一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

折田四段の成績はどうなっている・2

2022-08-16 23:27:29 | 男性棋士
折田翔吾四段は、昨日15日に行われた伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦予選で、安用寺孝功七段に敗れた。
私は当ブログの5月12日に「折田四段の成績はどうなっている」を載せた。内容は、フリークラスの折田四段はデビューから2年。その間、可もなく不可もない成績で、今後頑張るしかない、というものだった。
目標達成のためには、C級2組の中堅棋士くらいは破ってもらいたいが、棋士の実力差は紙0.1枚(木村義徳九段)だから、そう簡単にはいかないようだ。
折田四段はこれで、今年度4勝5敗。とりあえず、詳細を記す。

5月19日 第94期棋聖戦一次予選1回戦 ○矢倉規広七段
5月19日 第94期棋聖戦一次予選2回戦 ●牧野光則六段
5月27日 第12期加古川青流戦2回戦 ○小山直希奨励会三段
6月23日 第35期竜王戦5組昇級者決定戦4回戦 ○杉本和陽五段
7月7日 第8期叡王戦四段戦2回戦 ●徳田拳士四段
7月19日 第12期加古川青流戦3回戦 ●里見香奈女流五冠
7月28日 第16回朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦 ○伊奈祐介七段
7月28日 第16回朝日杯将棋オープン戦一次予選2回戦 ●村田顕弘六段
8月15日 第64期王位戦予選1回戦 ●安用寺孝功七段

直近が1勝4敗なので、フリークラス脱出の目が見えない。
新四段はフリークラス棋士、女流棋士、奨励会員、アマチュアと当たるから、勝ちが計算できるところもある。しかしそれも昔の話で、女流棋士もアマも、トップクラスは男性棋士並みに強い。そこも折田四段の苦戦の要因があるのかもしれない。
しかも棋士3年目に入っては上記「特典」もほとんどなく、ますます厳しい。
竜王戦は現在5組で、4組昇級まであと2勝となっている。ただ、竜王戦はクラスが上位に行くほど相手が厳しくなってくるのがネックだ。
だから欲をいえば、竜王戦で勝ちまくっているときに、その星をフリークラス脱出に充てたかったのだ。それを活かせないまま昇級すると、まとまった勝ちが見込めなくなる。だから竜王戦の昇級も良し悪しなのだ。
最近の折田四段は、モチベーションが下がっているのだろうか。よく知らないが。まあとにかく、これからも一戦必勝で戦っていくしかない。
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私が勝手に選ぶ、昭和の名棋士次の一手「大山康晴十五世名人編」

2022-08-10 23:38:26 | 男性棋士
きのうの記事では触れなかったが、「将棋世界」の連載では、田丸昇九段「昭和名棋士次の一手」も面白い。文字通り、昭和という時代に活躍した棋士の、代表的次の一手を紹介するものだ。以前は歴代永世名人のそれを紹介していたが、当然ネタは尽きるわけで、昭和の棋士にシフトした。
では、「私が勝手に選ぶ、昭和の名棋士次の一手」を書いてみよう。なお、ブログの構成上、問題図のすぐ下に「次の一手」を書いてしまうので、ご注意ください。
さて、第1回???は、大山康晴十五世名人である。
紹介するのは、1982年7月23日に指された、第21期十段戦挑戦者決定リーグ・▲米長邦雄棋王VS△大山王将戦である。なお十段戦は、日本将棋連盟と読売新聞社の主催で、竜王戦の前身である。

問題図は▲5三香で、飛角の田楽刺しが掛かっている。大山王将は△5八と(金を取る)▲同金△5七歩▲5九金を利かし、図の局面になった。
しかし田楽刺しは解消されておらず、さあどうする? というところで、驚愕の一手が指された。

大山王将は△1二飛!と馬にぶつけた。これが意表の強手(解答図)。
俗に「両取り逃げるべからず」というが、今回は当たりになっている飛車を別の筋に振り、「こっちのマスで飛車を取れ!」と、さらに押し売りしたのだ。いま見ても斬新な手筋である。
△1二飛を▲同馬では馬が一瞬遊び駒になり、△3三角くらいで後手優勢。何より、これでは▲5三香がスカタンになってしまう。
よって米長棋王は▲5一香成△1一飛▲6一成香としたが、△同飛で、後手も十分捌けている。
△6一同飛に米長棋王は、△6五銀を除去するべく▲5五金としたが、ここからの大山王将の寄せも絶品だった。以下△6六桂▲同歩△7六銀▲7九桂△7七香▲同桂△8九角▲同玉△7七銀成▲7八金△8八銀(投了図)まで、大山王将の勝ち。

