メリル・リンチとベアー・スターンズは身売りされ、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは厳しい規制下で銀行として生き残ることになった。
この壮大な投資銀行消滅ドラマに、昨年シティバンクやUBSなどの大銀行を支援し脚光を浴びた政府系ファンドの名前が全然出てこないのは一体どういう訳だ、と誰もが不思議に思うだろう。白馬の騎士はどこへ行った?政府系ファンドは昨年主役を張ったはずなのに。
実は、どこにも行ってないらしい。詳しい数字は手元にないが、昨年投資した銀行の株価は暴落し、有力政府系ファンドは全て大損した。半端な損ではない。投資銀行に再度巨額の投資をして表舞台に出る気にはとてもなれないだろう。たんす預金か堅い投資に絞り静かにしているらしい。■