一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

大山の名局・4

2015-07-26 00:46:00 | 名局
今日7月26日は、大山康晴十五世名人の命日である。日本中に衝撃が走ったあの日から、23年の年月が経った。そこで今日は、「私が勝手に選ぶ、大山十五世名人の名局」の4回目をお届けする。
今回の対局相手は、若き日の谷川浩司八段(20歳)。大山十五世名人は59歳だったが、当時は王将と王座(準タイトル)を保持し、まったく衰えを感じさせなかった。
これがどんなにすごいことか、当時の私たちは気付いていなかった。

昭和57年(1982年)6月10日
第21期十段戦 挑戦者決定リーグ
▲八段 谷川浩司
△王将 大山康晴
(持ち時間:6時間)

▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△8二玉▲9六歩△9四歩▲8六歩△7二銀▲8七玉△5二金左▲7八銀△4三銀▲2五歩△3三角▲5七銀△6四歩▲3六歩△7四歩▲4六銀△3二銀▲5五銀△6三銀▲7九角△5四歩▲6六銀△4三銀▲7七銀引△2二飛▲6六歩△5五歩▲6七金△5六歩▲同金△5四銀▲5八飛△7二金▲3七桂△7三桂▲4六角△8四歩▲6五歩△同銀▲5五金△5三歩▲6四金△同銀▲同角△6六歩▲5三角成△6七金▲3一馬(第1図)

△7八金▲同金△6九銀▲5九飛△7八銀不成▲同玉△6七金▲8八玉△7七金▲同玉△5六銀打▲6八歩△4五歩▲7八玉△6七歩成▲同歩△9九角成▲7七銀△5三香▲5八歩△4二飛(第2図)

▲4二同馬△同金▲5一飛△5五角▲8一金△8三玉▲8二金打△9三玉▲7二金△7七角成▲同桂△6七銀成(投了図)
まで、94手で大山王将の勝ち。

竜王戦の前身、十段戦のリーグは新規が2人と狭き門だったが、1人10局指せるので、リーグ入りは棋戦優勝以上の重みがあった。
大山十五世名人は十段のタイトル8期を含め、毎期リーグ戦に在籍。1977年、第16期十段戦リーグで2勝8敗となり初の陥落をしたが、翌年当たり前のようにリーグに復帰。1979年、再び陥落したが、3年後のこの年、予選で優勝して、再びリーグ復帰した。
本局はリーグ戦3局目。大山王将の四間飛車に、谷川八段の囲いは天守閣美濃。当時の対振り飛車戦で得意にしていた形である。
29手目▲4六銀に△3二銀引が大山流。ここ△3二飛では▲3五歩で、先手の作戦にハマると見ている。本譜は▲5五銀に△6三銀を余儀なくされたが、美濃囲いの弱体を苦にしないのが大山十五世名人だった。
ここから両者攻め合いとなり、61手目▲3一馬がハイライト。ここ、△5八金と飛車を取る手が見えるが、それではタイセイに遅れる。終盤は駒の損得よりスピード第一で、△7八金と、こちらの駒を剥がすのがいいのである。
数手進んで82手目、馬の利きに△4二飛と回ったのがすごい。次に△4六歩を見せ▲4二同馬を強要、▲5一飛には△5五角と打って、一手勝ちを狙う。後手玉の守りは金1枚だけだが、△8四歩と突いてある形が妙に広く、一手凌げると見ているのだ。
谷川八段は▲8一金以下手順を尽くし、△6七銀成まで投了。大山王将の快勝となった。
今盤に並べてみて、大山十五世名人の将棋の若さ、老獪さ、優れた将棋理論、感覚にはただただ唸るばかりである。こうした「魅せる将棋」を指せるプロ棋士は、いまや激減しているように思われる。まあそれはそうだ。中盤の○手まで前例踏襲、やっと新手が出たと思ったらソフト新手を拝借では、感動も生まれないというものだ。
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7月18日の大野・北島教室(4)「プロの見解」