投了図以下は、▲8八同金△7六桂まで、先手玉は必至。△6六桂捨てから、終盤の講座に出そうな手筋の連発で、大山王将の快勝となった。
いかがであろう。当時大山王将はタイトルホルダーの59歳。還暦間近の棋士のとは思えぬ若々しい指し手である。羽生善治九段が59歳になったとき、こんな舞うような将棋が指せるだろうか。
実は今回の将棋、2013年7月26日にアップした「大山の名局」の、記念すべき1回目だった。そのくらい、この将棋は私に鮮烈だった。
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変態将棋の雄・山崎八段、勝ち進む

2022-08-02 23:30:57 | 男性棋士
山崎隆之八段は佐藤康光九段と並び、変態将棋の雄だ。さしずめ、東の佐藤、西の山崎というところ。しかし、佐藤九段が一手損角換わり向かい飛車など、私たちにもそこそこ馴染みのある戦法を選択するのに対し、山崎八段は立ち上がりから独創的だ。角道を開けず▲7八銀と立ったり、▲6六歩のパックマン戦法を採用したりするところが、佐藤九段とは大きく違う。端的に言って「よいアマチュアはけっしてマネをしてはいけません」という将棋なのだ。だが、だからこそ山崎将棋は面白い。AIなんてクソくらえ、なのだ。
その山崎八段が1日、第35期竜王戦決勝トーナメント準決勝で、永瀬拓矢王座と当たった。
永瀬王座は王座3期、叡王1期の強豪で、竜王戦は七番勝負登場こそないものの、前期、今期とランキング戦1組で優勝し、実力のほどを示している。
山崎八段も前期順位戦ではA級だったから実力者なのだが、相手が永瀬王座ではさすがに分が悪い、と見ていた。
将棋は永瀬王座の先手で開始。永瀬王座の居飛車明示に、山崎八段は角道を止め、振り飛車の雰囲気だ。しかし山崎八段は居飛車党である。果たしてここから雁木に変化したが、山崎八段としては、この端正な形自体がむしろ異質だ。
と、山崎八段は向かい飛車に振った。いいぞいいぞ、山崎将棋はこうでなくちゃ面白くない。
山崎陣の金銀は密集しているが、玉は孤立している。まさに山崎ワールド全開である。素晴らしい!
永瀬王座は筋よく応じているが、山崎八段の奔放な指し手に、戸惑っているようにも見えた。
局面は山崎陣だけ「ひとり手将棋」で、私にはどこが急所だかまったく分からない。しかし山崎八段は的確に永瀬陣を攻略し、華麗な捨て駒を交え、飛車成に成功した。これは素人目にも、後手勝勢である。
最後は重ね打ちの金で、永瀬王座が投了。山崎陣の玉の周りには金銀角が集まり、敵陣の駒は1枚もない。山崎八段の快勝譜となった。
山崎八段は第25期に続き、2度目の挑戦者決定戦進出。前回は丸山忠久九段の前に1勝2敗で涙を呑んだが、今回はどうか。相手は佐藤天彦九段か広瀬章人八段である。どちらも強豪だが、山崎八段が勝てない相手ではない。私は山崎八段の竜王戦登場を見たい。ターミネーター藤井聡太竜王の感覚を狂わすには、山崎八段の奔放な将棋しかないのだ。
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堀口七段の連敗続く

2022-07-23 23:09:47 | 男性棋士
今年の5月10日、堀口一史座七段は、第94期棋聖戦の一次予選・石川陽生七段戦で勝利し、八段昇段まで「あと1」とした。
ここ数年、体力的な問題で不調をかこっている堀口七段。しかしここまでくれば八段昇段は時間の問題と思われた。
しかしここからが長い。そこから堀口七段は5連敗。トンネルに入ってしまった。

5月10日 第94期棋聖戦一次予選2回戦 ●西尾明七段
6月16日 第81期順位戦C級2組1回戦 ●井田明宏四段
7月8日 第8期叡王戦七段戦1回戦 ●近藤正和七段
7月14日 第81期順位戦C級2組2回戦 ●古賀悠聖四段
7月21日 第16回朝日杯一次予選1回戦 ●藤森哲也五段

