将棋ペンクラブより、「第27回将棋ペンクラブ大賞」各賞が発表された。
【観戦記部門】
大賞:
大川慎太郎
第64期王将戦七番勝負第1局 渡辺明-郷田真隆(将棋世界)
優秀賞:
藤田麻衣子
第28期竜王戦1組2回戦 橋本崇載-行方尚史(読売新聞)
【文芸部門】
大賞:
松本博文
「ルポ電王戦 人間vs.コンピュータの真実」(NHK出版新書)
優秀賞:
今泉健司
「介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました」(講談社)
【技術部門】
大賞:
藤井猛
「角交換四間飛車を指しこなす本」(浅川書房)
優秀賞:
村山慈明
「矢倉5三銀右急戦」(浅川書房)
【観戦記部門】
大川慎太郎氏の王将戦第1局が大賞受賞。二次選考作品17の中で、私は最も高い評価を付けた(すなわち、「優」に◎を付けた)。
渡辺明王将の新手▲5五銀左を巡る考察は、上質の研究論文のごとし。真相を探るため関係者に聞き取りをするくだりは、探偵小説を読むかのようだった。分量は多かったが最後まで緊張感を切らさず、見事に書き上げた。
一抹の不安は、これが雑誌掲載だったこと。すなわち、いままでの大賞作品は新聞掲載だったから…というのは私の完全な記憶違いで、例えば昨年の観戦記大賞も、NHK将棋講座からだった。失礼。
藤田麻衣子さんはようやくの入賞。二次選考17作品のうち、2番目に面白かった。
藤田さんの観戦記は第1譜、すなわち対局開始時の描写に良さがある。タイトル戦を思わせるような高雅な趣があるのだ。
本局も対局者の緊張感、仕種を余すところなく記している。もちろん将棋も面白く、これが観戦記の質を高めたのは言うまでもないが、藤田さんの本質は、凡局を名局に昇華させるその筆力にある。本局ではその必要がなかった。これからは大賞を目指して頑張ってください。
【文芸部門】
松本博文氏は電王戦関連の本で2作ランクインしたが、「ルポ電王戦 人間vs.コンピュータの真実」のほうが面白い。この1冊で、人間対コンピュータの歴史がよく分かる。また、開発者の人となりなど、綿密に取材している。大変な労作と思う。
今泉健司氏の「介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました」は、出るべくして出た本で、編集(者)の安直さを感じた。ただし面白いことは間違いなく、奨励会時代の話はやはり泣かせる。
余談ながら、文芸部門で私がいちばん面白いと思ったのは、渡辺明「渡辺明の思考 盤上盤外問答」(河出書房新社)だった。
ラジオのDJを文章に起こした感じで、渡辺棋王がすべての質問に率直に答えているのがよい。後藤元気氏の聞き手がうまかったのだろう。ただ、これを純粋な「文章」として捉えるのは、少々抵抗を感じた。そこが減点になったかもしれない。
【技術部門】
未読なので、コメントは割愛します。
最終選考会の選考過程は、9月中旬発行の「将棋ペン倶楽部」会報・秋号に掲載される。
また将棋ペンクラブ大賞贈呈式は、9月18日(金)18時30分より、東京・JR四ッ谷駅前「スクワール麹町」で行われる。会費は男性・8,000円、女性・6,000円。シルバーウイークの前夜なので微妙だが、私も参加しようと思っている。
受賞の皆様、おめでとうございます。
【観戦記部門】
大賞:
大川慎太郎
第64期王将戦七番勝負第1局 渡辺明-郷田真隆(将棋世界)
優秀賞:
藤田麻衣子
第28期竜王戦1組2回戦 橋本崇載-行方尚史(読売新聞)
【文芸部門】
大賞:
松本博文
「ルポ電王戦 人間vs.コンピュータの真実」(NHK出版新書)
優秀賞:
今泉健司
「介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました」(講談社)
【技術部門】
大賞:
藤井猛
「角交換四間飛車を指しこなす本」(浅川書房)
優秀賞:
村山慈明
「矢倉5三銀右急戦」(浅川書房)
【観戦記部門】
大川慎太郎氏の王将戦第1局が大賞受賞。二次選考作品17の中で、私は最も高い評価を付けた(すなわち、「優」に◎を付けた)。
渡辺明王将の新手▲5五銀左を巡る考察は、上質の研究論文のごとし。真相を探るため関係者に聞き取りをするくだりは、探偵小説を読むかのようだった。分量は多かったが最後まで緊張感を切らさず、見事に書き上げた。
一抹の不安は、これが雑誌掲載だったこと。すなわち、いままでの大賞作品は新聞掲載だったから…というのは私の完全な記憶違いで、例えば昨年の観戦記大賞も、NHK将棋講座からだった。失礼。
藤田麻衣子さんはようやくの入賞。二次選考17作品のうち、2番目に面白かった。
藤田さんの観戦記は第1譜、すなわち対局開始時の描写に良さがある。タイトル戦を思わせるような高雅な趣があるのだ。
本局も対局者の緊張感、仕種を余すところなく記している。もちろん将棋も面白く、これが観戦記の質を高めたのは言うまでもないが、藤田さんの本質は、凡局を名局に昇華させるその筆力にある。本局ではその必要がなかった。これからは大賞を目指して頑張ってください。
【文芸部門】
松本博文氏は電王戦関連の本で2作ランクインしたが、「ルポ電王戦 人間vs.コンピュータの真実」のほうが面白い。この1冊で、人間対コンピュータの歴史がよく分かる。また、開発者の人となりなど、綿密に取材している。大変な労作と思う。
今泉健司氏の「介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました」は、出るべくして出た本で、編集(者)の安直さを感じた。ただし面白いことは間違いなく、奨励会時代の話はやはり泣かせる。
余談ながら、文芸部門で私がいちばん面白いと思ったのは、渡辺明「渡辺明の思考 盤上盤外問答」(河出書房新社)だった。
ラジオのDJを文章に起こした感じで、渡辺棋王がすべての質問に率直に答えているのがよい。後藤元気氏の聞き手がうまかったのだろう。ただ、これを純粋な「文章」として捉えるのは、少々抵抗を感じた。そこが減点になったかもしれない。
【技術部門】
未読なので、コメントは割愛します。
最終選考会の選考過程は、9月中旬発行の「将棋ペン倶楽部」会報・秋号に掲載される。
また将棋ペンクラブ大賞贈呈式は、9月18日(金)18時30分より、東京・JR四ッ谷駅前「スクワール麹町」で行われる。会費は男性・8,000円、女性・6,000円。シルバーウイークの前夜なので微妙だが、私も参加しようと思っている。
受賞の皆様、おめでとうございます。