伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦第3局(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、7月30日・31日に徳島県で行われた。
徳島県といえばお盆の時期の阿波踊りである。私が20代のころ、夏休みに徳島県を訪れ、そのとき泊まったユースホステルの企画で、阿波踊りを踊りに行った。もっとも私は、踊るアホウより見るアホウ派なので、見るだけだった。だが、ユース徴収の参加費は踊るアホウとほぼ同額で、バカバカしかった。しかも宿泊者は定員オーバーだったから寝るときも雑魚寝で、まったくいい思い出がなかった。やはり、企画は自分で立てるのがいいと痛感したものだった。
さて、第3局である。第1局で藤井聡太王位が苦しい将棋を逆転勝ちしたときは、これは王位の防衛が濃厚だと思った。
ところが第2局に渡辺明九段が快勝してみると、見方が変わった。渡辺九段は対藤井戦26局目にして5勝目だったがこの勝利が実に価値が高く、いままでの苦手意識を一気に払拭した感じだった。この調子なら、残り5局を3勝2敗も不可能ではないと思ったのである。
ただいずれにしても、本局に勝ったほうが大きく有利になるのは言うまでもなかった。
将棋は藤井王位の先手で、角換わりになった。となればお互い金をまっすぐ上がり飛車を引く例の形……と思いきや、渡辺九段のほうは旧式である。しかも、まだ駒組が進むかという局面で、渡辺九段が突然仕掛けたから驚いた。
これがなかなかに曲者で、藤井陣は金は上がったものの飛車を引いていない。この2手は一組で、この瞬間は大きなキズになっている。銀冠で▲2七銀と上がった瞬間のようなものだ。渡辺九段は細心の注意を払い、ここでの仕掛けを目論んでいたのだ。
ここで藤井王位が長考に沈む。ここから数手のおもな変化は、藤井王位なら10秒もあれば読める。しかし、藤井王位のアンテナが何か引っかかったのだろう。藤井王位の長考はなおも続き、ついに昼休みに入ってしまった。
再開後も藤井王位の熟考は続き、ついに3時間10分の考慮後、藤井王位は着手した。
これが至極当たり前の「▲同歩」で、しかもその後形勢がよくなったかと思えばさにあらず、形勢は互角のままだった。まあ、それはそうであろう。そんなに形勢が動く局面でもない。
ただなんとなく、藤井王位の姿勢に畏怖を感じる、謎の大長考ではあった。
その後はいろいろあったが、渡辺九段が優勢になった。大きな強みが玉を中段に逃げ越せることで、実際それが実現しては、渡辺九段の勝ちは動かないように思われた。
だがそうなったらそうなったで、王手馬取りで馬を消され、意外に難しい。それでも渡辺九段が有利だろうと思いきや、そうでもない。
渡辺九段、角の王手。これに藤井王位が桂を合駒したのが、持駒が「飛角桂桂」だったから当然といえば当然なのだが、この一手の妙手だった。
将棋は2つの意味を指すのが最上とされる。この場面においては、「王手を受ける」「攻めの足掛かりを作る」の2手を同時に指せたのが大きかった。
以下は、藤井王位の華麗な寄せを見るばかり。最後は芸術的な詰みで、渡辺九段の投了となった。残り時間は、藤井王位2分、渡辺九段1分。あれだけ差があった消費時間が、最後は逆転した。これも、よくあるパターンである。
渡辺九段、第1局につづき第3局も、尾を引く逆転負けだった。相手が藤井王位でなかったら3連勝してはずで、その胸中、察するに余りある。
いっぽうの藤井王位は本局、近い将来名局集が編まれるなら必ず収録される名局だった。苦戦続きのシリーズだが、3局終わって2勝1敗は、望外の数字だろう。
第4局は19日・20日。
徳島県といえばお盆の時期の阿波踊りである。私が20代のころ、夏休みに徳島県を訪れ、そのとき泊まったユースホステルの企画で、阿波踊りを踊りに行った。もっとも私は、踊るアホウより見るアホウ派なので、見るだけだった。だが、ユース徴収の参加費は踊るアホウとほぼ同額で、バカバカしかった。しかも宿泊者は定員オーバーだったから寝るときも雑魚寝で、まったくいい思い出がなかった。やはり、企画は自分で立てるのがいいと痛感したものだった。
さて、第3局である。第1局で藤井聡太王位が苦しい将棋を逆転勝ちしたときは、これは王位の防衛が濃厚だと思った。
ところが第2局に渡辺明九段が快勝してみると、見方が変わった。渡辺九段は対藤井戦26局目にして5勝目だったがこの勝利が実に価値が高く、いままでの苦手意識を一気に払拭した感じだった。この調子なら、残り5局を3勝2敗も不可能ではないと思ったのである。
ただいずれにしても、本局に勝ったほうが大きく有利になるのは言うまでもなかった。
将棋は藤井王位の先手で、角換わりになった。となればお互い金をまっすぐ上がり飛車を引く例の形……と思いきや、渡辺九段のほうは旧式である。しかも、まだ駒組が進むかという局面で、渡辺九段が突然仕掛けたから驚いた。
これがなかなかに曲者で、藤井陣は金は上がったものの飛車を引いていない。この2手は一組で、この瞬間は大きなキズになっている。銀冠で▲2七銀と上がった瞬間のようなものだ。渡辺九段は細心の注意を払い、ここでの仕掛けを目論んでいたのだ。
ここで藤井王位が長考に沈む。ここから数手のおもな変化は、藤井王位なら10秒もあれば読める。しかし、藤井王位のアンテナが何か引っかかったのだろう。藤井王位の長考はなおも続き、ついに昼休みに入ってしまった。
再開後も藤井王位の熟考は続き、ついに3時間10分の考慮後、藤井王位は着手した。
これが至極当たり前の「▲同歩」で、しかもその後形勢がよくなったかと思えばさにあらず、形勢は互角のままだった。まあ、それはそうであろう。そんなに形勢が動く局面でもない。
ただなんとなく、藤井王位の姿勢に畏怖を感じる、謎の大長考ではあった。
その後はいろいろあったが、渡辺九段が優勢になった。大きな強みが玉を中段に逃げ越せることで、実際それが実現しては、渡辺九段の勝ちは動かないように思われた。
だがそうなったらそうなったで、王手馬取りで馬を消され、意外に難しい。それでも渡辺九段が有利だろうと思いきや、そうでもない。
渡辺九段、角の王手。これに藤井王位が桂を合駒したのが、持駒が「飛角桂桂」だったから当然といえば当然なのだが、この一手の妙手だった。
将棋は2つの意味を指すのが最上とされる。この場面においては、「王手を受ける」「攻めの足掛かりを作る」の2手を同時に指せたのが大きかった。
以下は、藤井王位の華麗な寄せを見るばかり。最後は芸術的な詰みで、渡辺九段の投了となった。残り時間は、藤井王位2分、渡辺九段1分。あれだけ差があった消費時間が、最後は逆転した。これも、よくあるパターンである。
渡辺九段、第1局につづき第3局も、尾を引く逆転負けだった。相手が藤井王位でなかったら3連勝してはずで、その胸中、察するに余りある。
いっぽうの藤井王位は本局、近い将来名局集が編まれるなら必ず収録される名局だった。苦戦続きのシリーズだが、3局終わって2勝1敗は、望外の数字だろう。
第4局は19日・20日。