一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

南九段の不調

2022-10-11 21:07:23 | 男性棋士
6日の第35期竜王戦5組5位決定戦・南芳一九段VS折田翔吾四段戦は、折田四段が勝って4組昇級を決めたわけだが、私は南九段が勝つものと思っていた。
南九段はかつての二冠王で、一時期はタイトル戦の常連だった。早々にA級に昇級し、25歳で九段。「花の55年組」の中でも、出世頭だったのである。
ふだんから無口で、風貌も大山康晴十五世名人に似ていることから「リトル大山」と呼ばれ、ああ南九段は晩年まで上位クラスを張るんだな、と思ったものだ。
しかし南九段は本局に負けた。しかも成績を見ると、今年度0勝10敗だった。これはどういうことだろう。
ちょっと、55年組の今年度成績を見てみよう(銀河戦は除く)。

中村修九段(59歳)順位戦B級2組・竜王戦4組 5勝7敗●○●○●●○●○●○●
高橋道雄九段(62歳)順位戦C級1組・竜王戦3組 1勝9敗●●●○●●●●●●
南芳一九段(59歳)順位戦C級2組・竜王戦5組 0勝10敗●●●●●●●●●●
島朗九段(59歳)順位戦C級2組・竜王戦6組 3勝7敗○●○●●○●●●●
塚田泰明九段(57歳)フリークラス・竜王戦6組 2勝5敗●●○●○●●
神谷広志八段(61歳)フリークラス・竜王戦6組 4勝5敗●●○○●○○●●
泉正樹八段(61歳)フリークラス・竜王戦6組 1勝4敗●●○●●

高橋九段の成績もひどいが、南九段よりはクラスが上なので救いはある。
南九段は2010年度19勝13敗で、この勝ち越しが最後。以降最もひどかったのが2016年度で、4勝19敗で順位戦はC級2組に降級した。ちょっとこの数字も信じられないところである。
どうなのだろう。南九段はここ数年振り飛車党で、上の折田四段戦も三間飛車だった。だが、南九段がタイトルを獲ったころは居飛車専門だった。だったら南九段は居飛車が棋風に合っているのではないだろうか。
現在南九段はC級2組で降級点1、0勝4敗なので、今期も降級点を取る可能性が高い。となれば、今年度終了後にフリークラスへ転出する可能性が高い。
私はもうちょっと南九段の将棋を見たいのだが、起死回生の方策はあるのだろうか。
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折田四段、4組昇級

2022-10-09 18:48:32 | 男性棋士
6日に行われた第35期竜王戦ランキング戦5組・昇級者決定戦で、折田翔吾四段が南芳一九段に勝ち、4組昇級を決めた。
折田四段は3位決定戦で石川優太四段に敗れたが、2組在籍の橋本崇載八段が引退したため、今期は3組から下の昇級枠が1つ増え、今回の戦いは「5位決定戦」だった。折田四段はギリギリ滑りこんだわけだ。思えば大野八一雄七段も、このケースで5組に昇級したものだ。
折田四段は2期連続昇級につき、五段昇段のおまけがついた。
フリークラス在籍で4組は珍しいが、フリークラスから入った棋士の竜王戦成績はどうだったのだろう。以下に記してみる。

伊奈祐介七段…1998年4月四段。2001年5月、順位戦C級2組昇級を決める。このとき、竜王戦は6組。
瀬川晶司六段…2005年11月四段。2009年5月、順位戦C級2組昇級を決める。このとき、竜王戦は6組。
伊藤真吾六段…2007年4月四段。2011年10月、順位戦C級2組昇級を決める。このときの勝利で、竜王戦5組昇級も同時に決める。
渡辺正和六段…2008年10月四段。2011年1月、順位戦C級2組昇級を決める。このとき、竜王戦は6組。
渡辺大夢六段…2012年10月四段。2015年7月、順位戦C級2組昇級を決める。このとき、竜王戦は6組。
今泉健司五段…2015年4月四段。2016年11月、順位戦C級2組昇級を決める。このとき、竜王戦は6組。
佐々木大地七段…2016年4月四段。2017年2月、順位戦C級2組昇級を決める。このとき、竜王戦は6組。
古賀悠聖四段…2020年10月四段。2021年9月、順位戦C級2組昇級を決める。このとき、竜王戦は6組。

