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籔睨み2008年大統領選(7)-ペイリン効果

2008-09-12 22:14:18 | 国際・政治

共和党副大統領候補にペイリン・アラスカ州知事が指名され、ご存知のように全米に波乱を巻き起こした。ライブで副大統領候補指名を受諾する彼女の第一声を聞いた瞬間、私はある種の失望感があった。彼女の甲高い声は、近所で井戸端会議をする普通のオバサンを連想した。

私の経験したコーポレート・アメリカのバリバリのキャリア・ウーマンは概して低音で喋った。甲高い声は知的な印象を与えないとして、低音で喋る訓練をすると聞いたことがある。この先入観は演説が始まって数分で意外な展開となり、会場の雰囲気が変わっていくのを感じた。

普通のオバサンの見かけに反して彼女の歯に衣を着せない直截的な物言いは、これまでの予備選で物足りないと思っていた共和党右派とミドルクラス女性の心を一気にわしづかみしたようだ。翌週の世論調査で支持率が劣勢にあったマケイン候補がついにオバマ候補を逆転し、ペイリン効果と報じられた。ヒラリーと激戦している頃は民主党の優勢は揺るがないと思っていたのに。

10代の息子を中東の戦場に送り出すことを誇りに思うというように、彼女は見かけと違い筋金入りのタカ派である。その意外感が右派の琴線に触れたのではないかと思う。彼女は所謂「クリーンなタカ派」であり、その主張は人々の心の底の愛国心に容易に到達する。伝統的な手法といってもよい。

演説が終った後テレビのレポーターは興奮した面持ちで、全米の評価が現れる前から彼女の受諾演説が大成功と伝えているようだった。あおりを食ったのは民主党副大統領候補に指名されたバイデン氏だ。全く影が薄くなり、副大統領候補はヒラリーの方が良かったと本音を漏らしたという。なにしろメディアに登場する頻度がまるで少ない。

ペイリン女史の行く先々で凱旋将軍のように歓待が待ち受けている。都合の悪い情報も最初から開けっ広げに言及し、マイナスをプラスにしてしまう。現状では彼女は触るものが全て金になる打ち出の小槌を持っているかのようだ。米国はペイリンに恋して盲目になったのかもしれない。

それでは彼女の魔法(?)は何時まで続くのだろうか。一番近いところでは、副大統領候補間の討論会で化けの皮が剥がれるだろうという説があった。しかし、その後人気者になった彼女がバラエティショーで受け答えしたのを見ると中々したたかだった。もしかして本物?私にもわからない。

民主党もそれほど容易な相手ではないと認識始めたように感じる。彼女に対して下手にネガティブ・キャンペーンを打つと、小気味良く切り返されてリターンエースを取られそうだからだ。彼女を攻撃してメイン・ステージに引き出すより、主役の大統領候補に焦点を当てた戦いに戻すほうが民主党の選挙戦略として妥当だし、大統領選のあるべき姿でもあると私は思うのだが。■

コメント
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