10月5日(土)は、第36回将棋ペンクラブ大賞贈呈式が行われた。場所は神保町の「出版クラブホール」。昨年は朝日新聞社の近くだったが、いろいろあって、場所が変わった。
また昨年は金曜日開催だったが、今年は土曜日。一般の人はそのほうが好都合だろうが、私はそうでもないのがつらい。まあ、何とか都合をつけることができた。
出席するにあたり、幹事のAkuさんに「右四間飛車」の書籍をプレゼントしようと考えた。以前の社団戦で彼女が、右四間飛車の勉強方法が分からない、と嘆いていたからだ。
私の求める本は決まっていて、藤森哲也五段の「藤森流なんでも右四間飛車」(マイナビ)である。相手が居飛車でも振り飛車でも右四間飛車、というコンセプトで、Akuさんにピッタリだ。
問題は、Akuさんがこの本をすでに持っているかもしれないということだ。Akuさんが対振り飛車戦で▲5九金、▲6八銀、▲7八金、▲7九玉の構えで指しているのを見たことがあるが、あれは本からの勉強でないと指せない。だけど、対振り飛車戦だったら▲7八玉型でなければならない。本を読んでいたら、そこはさすがに理解するのではないだろうか。
迷っていても仕方ないので、藤森五段の本をネットで注文しようとした。
ところがそれは送料がかかるうえ、到着までに日数がかかり、当日までに間に合わない。よって、書店で直接買うしかなくなってしまった。
行くのは東京駅丸の内口にある丸善である。ここは将棋の本が豊富に取り揃えてあり、たいていの本が手に入る。ここでダメなら駅反対側の八重洲ブックセンター、そこでダメなら神保町界隈に行こうと思った。
だいぶ早めに家を出て、丸善に向かう。将棋コーナーに着いて、本探しだ。ズラッと並ぶ棋書の中に、中川大輔八段「すぐ勝てる!右四間飛車」(マイナビ)を見つけた。さらに、大平武洋六段「これだけで勝てる右四間飛車のコツ」もあった。タイトル的には後者のほうに食指が動くが、私が求めるのは藤森五段の本だ。
そしてそれをやっと見つけた。その他にも右四間飛車の本があった。右四間飛車はけっこう人気があるようだ。
以上四択だが、よく考えたら複数を買ってもいいのだ。それで、藤森五段のと中川八段のを購入した。レジでは袋代が3円かかると言われたが、仕方ない。
まだ時間があるので、神田から歩いていく。きょうはあいにくの雨だが、私は雨男なので、外出時は覚悟している。途中、小諸そばがあったから入ろうとしたが、土曜日だから早仕舞いになっていた。
そのまま神保町に着いてしまった。開場は17:30、開演は18:00だ。まだ時間があるので、どこか喫茶店に入りたいが、これからコーヒーを飲むかもしれないのに、そんな無駄なことをしていいのか。
というか、腹も減ってきてしまった。だけどこれから何か胃袋に入れるのに、食べていいのか。だけどこの雨の中、もう時間も潰せないので、そのまま吉野家に入った。
並をありがたく食し、出版クラブに向かう。だがまだ時間がある。あまり早く入ると、「大沢、参加する気満々だな」と思われるので、周辺をぶらぶらする。やっていることが怪しすぎる。
開場時間になったので、入る。すると、受付を阿部氏、山本氏、中山氏が行っていた。Kan氏の手伝いに来て、そのまま入ってしまったものか。
「おカネ払いますか?」と阿部氏。むろんそうで、残念ながら、私は将棋ペンクラブの関係者ではない。
会場に入る。ここは2年前にも将棋ペンクラブ大賞贈呈式を、トークショーの形で行った。当時は会食のない地味なものだったが、コロナ禍を経て、よやく平常運転に戻ったわけだ。
Akuさんがいたので、さっそく棋書を渡す。
「これ、右四間飛車の本、プレゼント。これを全部記憶して……」
自分としてはしてやったり、だったのだが、Akuさんは「これ……」と浮かない顔だ。「持ってる」。
「あ、持ってんの? 2冊とも?」
「うん、藤森さんのも、中川さんのも」
あちゃー、恐れていたことが起こってしまった。だけど、本当にそれらの本を読んでいたら、あんな指し方はしないはずだ。それを質すと、
「中身が難しいから、コラムだけ読んだのよ。中川さんはあんな感じだし、藤森さんは穴熊に潜れって言うからら。ワタシ穴熊指さないし」
私はあんぐりである。私は中身を読んでないが、穴熊に潜れっていうのは、そういう作戦もあるってことだろう。
「じゃあ大平さんのは持ってる?」
「それは持ってない」
「……」
なんてことだ、私はAkuさんが持っている2冊を買ってしまったのか。
「いいよ買うよ、その本」
冗談ではない。ここで本を買い取ってもらったら、男としてのメンツが丸つぶれである。
まあいい、これは私が読んで勉強すればいいことである。ただAkuさん、棋書を買って読まないんじゃ、上達は望めない。
まあ、それもいいだろう。
関係者と参加者が続々と集まってきた。久しぶりに見るの人がいる。
「お久しぶりです」
「あ? ああ……」
「(ブロガーの)ひげめがねです」
「おおう、最近はブログの更新してんの?」
「いや最近は……やめました」
「……」
賢明である。1円にもならないブログを15年半も続けている私がバカなのだ。
湯川博士氏が来た。きょうは恵子さんは来ないようだ。
中井広恵女流六段も見えた。きょうは指導対局の役回りである。