2015-07-25 00:27:14 | 大野・植山教室
今日はここまで1勝4敗。大野八一雄七段が
「大沢さんは、1局目なんだよな」
とつぶやく。
おっしゃるとおりで、私は1局目に勝つと波に乗るが、負けるとシュンとなって、以下の将棋がだらしなくなってしまう。私は典型的な連勝連敗タイプなのだ。
Fuj氏の報告によると、マイナビ女子オープン・チャレンジマッチが終わったという。
今回の女流棋士の参加は12名だが、ここに恐ろしい事実がある。仮に彼女ら12人の代わりに、竜王・名人・A級棋士10人が出場したとしよう。彼らがチャレンジマッチを戦っても、通過できない棋士が出る。なぜか。
なぜなら、今回の枠抜け数は「11」だから。つまり、今日ここにいた女流棋士のうち最低1人は、来年も同じ場所でアマと指すことになるのだ。ここを抜けだすのに、最短でも2年かかる女流棋士が出る――。女流の公式戦なのに、こんなバカなシステムがあるだろうか。
もっともチャレンジマッチは、今期もアマ優位だったようである。プロがアマにコロコロ負ける。女流の世界では、これが当然になりつつある。今期は田村真理子さんが枠抜けしたのが大ヒットだった。
「大沢さん、8月1日に一斉対局を見に行きましょうよオ」
Fuj氏が誘ってくれるが、お断りである。生室谷由紀ちゃんは4月の花みず木将棋オープンで十分目に焼き付けたので、もういい。当日は家でゴロ寝する。
Fuj氏が3日の一公―Ok戦(二枚落ち)を大盤に並べる。ま、また、この将棋を持ち出すのか…。

ここで私は△4四桂と指したが、不発だった。対してFuj氏の推奨手は△3六桂(参考1図)。素朴な金取りである。

「ほう。▲3八金と寄ると?」
「△2八銀で」
「あ、そうか。▲3七金や▲4七金も△2八桂成か」
整理すると、第1図から△3六桂▲4七金△2八桂成▲3七飛△4六銀打▲同金△同銀▲3六飛△3五銀上と、飛車を殺して上手よし。上手は飛車が入れば△3九飛がある。
さすがFuj氏、独特の手厚い攻めだ。私は全然浮かばなかった。ひょっとしたらFuj氏、私よりはるかに強いのかもしれない。
Fuj氏がついでに?大野七段にも聞いてみる。
「△5五歩だね。5筋に歩が立つようにしたいから」
「おおう…これは▲5五桂が生じるので突きたくなかったんですが。▲同角だと?」
「△3三銀」(参考2図)

おおー、と、周りから嘆息がもれた。これがプロの指し手か。△3三銀と、遊び駒を引き締める感じが実にいい。ちょっと、丸田祐三九段の指し手を思い出した。
「でも▲2五桂がありますが」
「それは△4四銀で、後の▲1三桂成は、香を取っても桂がスカでしょ」
「……」
人が変われば指し手も変わるが、この一連の指し手はさすがに唸った。正直、△3三銀までの局面でも▲5五桂のキズがあるから、この3手に無条件で賛同はできないが、どうもプロと私たちアマとは、思考回路が根本的に違うように思われた。
そしてもうひとつ言えるのは、私の△4四桂だけは「ない手」だったということだ。
Fuj氏は4日のOg―一公戦に局面を変える。私が中盤の入口で投げたやつである。もうこの際だから、何でもかんでも検討しちゃうのである。

「ここで▲7九玉△8七飛成▲3四歩△4二角▲3七銀(参考1図)としたらどうなんでしょう」

Fuj氏が大野七段に問う。私は投了しちゃったから、聞く立場にない。
大野七段は局面を一瞥すると、
「△7五角▲5七歩△5五歩▲同角△5四金(参考2図)で後手勝ちでしょう」
と、サラッと言った。

私たちは念のためOg氏にも声を掛け、同じことを聞いてみる。Og氏は
「△5五歩▲同角△5四金で…」
と言った。
「大野先生は△7五角▲5七歩の交換を入れましたが」
「ああ…そうですね。それを先に入れたほうがいいですか」
「……」
すごいもんだ。プロとプロを目指した人の指し手がほとんど同じことに、私たちは感心するばかりである。
「▲2四歩~▲2三歩成~▲3二と~▲4二と(▲2一飛成)と4手指しても、後手には全然響いてないでしょう。それくらい大差ということです」
と、大野七段が言う。
こういう人たちと将棋を指して、勝てるわけがないと思った。
(27日つづく)
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7月18日の大野・北島教室(3)「勝ちに不思議の勝ちあり」

