一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

有吉道夫九段、逝去

2022-09-29 22:34:58 | 男性棋士
9月27日、有吉道夫九段が亡くなった。享年87歳。
有吉九段は1935年7月27日生まれ。15歳のとき大山康晴名人の内弟子になり、19歳四段。そこから着実に力をつけ、1965年、A級八段。1969年には大山名人と名人戦を戦った。
1972年、第21期棋聖戦で中原誠棋聖から2連敗3連勝で、初タイトル。これは翌期に米長邦雄八段に取られたが、以後もタイトル戦には何度か登場した。
原田泰夫九段命名のニックネームは「火の玉流」。猛烈な攻め将棋と、あふれる闘志がそのゆえんである。感想戦でも、納得がいくまで自身の勝ち筋を探した。
同じ関西の内藤國雄九段とは終生のライバル関係にあり、対局は93を数えた。タイトル戦なしでこの数は突出しており、いかに両雄が勝っていたかを物語る。
A級も長く務め、1991年度の第50期A級順位戦では大山十五世名人に勝利した。これが両者の最終局で、何と68歳と56歳の戦いだった。
なお、意味のない「タラレバ」を書けば、このときの勝敗が逆だったら、大山十五世名人が名人戦に登場していた。
1994年度の第53期順位戦では苦戦し、翌年3月の最終戦の時点では2勝6敗。降級は1勝7敗の南芳一九段が決まっており、残り1枠を塚田泰明八段(3勝5敗)と争っていた。
有吉九段の最終戦の相手は谷川浩司王将。しかし対戦成績はここまで、有吉九段の9勝25敗である。誰もが有吉九段の降級を予想した。
しかし有吉九段は頑張った。将棋は矢倉の熱局になり、第1図はその終盤。

第1図以下の指し手。▲7七銀△1四玉▲3四銀△1三角▲6六銀引△2八角成▲2二銀不成(投了図)
まで、有吉九段の勝ち。

△5五角は△8八角成以下の詰めろ。有吉九段は▲7七銀でそれを防ぐ。
次の△1四玉に慌てて▲2四歩と角を取ると、△2五玉から逃げられる。黙って▲3四銀が好手だ。
△1三角と逃げる手には▲6六銀引と活用し、△2八角成とソッポにやってから、▲2二銀不成が「天来の妙手」を彷彿とさせる最後の決め手。ここで谷川王将が投了した。これが怒濤の「4連続銀」で、盤上の4枚の銀が輝いている。

なお塚田八段は米長前名人に敗れ、有吉九段が順位1枚の差で残留を決めた。これで還暦A級が確定し、師弟での還暦A級となった。師弟での名人戦、師弟でのタイトルホルダーなど、大山-有吉は史上最強の師弟であった。
有吉九段は現役時から大山名人記念館の館長に就任し、引退後も長く将棋の普及に努めた。
稀代の闘将に、合掌。
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羽生九段、52歳に

2022-09-27 23:21:10 | 男性棋士
きょう9月27日は、羽生善治九段の52歳の誕生日である。この歳になれば誕生日などうれしくもないだろうが、おめでとうございます。
さて、史上最強の棋士と言えば、この前までは大山康晴十五世名人と羽生善治九段の名前が挙がっていた。
現在では藤井聡太竜王が割って入って有力候補だが、20歳で史上最強の称号は早すぎる。「史上最強棋士」は、高齢になってからの評価がウエイトを占めているのだ。その意味で、大山十五世名人の50歳以降の成績は相当なポイントとなる。
ではここで、おもな棋士の51歳と52歳時の成績を記してみよう。上段が51歳、下段が52歳の成績である。

・大山康晴十五世名人
1974年3月13日~1975年3月12日 50勝27敗.649
1975年3月13日~1976年3月12日 46勝24敗.657

・中原誠十六世名人
1998年9月2日~1999年9月1日 24勝21敗.533
1999年9月2日~2000年9月1日 19勝24敗.442

・米長邦雄永世棋聖
1994年6月10日~1995年6月9日 29勝22敗.569
1995年6月10日~1996年6月9日 26勝17敗.605

・加藤一二三九段
1991年1月1日~12月31日 28勝20敗.583
1992年1月1日~12月31日 32勝17敗.653

・谷川浩司十七世名人
2013年4月6日~2014年4月5日 14勝22敗.389
2014年4月6日~2015年4月5日 12勝21敗.364

・羽生善治九段
2021年9月27日~2022年9月26日 22勝19敗.537
2022年9月27日~2023年9月27日   ?