その他、受賞者が続々と入場した。しかしその中に、ひとりだけ欠席者がいるのを私は知っていた。
(つづく)
また昨年は金曜日開催だったが、今年は土曜日。一般の人はそのほうが好都合だろうが、私はそうでもないのがつらい。まあ、何とか都合をつけることができた。
出席するにあたり、幹事のAkuさんに「右四間飛車」の書籍をプレゼントしようと考えた。以前の社団戦で彼女が、右四間飛車の勉強方法が分からない、と嘆いていたからだ。
私の求める本は決まっていて、藤森哲也五段の「藤森流なんでも右四間飛車」(マイナビ)である。相手が居飛車でも振り飛車でも右四間飛車、というコンセプトで、Akuさんにピッタリだ。
問題は、Akuさんがこの本をすでに持っているかもしれないということだ。Akuさんが対振り飛車戦で▲5九金、▲6八銀、▲7八金、▲7九玉の構えで指しているのを見たことがあるが、あれは本からの勉強でないと指せない。だけど、対振り飛車戦だったら▲7八玉型でなければならない。本を読んでいたら、そこはさすがに理解するのではないだろうか。
迷っていても仕方ないので、藤森五段の本をネットで注文しようとした。
ところがそれは送料がかかるうえ、到着までに日数がかかり、当日までに間に合わない。よって、書店で直接買うしかなくなってしまった。
行くのは東京駅丸の内口にある丸善である。ここは将棋の本が豊富に取り揃えてあり、たいていの本が手に入る。ここでダメなら駅反対側の八重洲ブックセンター、そこでダメなら神保町界隈に行こうと思った。
だいぶ早めに家を出て、丸善に向かう。将棋コーナーに着いて、本探しだ。ズラッと並ぶ棋書の中に、中川大輔八段「すぐ勝てる!右四間飛車」(マイナビ)を見つけた。さらに、大平武洋六段「これだけで勝てる右四間飛車のコツ」もあった。タイトル的には後者のほうに食指が動くが、私が求めるのは藤森五段の本だ。
そしてそれをやっと見つけた。その他にも右四間飛車の本があった。右四間飛車はけっこう人気があるようだ。
以上四択だが、よく考えたら複数を買ってもいいのだ。それで、藤森五段のと中川八段のを購入した。レジでは袋代が3円かかると言われたが、仕方ない。
まだ時間があるので、神田から歩いていく。きょうはあいにくの雨だが、私は雨男なので、外出時は覚悟している。途中、小諸そばがあったから入ろうとしたが、土曜日だから早仕舞いになっていた。
そのまま神保町に着いてしまった。開場は17:30、開演は18:00だ。まだ時間があるので、どこか喫茶店に入りたいが、これからコーヒーを飲むかもしれないのに、そんな無駄なことをしていいのか。
というか、腹も減ってきてしまった。だけどこれから何か胃袋に入れるのに、食べていいのか。だけどこの雨の中、もう時間も潰せないので、そのまま吉野家に入った。
並をありがたく食し、出版クラブに向かう。だがまだ時間がある。あまり早く入ると、「大沢、参加する気満々だな」と思われるので、周辺をぶらぶらする。やっていることが怪しすぎる。
開場時間になったので、入る。すると、受付を阿部氏、山本氏、中山氏が行っていた。Kan氏の手伝いに来て、そのまま入ってしまったものか。
「おカネ払いますか?」と阿部氏。むろんそうで、残念ながら、私は将棋ペンクラブの関係者ではない。
会場に入る。ここは2年前にも将棋ペンクラブ大賞贈呈式を、トークショーの形で行った。当時は会食のない地味なものだったが、コロナ禍を経て、よやく平常運転に戻ったわけだ。
Akuさんがいたので、さっそく棋書を渡す。
「これ、右四間飛車の本、プレゼント。これを全部記憶して……」
自分としてはしてやったり、だったのだが、Akuさんは「これ……」と浮かない顔だ。「持ってる」。
「あ、持ってんの? 2冊とも?」
「うん、藤森さんのも、中川さんのも」
あちゃー、恐れていたことが起こってしまった。だけど、本当にそれらの本を読んでいたら、あんな指し方はしないはずだ。それを質すと、
「中身が難しいから、コラムだけ読んだのよ。中川さんはあんな感じだし、藤森さんは穴熊に潜れって言うからら。ワタシ穴熊指さないし」
私はあんぐりである。私は中身を読んでないが、穴熊に潜れっていうのは、そういう作戦もあるってことだろう。
「じゃあ大平さんのは持ってる?」
「それは持ってない」
「……」
なんてことだ、私はAkuさんが持っている2冊を買ってしまったのか。
「いいよ買うよ、その本」
冗談ではない。ここで本を買い取ってもらったら、男としてのメンツが丸つぶれである。
まあいい、これは私が読んで勉強すればいいことである。ただAkuさん、棋書を買って読まないんじゃ、上達は望めない。
まあ、それもいいだろう。
関係者と参加者が続々と集まってきた。久しぶりに見るの人がいる。
「お久しぶりです」
「あ? ああ……」
「(ブロガーの)ひげめがねです」
「おおう、最近はブログの更新してんの?」
「いや最近は……やめました」
「……」
賢明である。1円にもならないブログを15年半も続けている私がバカなのだ。
湯川博士氏が来た。きょうは恵子さんは来ないようだ。
中井広恵女流六段も見えた。きょうは指導対局の役回りである。
その他、受賞者が続々と入場した。しかしその中に、ひとりだけ欠席者がいるのを私は知っていた。
(つづく)