2015-07-24 00:24:49 | 大野・植山教室
3時休みにHon氏が来ていた。来るべき人が来たが、今日は植山悦行七段が休みなので、植山七段との将棋漫才が聞けないのが残念だ。
4局目は大野八一雄七段に教えていただく。
「今日は0勝3敗ですよお。大野先生に癒してもらわないと」
「フフ…いいですよ。平手でやりますか」
「とんでもない、角落ちでお願いします」
という会話を経て、対局開始。私の居飛車明示に、大野七段は5筋から動く。ここで穏やかに収めればいいものを、私は▲4六角と突っ張る。こんな感じで、いつも大野七段との将棋は、乱戦になってしまうのだ。でもそれが楽しい。
お互い飛車を5筋に回り、私は決断の▲5五角(と、金を取る)。△同銀に▲5三歩△同飛▲5四歩△同飛▲4五金で、△5五の銀を取り下手よし…が読み筋だったが、▲4五金の時△2四飛と横に逃げられ、▲5五飛に△2九飛成で下手が芳しくないことが分かった。下手玉は居玉である。
将棋は玉を囲うのが大事。R氏なども女流棋士にそう教わっていながら実戦ではあまり守っていないが、私もヒトのことをいえない。
2歩しかないので▲5四歩と控えて打ったが、大野七段に△5六歩と押さえられ、つまらない戦いにしてしまった。
少し進んで上手・5六歩、下手・5八飛、6九金、7七銀の局面で、大野七段は△5七角。以下▲6八銀(当然▲6八金だった)△8四角成▲5六飛と飛び出して、角金交換ながらまだ指せると思った。
手合い係のFuj氏が通って、「相変わらず面白い将棋を指してるなあ…」とつぶやいた。
勝負はこれから、と思ったのだが、これは私の大局観が悪かった。居玉を境に金銀が左右に分かれているので、まとめようがないのだ。
大野七段は小刻みに馬を動かし、気が付いたら私の必敗形になっていた。最後は綺麗に寄せられて、負け。せっかくの指導対局だったのに、もったいないことをした。
これで0勝4敗である。勝負は時の運だが、今日は内容が悪い。
5局目はS君とリーグ戦。S君はもっと後で私と指したかったようだが、そろそろ指さないと、さすがに機会がなくなる。
私の後手番で対局開始。▲7六歩△3四歩▲2六歩△3四歩。矢倉が得意なS君、Fuj流の▲6六歩かと思ったが、▲2五歩。それなら▲2四同飛まで確定である。
いつもならここで△2三歩だが、今回はS君が△2五角戦法を研究してきている気がした。それを外すなら△8六歩▲同歩△同飛だが、△2三歩と打って負かされるならしょうがないと思い、そう打った。
S君は果たして▲3四飛。しかし、△8八角成▲同銀△2五角▲3二飛成△同銀▲3八金(疑問手)△3三銀に▲3五金(疑問手)△1四角▲1六歩△2四歩と進んで、早くも後手が指しやすくなった。
S君、この戦法の勉強はしていなかったようだ。ここでS君は▲3四歩と打とうとしたが、それは二歩である。S君、何か誤算があったか。S君は▲5六角と据えた。
労せずして優勢になったが、ここから私もおかしな手を指す。△8六歩▲同歩△同飛▲8七銀に△8五飛と金取りに当てればいいものを、私は△8四飛と引く。▲8六歩に反省して△8五歩と合わせ、▲同歩△同飛で待望の3五金取り。しかし▲4五金と寄られて何の効果もなかった。
S君はどこかで▲2三歩と角の退路を塞げばよかった。私は△2三角と引いたが、思い直して△3二角。まったくこのあたり、指し手が一貫していない。
それでもS君の角を取り、さすがにこの将棋は勝ったと思った。ところが…。

第1図以下の指し手。△6九角▲7九桂△7八角成▲同銀△8八竜▲7七角△5八金(投了図)
まで、一公の勝ち。

飛車角4枚を持って私の必勝形。だがここでの指し手が全然分からなかった。先手は何も手がないようだが、▲2三歩の垂らしや、▲2三とから香を入手して▲8五香の狙いがある。後手も意外と忙しいのである。
私は△6九角と打った。以下必然の手順?を経てS君が投了したが、私はホッと胸をなで下ろしていた。
最終2手前の▲7七角が大悪手。一つ離して▲6六角(参考図)と打つべきだった。