ご覧のように、フリークラス脱出を決めた時点で、ほとんどの棋士が竜王戦は6組在籍である。折田五段の4組昇級はそれだけ偉業といえる。
上記8名の中で、竜王戦の最高は、伊奈七段、伊藤六段の3組。折田五段もあと一息だが、それより順位戦昇級を何とかしなければならない。
しかし竜王戦も4組になればアタリも厳しくなるだろうし、加古川青流戦のように、出場できない棋戦も出てくる。
これまでの最長期間は、伊藤六段の4年6ヶ月。最年長昇級は、今泉五段の43歳。折田五段は四段昇段後、すでに2年6ヶ月が経っている。
折田五段は今年度6勝6敗。昇級の目は作れておらず、順位戦昇級までまだしばらく時間がかかる。
さてどうなるか。
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豊島九段のタイトル戦の戦績

2022-10-06 22:53:25 | 男性棋士
第70期王座戦第4局は4日に行われ、永瀬拓矢王座が184手で勝ち、3勝1敗で防衛した。王座4連覇の4期目である。
挑戦者・豊島将之九段は無冠脱出ならず。初戦勝ちのあと3連敗で、デジャヴのような星の並びで涙を呑んだ。
それにしても豊島九段はタイトル戦で勝てない。藤井聡太竜王以外の相手なら勝てそうに思えるのだが、勝てない。
ちょっとここで、豊島九段の全タイトル戦成績を記してみよう。すべて豊島九段から見た勝敗である。

2011年 第60期王将戦 豊島将之2●○●●○●4久保利明
3014年 第62期王座戦 豊島将之2●●○○●3羽生善治
2015年 第86期棋聖戦 豊島将之1●○●●3羽生善治
2018年 第68期王将戦 豊島将之2○●●●○●4久保利明
2018年 第89期棋聖戦 豊島将之3○●○●○2羽生善治
2018年 第59期王位戦 豊島将之4●○●○●○○3菅井竜也
2019年 第77期名人戦 豊島将之4千○○○○0佐藤天彦
2019年 第90期棋聖戦 豊島将之1○●●●3渡辺明
2019年 第60期王位戦 豊島将之3○○●●○●●4木村一基
2019年 第32期竜王戦 豊島将之4○○○●○1広瀬章人
2020年 第78期名人戦 豊島将之2●○○●●●4渡辺明
2020年 第5期叡王戦 豊島将之4千○持持●●○●○○3永瀬拓矢
2020年 第33期竜王戦 豊島将之4○●○○○1羽生善治
2021年 第6期叡王戦 豊島将之2●○●○●3藤井聡太
2021年 第62期王位戦 豊島将之1○●●●●4藤井聡太
2021年 第34期竜王戦 豊島将之0●●●●4藤井聡太
2022年 第63期王位戦 豊島将之1○●●●●4藤井聡太
2022年 第70期王座戦 豊島将之1○千●●●3永瀬拓矢

何と、6勝12敗。こんなに勝てていないのか。
ちなみに、初戦を勝ったシリーズは5勝6敗。ということは、初戦を負けたシリーズは、1勝6敗ということだ。
豊島九段には、初戦を勝ったあとにボロ負けするというイメージがあったが、初戦負けは必然的に、惨憺たる結果というわけだった。
私は藤井竜王の次に強い棋士は、豊島九段と渡辺名人と思っている。だから、豊島九段のノンタイトルが信じられないのである。
個々の勝敗は42勝52敗。タイトル戦の戦績ほど悪くはない。ただ、藤井竜王相手だと、タイトル戦は0勝4敗、個別だと4勝15敗とひどい。
まさに藤井竜王こそ目の上のタンコブ。ほかの棋士と同様、打倒藤井聡太がカギとなる。
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有吉道夫九段、逝去