連敗地獄はいつかは止まるが、堀口七段は2020年度、9月10日から3月5日まで15連敗。2021年度は5月20日から12月16日まで14連敗している。
この、2021年3月5日から5月20日の間は、わずか1勝。上野裕和六段に勝ったのみだった。
連敗地獄といえば、2018年~2019年の桐山清澄九段もひどかったが、堀口七段もかなりのものだったことが分かる。これでは今後も連敗が続いてもおかしくない。
その一方で堀口七段は、第79期C級2組順位戦で、気鋭の梶浦宏孝六段を破っている。ときどき往年の力を発揮することがある。だから、誰にも負けそうな雰囲気がありながら、誰にも勝つ可能性があるという、不思議な状況になっているのだ。
とりあえず今年度は、C級2組順位戦の残り8局、銀河戦、王座戦、竜王戦、王将戦、棋王戦、NHK杯と、対局自体はいっぱい付く。
現将棋界は藤井聡太竜王を中心に回っているが、C級2組であえぐベテラン棋士の勝利に注目している将棋ファンもいるのだ。堀口七段の連敗は、昇段の楽しみが先延ばしされたと解して、のんびり構えてみようか。
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内藤九段の詰将棋

2022-07-05 23:35:17 | 男性棋士
先日、「デイリースポーツ」を久しぶりに見た。同紙は1948年8月1日創刊で、何が何でも阪神タイガースの記事が1面になることで知られる。
そして私たち将棋ファンには、内藤國雄九段出題の詰将棋「詰めの妙味」がお馴染みだ。
対象読者がおっちゃんだから、そんなに難しい問題は出せない。といって簡単でもない。ピリッとした妙手が必ず1手入っていて、内藤九段らしい「味」が出ているのだ。
たしか初期のころは、翌日に答えが掲載されていたような記憶がある。私が高校生だか大学生のとき、どうしても解けない問題があって、誤植とは思ったのだが、切り抜いて小銭入れの中に入れた記憶がある。
その小銭入れはいまでもあるが、中に入っているかどうかは確認していない。
その「詰めの妙味」、7月2日付では、何と「15686回」だった。たしか連載10000回のときは、同紙はもちろん、将棋専門誌でも取り上げられたはずだ。15000回のときはどうだったのだろう。
「詰めの妙味」は休みなしの毎日掲載だから、年365回として、仮に43年間だと15695回となる。これはほぼ現在の数字と同じで、つまり、43年は連載していることになる。これはギネスブック級の大記録ではないだろうか。
しかも詰将棋は4コママンガなどと違い、しっかりした完成品?を提供しなければならない。これは想像以上に大変な作業だと思う。内藤九段の持続力と創造力に、あらためて敬意を表するのである。
では、7月2日付の詰将棋を紹介しよう。

ヒントは「二枚目の桂で仕留める」。10分で二段。

では、解いていってみよう。初手▲8三香成は△同飛以下王手は続くが、およそ詰将棋らしくない。というか、△8一玉で詰まない。
初手は▲8三銀不成だろう。ここは成る手もあるが、本能的に、成らずである。
△8一玉に、桂が2枚あるので、とりあえず▲7三桂と捨ててみる。△同歩に▲7二銀不成だ。ここでも成る手があるが、不成なら△9二玉のとき、8三に成り返ることができる。
戻って▲7二銀不成を△同玉は、▲6四桂までの詰み。
この変化がピッタリだから、▲7二銀不成までは正解手順に思える。
だが△9二玉に▲8三銀成△8一玉で、全然詰まない。
▲7二銀不成を銀成にしてみたが、大同小異である。こりゃ意外な迷路に入っちゃったなあ、というところで、▲7四角成が閃いた。
△8三合駒は▲同馬で無効なので△7四同歩だが、そこで▲8三銀成としてみる。△8一玉に▲7三桂。
あら、詰んだ。整理すると、「▲8三銀不成△8一玉▲7三桂△同歩▲7二銀不成△9二玉▲7四角成△同歩▲8三銀成△8一玉▲7三桂 まで、11手詰」
内藤九段らしい、味のある詰将棋だと思った。
今後の詰将棋も、楽しみにしている。
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