やはりというか、大山十五世名人の成績がすごい。51歳で50勝、52歳で46勝はケタ違いだ。
また加藤九段も、52歳で32勝している。棋戦の増減があるとはいえ、特筆すべき数字といえる。
羽生九段は前年度不調だったが、今年度はここまで12勝5敗の勝率7割越えで、51歳時の成績を勝ち越しにした。大山十五世名人の数字には及ばないが、今後に期待を抱かせる。
52歳の成績はどうなるだろうか。
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羽生九段、タイトル戦登場まであと3勝

2022-09-15 22:43:34 | 男性棋士
きのう14日に行われた第48期棋王戦挑戦者決定トーナメント・羽生善治九段VS広瀬章人八段は、羽生九段の勝ち。羽生九段は勝者組ベスト4となり、挑戦権獲得まで最短で3勝となった。
数年前なら有力な挑戦候補だが、昨今の羽生九段の調子を見るに、ここから先がまだ長い。なにしろ、50歳を過ぎてタイトル戦の挑戦者になったのは、63歳の大山康晴十五世名人と、53歳の升田幸三実力制第四代名人しかいない。さすがの羽生九段も難儀なのだ。
棋王戦の次の相手は俊英の伊藤匠五段で、通算勝率は.785とすごい。それでもここで羽生九段が勝ったとして、反対の山では佐藤天彦九段VS糸谷哲郎八段、藤井聡太竜王VS豊島将之九段の4人がいる。
羽生九段のそれぞれの対戦成績を記すと、対佐藤10勝14敗、対糸谷12勝11敗、対藤井1勝5敗、対豊島19勝25敗である。
佐藤九段と豊島九段には負け越しているが、まあ、羽生九段の勝利期待値は大きい。問題は対藤井竜王戦で、公式戦1勝5敗はいかにもまずい。
むろん羽生九段は誰と当たってもらんらんと目を輝かせて指すだろうし、藤井竜王とならなおさら愉しんで指すだろう。
だがそれは、タイトル100期が実現してからでいい。今回は藤井竜王を避けなければならぬ。
まず、豊島九段が藤井竜王を倒してくれれば話が早い。しかし王位戦の結果を見るに、そう簡単にはいかないだろう。
すると藤井竜王は佐藤九段か糸谷八段と指すことになる。だが藤井竜王は前者に3勝0敗、後者に6勝0敗である。数字だけを見ると、もはや藤井竜王の挑戦でほぼキマリ、そこに伊藤五段が絡むかどうかというところだ。
仕方がない。とにかく、佐藤九段か糸谷八段の対藤井竜王勝利を願うしかない。糸谷八段は先日のA級順位戦で藤井竜王に善戦したというし、何が起こっても不思議でない。
そこで藤井竜王が負ければ、敗者復活戦に回ることになる。そこで羽生九段が勝者組決勝で勝っていれば、仮に藤井竜王が敗者戦で勝ち上がってきても、1敗はできる。羽生九段だって藤井竜王に勝ったことがあるのだから、巡り合わせで一発入ることもあるだろう。
ともあれ、羽生九段はベスト4に入ったことにより、1敗できるのが大きい。来春、どのような結果になっているだろうか。
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堀口七段の連敗続く・2

2022-09-10 23:31:07 | 男性棋士
八段昇段まで「あと1」に迫っている堀口一史座七段は、昨日C級2組順位戦を戦ったが、田中五段に敗れ、また昇段がおあずけとなった。

5月10日 題94期棋聖戦一次予選1回戦 ○石川陽生七段
5月10日 第94期棋聖戦一次予選2回戦  ●西尾明七段
6月16日 第81期順位戦C級2組1回戦 ●井田明宏四段
7月8日 第8期叡王戦七段戦1回戦 ●近藤正和七段
7月14日 第81期順位戦C級2組2回戦 ●古賀悠聖四段
7月21日 第16回朝日杯一次予選1回戦 ●藤森哲也五段
8月5日 第64期王位戦予選1回戦 ●石川陽生七段
8月12日 第81期順位戦C級2組3回戦 ●阿部光瑠七段
9月9日 第81期順位戦C級2組4回戦 ●田中悠一五段