これに△5八金は、▲同玉△7八竜▲6八金で、相変わらず飛車の両取りが残っている。また△8六飛も、▲8七歩以下はっきりしない。
Fuj氏が通ったので検討に加わってもらったが、どの変化も難しい。ということは、後手が失敗したということだ。S君、不利の時間が長すぎて、戦意を喪失したようだ。
戻って第1図では△9九竜だったか。以下▲2三と△同角▲1一香成△8八歩▲8五香△9四飛▲8一香成△8九歩成で1手勝ちを目指す。いささか気が利かないが、手駒もないので、こうやって地道に進めるしかなかった。本譜は危険だった。
(つづく)
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7月18日の大野・北島教室(2)「北島七段に教えていただく」

2015-07-23 00:24:39 | 大野・植山教室
(21日のつづき)
今日は東京・竹橋で第9期マイナビ女子オープン・チャレンジマッチが行われている。Fuj氏はこの戦いが気になるようで、仕事の合間にパソコンで経過を見ている。
女流棋士とアマが混合で戦い出場権を決めるこの大会、私は女流棋士の尊厳が失われるような気がして、あまり好きになれない。
女流棋士になるのは大変なこと。棋戦出場(対局料がもらえること)は当然の権利であるべきと思うのだ。
3時休みが終わり、私は北島忠雄七段に教えていただくことになった。ちなみに、七段に教えていただくのは2度目。前回は惨敗したので、本局は少しでもまともな将棋を指したいと思った。
右では美少年君が平手で挑んでいる。戦型は角換わり相腰掛銀と、格調高い。
私は角を落としていただき対局開始。私は居飛車から早めに▲3六歩と突く。その後すぐに▲3七桂と跳ねるべきだったが1手遅れ、△3四歩と突かれた。今度▲3七桂は△3三桂とされて不可。細かいところだが、ここはもう少し掘り下げるべきだった。
私は▲5八飛と回って、矢倉中飛車の趣。しかし北島七段の△7三桂に隙を感じ、▲7五歩と仕掛けた。以下△8四飛▲7四歩△同飛の後、私は▲7二歩と垂らす。
相手が植山悦行七段なら、「く~っ!! 大沢流ですねえ」と苦笑いするところ。北島七段は静かに怒って?攻めてきた。
△9五歩▲同歩△9七歩、△8六歩▲同歩…△8五歩と、上手は手筋連発。歩だけでこうやって手にしてしまうとは、当然だがさすがプロである。
美少年君のところはひたすら長い。彼はこんなに長考派だったろうか。
私の将棋は、▲7一のと金を手順に取られ、金を端に追いやられたものの、北島七段の攻めをギリギリ受け止めてやれやれ…と思ったら、△6六歩の突き出しがあった。
これを▲同歩は△6七香▲同銀△7七飛成で下手壊滅。私は▲5八金と上がったが、今度は△7二香が詰めろだ。
今更ながら、プロは安い駒で攻めてくるのがうまい。もはや芸術的でさえある。
もうここで投げようと思ったが、もう少し指してみる。△7九歩成を▲同角、と取った。香の利きあるが、しょうがない。
北島七段は「ヒョエー!」と驚きつつ、角を取る。「あなた、こんな無茶な手を指してはいけません」というところだったろう。
以下、北島七段の巧妙な寄せに、私は投了を余儀なくされた。
感想戦。下手が中飛車に振ったのに、▲7五歩と突いたのが欲張りすぎ。普通に▲5六銀~▲4八金と、駒組を進めるのが良かったという。
かくして今回も残念な結果だったが、棋士が変われば指し手も変わり、とても刺激的だった。北島先生、またよろしくお願いします。
3局目はHas氏とリーグ戦。Has氏との対戦は、最初の2局は私が負けたが、その後は私がずっと勝ち続けている。その間、負けたこともあったかもしれないが、あっても1局である。すなわち、この対局では勝ち星を計算していた。
本局は私の後手で、対局開始。Has氏はいつもの四間飛車。生徒に得意戦法は数々あるがHas氏のそれは特殊で、四間飛車美濃囲い一本槍である。Has氏はこの直前Sar君と指し、勝っていたが、それも四間飛車対中飛車だったらしい。
後手番だが急戦で仕掛けたいので、△1四歩を省いて△6四銀~△7五歩と行った。あらかじめ▲7八飛と備えられていたが、何とかなるだろうと思った。
Has氏は▲5六歩と待つ。ここで私が△8六歩と突き捨てたのが、重大な手順前後だった。
Has氏は▲同角と取り、△7六歩に▲同飛。先手が十分の態勢になってしまった。
△8六歩では当然、△7六歩を先にするところ。以下▲同銀△8六歩▲同歩△7二飛なら、いつもの将棋だった。
本譜、次に▲6四角~▲7一銀があるので私は△7三銀引だが、こんな退廃的な手を指すようでは、先が見えている。ここで半分、戦力が殺げた。
ところがHas氏にも甘い手が出て、私に望みが出てきた。しかし…。