2022-09-29 22:34:58 | 男性棋士
9月27日、有吉道夫九段が亡くなった。享年87歳。
有吉九段は1935年7月27日生まれ。15歳のとき大山康晴名人の内弟子になり、19歳四段。そこから着実に力をつけ、1965年、A級八段。1969年には大山名人と名人戦を戦った。
1972年、第21期棋聖戦で中原誠棋聖から2連敗3連勝で、初タイトル。これは翌期に米長邦雄八段に取られたが、以後もタイトル戦には何度か登場した。
原田泰夫九段命名のニックネームは「火の玉流」。猛烈な攻め将棋と、あふれる闘志がそのゆえんである。感想戦でも、納得がいくまで自身の勝ち筋を探した。
同じ関西の内藤國雄九段とは終生のライバル関係にあり、対局は93を数えた。タイトル戦なしでこの数は突出しており、いかに両雄が勝っていたかを物語る。
A級も長く務め、1991年度の第50期A級順位戦では大山十五世名人に勝利した。これが両者の最終局で、何と68歳と56歳の戦いだった。
なお、意味のない「タラレバ」を書けば、このときの勝敗が逆だったら、大山十五世名人が名人戦に登場していた。
1994年度の第53期順位戦では苦戦し、翌年3月の最終戦の時点では2勝6敗。降級は1勝7敗の南芳一九段が決まっており、残り1枠を塚田泰明八段(3勝5敗)と争っていた。
有吉九段の最終戦の相手は谷川浩司王将。しかし対戦成績はここまで、有吉九段の9勝25敗である。誰もが有吉九段の降級を予想した。
しかし有吉九段は頑張った。将棋は矢倉の熱局になり、第1図はその終盤。

第1図以下の指し手。▲7七銀△1四玉▲3四銀△1三角▲6六銀引△2八角成▲2二銀不成(投了図)
まで、有吉九段の勝ち。

△5五角は△8八角成以下の詰めろ。有吉九段は▲7七銀でそれを防ぐ。
次の△1四玉に慌てて▲2四歩と角を取ると、△2五玉から逃げられる。黙って▲3四銀が好手だ。
△1三角と逃げる手には▲6六銀引と活用し、△2八角成とソッポにやってから、▲2二銀不成が「天来の妙手」を彷彿とさせる最後の決め手。ここで谷川王将が投了した。これが怒濤の「4連続銀」で、盤上の4枚の銀が輝いている。

なお塚田八段は米長前名人に敗れ、有吉九段が順位1枚の差で残留を決めた。これで還暦A級が確定し、師弟での還暦A級となった。師弟での名人戦、師弟でのタイトルホルダーなど、大山-有吉は史上最強の師弟であった。
有吉九段は現役時から大山名人記念館の館長に就任し、引退後も長く将棋の普及に努めた。
稀代の闘将に、合掌。
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羽生九段、52歳に

2022-09-27 23:21:10 | 男性棋士
きょう9月27日は、羽生善治九段の52歳の誕生日である。この歳になれば誕生日などうれしくもないだろうが、おめでとうございます。
さて、史上最強の棋士と言えば、この前までは大山康晴十五世名人と羽生善治九段の名前が挙がっていた。
現在では藤井聡太竜王が割って入って有力候補だが、20歳で史上最強の称号は早すぎる。「史上最強棋士」は、高齢になってからの評価がウエイトを占めているのだ。その意味で、大山十五世名人の50歳以降の成績は相当なポイントとなる。
ではここで、おもな棋士の51歳と52歳時の成績を記してみよう。上段が51歳、下段が52歳の成績である。

・大山康晴十五世名人
1974年3月13日~1975年3月12日 50勝27敗.649
1975年3月13日~1976年3月12日 46勝24敗.657

・中原誠十六世名人
1998年9月2日~1999年9月1日 24勝21敗.533
1999年9月2日~2000年9月1日 19勝24敗.442

・米長邦雄永世棋聖
1994年6月10日~1995年6月9日 29勝22敗.569
1995年6月10日~1996年6月9日 26勝17敗.605

・加藤一二三九段
1991年1月1日~12月31日 28勝20敗.583
1992年1月1日~12月31日 32勝17敗.653

・谷川浩司十七世名人
2013年4月6日~2014年4月5日 14勝22敗.389
2014年4月6日~2015年4月5日 12勝21敗.364

・羽生善治九段
2021年9月27日~2022年9月26日 22勝19敗.537
2022年9月27日~2023年9月27日   ?

やはりというか、大山十五世名人の成績がすごい。51歳で50勝、52歳で46勝はケタ違いだ。
また加藤九段も、52歳で32勝している。棋戦の増減があるとはいえ、特筆すべき数字といえる。
羽生九段は前年度不調だったが、今年度はここまで12勝5敗の勝率7割越えで、51歳時の成績を勝ち越しにした。大山十五世名人の数字には及ばないが、今後に期待を抱かせる。
52歳の成績はどうなるだろうか。
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