7月22日の時点で5連敗だったが、そこから3つ負けが伸び、8連敗となった。7月23日の記事で危惧したとおり、なかなかの難産が続いている。
「あと1」の難産といえば、プロ野球・巨人の柴田勲である。1980年、19年目のシーズンを迎えた柴田は、この年の開幕前まで通算1957安打で、2000本安打(名球会入り)を視野に入れていた。
しかし柴田はすでに36歳。全盛時は過ぎており、安打もちょぼちょぼとしか出ない。しかし長嶋茂雄監督は柴田をスタメンで使い続けた。
7月29日、1999安打を放ったが、そこからあと1本が出ない。何と17打席無安打が続いた。そして8月7日のヤクルト戦(神宮球場)、その時はやってきた。第2打席、柴田の打球はフラフラとレフト前に落ち、2000本安打達成となったのだった。
そして次の試合からはお約束のように、柴田はスタメンを外れた。
ヒットを1本打つのも、将棋で1勝するのも、大変だ。堀口七段に話を戻せば、今後は順位戦に加え、王座戦、竜王戦、王将戦、棋王戦、NHK杯の予選が続く。なお銀河戦の予選は日程的に終わっているはずで、堀口七段の八段昇段のニュースがないことから、この予選でも負けているはずだ。
どうも、持ち時間の長い対局は体力的にキツそうだ。NHK杯なら指運の比重が高いので、勝利の期待値は高くなる。
だがNHK杯の予選は来年である。そこまで待たねばならないのだろうか。
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折田四段の成績はどうなっている・2

2022-08-16 23:27:29 | 男性棋士
折田翔吾四段は、昨日15日に行われた伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦予選で、安用寺孝功七段に敗れた。
私は当ブログの5月12日に「折田四段の成績はどうなっている」を載せた。内容は、フリークラスの折田四段はデビューから2年。その間、可もなく不可もない成績で、今後頑張るしかない、というものだった。
目標達成のためには、C級2組の中堅棋士くらいは破ってもらいたいが、棋士の実力差は紙0.1枚(木村義徳九段)だから、そう簡単にはいかないようだ。
折田四段はこれで、今年度4勝5敗。とりあえず、詳細を記す。

5月19日 第94期棋聖戦一次予選1回戦 ○矢倉規広七段
5月19日 第94期棋聖戦一次予選2回戦 ●牧野光則六段
5月27日 第12期加古川青流戦2回戦 ○小山直希奨励会三段
6月23日 第35期竜王戦5組昇級者決定戦4回戦 ○杉本和陽五段
7月7日 第8期叡王戦四段戦2回戦 ●徳田拳士四段
7月19日 第12期加古川青流戦3回戦 ●里見香奈女流五冠
7月28日 第16回朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦 ○伊奈祐介七段
7月28日 第16回朝日杯将棋オープン戦一次予選2回戦 ●村田顕弘六段
8月15日 第64期王位戦予選1回戦 ●安用寺孝功七段

直近が1勝4敗なので、フリークラス脱出の目が見えない。
新四段はフリークラス棋士、女流棋士、奨励会員、アマチュアと当たるから、勝ちが計算できるところもある。しかしそれも昔の話で、女流棋士もアマも、トップクラスは男性棋士並みに強い。そこも折田四段の苦戦の要因があるのかもしれない。
しかも棋士3年目に入っては上記「特典」もほとんどなく、ますます厳しい。
竜王戦は現在5組で、4組昇級まであと2勝となっている。ただ、竜王戦はクラスが上位に行くほど相手が厳しくなってくるのがネックだ。
だから欲をいえば、竜王戦で勝ちまくっているときに、その星をフリークラス脱出に充てたかったのだ。それを活かせないまま昇級すると、まとまった勝ちが見込めなくなる。だから竜王戦の昇級も良し悪しなのだ。
最近の折田四段は、モチベーションが下がっているのだろうか。よく知らないが。まあとにかく、これからも一戦必勝で戦っていくしかない。
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