今日はここまで1勝4敗。大野八一雄七段が
「大沢さんは、1局目なんだよな」
とつぶやく。
おっしゃるとおりで、私は1局目に勝つと波に乗るが、負けるとシュンとなって、以下の将棋がだらしなくなってしまう。私は典型的な連勝連敗タイプなのだ。
Fuj氏の報告によると、マイナビ女子オープン・チャレンジマッチが終わったという。
今回の女流棋士の参加は12名だが、ここに恐ろしい事実がある。仮に彼女ら12人の代わりに、竜王・名人・A級棋士10人が出場したとしよう。彼らがチャレンジマッチを戦っても、通過できない棋士が出る。なぜか。
なぜなら、今回の枠抜け数は「11」だから。つまり、今日ここにいた女流棋士のうち最低1人は、来年も同じ場所でアマと指すことになるのだ。ここを抜けだすのに、最短でも2年かかる女流棋士が出る――。女流の公式戦なのに、こんなバカなシステムがあるだろうか。
もっともチャレンジマッチは、今期もアマ優位だったようである。プロがアマにコロコロ負ける。女流の世界では、これが当然になりつつある。今期は田村真理子さんが枠抜けしたのが大ヒットだった。
「大沢さん、8月1日に一斉対局を見に行きましょうよオ」
Fuj氏が誘ってくれるが、お断りである。生室谷由紀ちゃんは4月の花みず木将棋オープンで十分目に焼き付けたので、もういい。当日は家でゴロ寝する。
Fuj氏が3日の一公―Ok戦(二枚落ち)を大盤に並べる。ま、また、この将棋を持ち出すのか…。
ここで私は△4四桂と指したが、不発だった。対してFuj氏の推奨手は△3六桂(参考1図)。素朴な金取りである。
「ほう。▲3八金と寄ると?」
「△2八銀で」
「あ、そうか。▲3七金や▲4七金も△2八桂成か」
整理すると、第1図から△3六桂▲4七金△2八桂成▲3七飛△4六銀打▲同金△同銀▲3六飛△3五銀上と、飛車を殺して上手よし。上手は飛車が入れば△3九飛がある。
さすがFuj氏、独特の手厚い攻めだ。私は全然浮かばなかった。ひょっとしたらFuj氏、私よりはるかに強いのかもしれない。
Fuj氏がついでに?大野七段にも聞いてみる。
「△5五歩だね。5筋に歩が立つようにしたいから」
「おおう…これは▲5五桂が生じるので突きたくなかったんですが。▲同角だと?」
「△3三銀」(参考2図)
おおー、と、周りから嘆息がもれた。これがプロの指し手か。△3三銀と、遊び駒を引き締める感じが実にいい。ちょっと、丸田祐三九段の指し手を思い出した。
「でも▲2五桂がありますが」
「それは△4四銀で、後の▲1三桂成は、香を取っても桂がスカでしょ」
「……」
人が変われば指し手も変わるが、この一連の指し手はさすがに唸った。正直、△3三銀までの局面でも▲5五桂のキズがあるから、この3手に無条件で賛同はできないが、どうもプロと私たちアマとは、思考回路が根本的に違うように思われた。
そしてもうひとつ言えるのは、私の△4四桂だけは「ない手」だったということだ。
Fuj氏は4日のOg―一公戦に局面を変える。私が中盤の入口で投げたやつである。もうこの際だから、何でもかんでも検討しちゃうのである。
「ここで▲7九玉△8七飛成▲3四歩△4二角▲3七銀(参考1図)としたらどうなんでしょう」
Fuj氏が大野七段に問う。私は投了しちゃったから、聞く立場にない。
大野七段は局面を一瞥すると、
「△7五角▲5七歩△5五歩▲同角△5四金(参考2図)で後手勝ちでしょう」
と、サラッと言った。
私たちは念のためOg氏にも声を掛け、同じことを聞いてみる。Og氏は
「△5五歩▲同角△5四金で…」
と言った。
「大野先生は△7五角▲5七歩の交換を入れましたが」
「ああ…そうですね。それを先に入れたほうがいいですか」
「……」
すごいもんだ。プロとプロを目指した人の指し手がほとんど同じことに、私たちは感心するばかりである。
「▲2四歩~▲2三歩成~▲3二と~▲4二と(▲2一飛成)と4手指しても、後手には全然響いてないでしょう。それくらい大差ということです」
と、大野七段が言う。
こういう人たちと将棋を指して、勝てるわけがないと思った。
(27日つづく)
「大沢さんは、1局目なんだよな」
とつぶやく。
おっしゃるとおりで、私は1局目に勝つと波に乗るが、負けるとシュンとなって、以下の将棋がだらしなくなってしまう。私は典型的な連勝連敗タイプなのだ。
Fuj氏の報告によると、マイナビ女子オープン・チャレンジマッチが終わったという。
今回の女流棋士の参加は12名だが、ここに恐ろしい事実がある。仮に彼女ら12人の代わりに、竜王・名人・A級棋士10人が出場したとしよう。彼らがチャレンジマッチを戦っても、通過できない棋士が出る。なぜか。
なぜなら、今回の枠抜け数は「11」だから。つまり、今日ここにいた女流棋士のうち最低1人は、来年も同じ場所でアマと指すことになるのだ。ここを抜けだすのに、最短でも2年かかる女流棋士が出る――。女流の公式戦なのに、こんなバカなシステムがあるだろうか。
もっともチャレンジマッチは、今期もアマ優位だったようである。プロがアマにコロコロ負ける。女流の世界では、これが当然になりつつある。今期は田村真理子さんが枠抜けしたのが大ヒットだった。
「大沢さん、8月1日に一斉対局を見に行きましょうよオ」
Fuj氏が誘ってくれるが、お断りである。生室谷由紀ちゃんは4月の花みず木将棋オープンで十分目に焼き付けたので、もういい。当日は家でゴロ寝する。
Fuj氏が3日の一公―Ok戦(二枚落ち)を大盤に並べる。ま、また、この将棋を持ち出すのか…。
ここで私は△4四桂と指したが、不発だった。対してFuj氏の推奨手は△3六桂(参考1図)。素朴な金取りである。
「ほう。▲3八金と寄ると?」
「△2八銀で」
「あ、そうか。▲3七金や▲4七金も△2八桂成か」
整理すると、第1図から△3六桂▲4七金△2八桂成▲3七飛△4六銀打▲同金△同銀▲3六飛△3五銀上と、飛車を殺して上手よし。上手は飛車が入れば△3九飛がある。
さすがFuj氏、独特の手厚い攻めだ。私は全然浮かばなかった。ひょっとしたらFuj氏、私よりはるかに強いのかもしれない。
Fuj氏がついでに?大野七段にも聞いてみる。
「△5五歩だね。5筋に歩が立つようにしたいから」
「おおう…これは▲5五桂が生じるので突きたくなかったんですが。▲同角だと?」
「△3三銀」(参考2図)
おおー、と、周りから嘆息がもれた。これがプロの指し手か。△3三銀と、遊び駒を引き締める感じが実にいい。ちょっと、丸田祐三九段の指し手を思い出した。
「でも▲2五桂がありますが」
「それは△4四銀で、後の▲1三桂成は、香を取っても桂がスカでしょ」
「……」
人が変われば指し手も変わるが、この一連の指し手はさすがに唸った。正直、△3三銀までの局面でも▲5五桂のキズがあるから、この3手に無条件で賛同はできないが、どうもプロと私たちアマとは、思考回路が根本的に違うように思われた。
そしてもうひとつ言えるのは、私の△4四桂だけは「ない手」だったということだ。
Fuj氏は4日のOg―一公戦に局面を変える。私が中盤の入口で投げたやつである。もうこの際だから、何でもかんでも検討しちゃうのである。
「ここで▲7九玉△8七飛成▲3四歩△4二角▲3七銀(参考1図)としたらどうなんでしょう」
Fuj氏が大野七段に問う。私は投了しちゃったから、聞く立場にない。
大野七段は局面を一瞥すると、
「△7五角▲5七歩△5五歩▲同角△5四金(参考2図)で後手勝ちでしょう」
と、サラッと言った。
私たちは念のためOg氏にも声を掛け、同じことを聞いてみる。Og氏は
「△5五歩▲同角△5四金で…」
と言った。
「大野先生は△7五角▲5七歩の交換を入れましたが」
「ああ…そうですね。それを先に入れたほうがいいですか」
「……」
すごいもんだ。プロとプロを目指した人の指し手がほとんど同じことに、私たちは感心するばかりである。
「▲2四歩~▲2三歩成~▲3二と~▲4二と(▲2一飛成)と4手指しても、後手には全然響いてないでしょう。それくらい大差ということです」
と、大野七段が言う。
こういう人たちと将棋を指して、勝てるわけがないと思った。
(27日つづく)