第1図以下の指し手。△6五歩▲7七角△6六歩▲同角△同角▲同銀(途中1図)

△2二角▲5五歩△6五歩▲8六歩△8一飛▲6五銀△5五角▲5八飛△6四歩▲5四銀(途中2図)

△5四同桂▲5五飛△4六桂▲同金△5四桂▲4七金(第2図)

私は△6五歩と突き、角交換を果たす。途中1図ではもちろん△9九角の予定だったが、自陣の角のラインに不安を感じ、△2二角と打った。しかしやっぱりシャレすぎで、普通に△9九角と打つべきだった。
数手後△6四歩と打ち、▲5六銀に次の手を考えようと思ったら、Has氏は▲5四銀!(途中2図)
逆側から見たら当然の一手かもしれないが、私はまったく見えておらず、これで負けになっているのに愕然とした。
▲7二角の筋があるので、私は角を見捨てて△同桂と取ったが、数手後▲4七金(第2図)まで進み、先手優勢となった。

第2図ではまだしもここで△4六銀だったが、私は△8六飛と走り、Has氏に落ち着いて▲5九飛と引かれ、以下ボロ負けした。
いやはや、実力とはいえ、この負けは痛い。リーグ戦は9勝3敗と後退。このくらいの星は何人かいるだろうし、もう首位争いから脱落した気分である。
今期の優勝は諦めた。
(つづく)
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第27回将棋ペンクラブ大賞発表

2015-07-22 00:45:09 | 将棋ペンクラブ
将棋ペンクラブより、「第27回将棋ペンクラブ大賞」各賞が発表された。

【観戦記部門】

大賞:
大川慎太郎
第64期王将戦七番勝負第1局 渡辺明-郷田真隆(将棋世界)

優秀賞:
藤田麻衣子
第28期竜王戦1組2回戦 橋本崇載-行方尚史(読売新聞)

【文芸部門】

大賞:
松本博文
「ルポ電王戦 人間vs.コンピュータの真実」(NHK出版新書)

優秀賞:
今泉健司
「介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました」(講談社)

【技術部門】

大賞:
藤井猛
「角交換四間飛車を指しこなす本」(浅川書房)

優秀賞:
村山慈明
「矢倉5三銀右急戦」(浅川書房)

【観戦記部門】
大川慎太郎氏の王将戦第1局が大賞受賞。二次選考作品17の中で、私は最も高い評価を付けた(すなわち、「優」に◎を付けた)。
渡辺明王将の新手▲5五銀左を巡る考察は、上質の研究論文のごとし。真相を探るため関係者に聞き取りをするくだりは、探偵小説を読むかのようだった。分量は多かったが最後まで緊張感を切らさず、見事に書き上げた。
一抹の不安は、これが雑誌掲載だったこと。すなわち、いままでの大賞作品は新聞掲載だったから…というのは私の完全な記憶違いで、例えば昨年の観戦記大賞も、NHK将棋講座からだった。失礼。
藤田麻衣子さんはようやくの入賞。二次選考17作品のうち、2番目に面白かった。
藤田さんの観戦記は第1譜、すなわち対局開始時の描写に良さがある。タイトル戦を思わせるような高雅な趣があるのだ。
本局も対局者の緊張感、仕種を余すところなく記している。もちろん将棋も面白く、これが観戦記の質を高めたのは言うまでもないが、藤田さんの本質は、凡局を名局に昇華させるその筆力にある。本局ではその必要がなかった。これからは大賞を目指して頑張ってください。

【文芸部門】
松本博文氏は電王戦関連の本で2作ランクインしたが、「ルポ電王戦 人間vs.コンピュータの真実」のほうが面白い。この1冊で、人間対コンピュータの歴史がよく分かる。また、開発者の人となりなど、綿密に取材している。大変な労作と思う。
今泉健司氏の「介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました」は、出るべくして出た本で、編集(者)の安直さを感じた。ただし面白いことは間違いなく、奨励会時代の話はやはり泣かせる。
余談ながら、文芸部門で私がいちばん面白いと思ったのは、渡辺明「渡辺明の思考 盤上盤外問答」(河出書房新社)だった。
ラジオのDJを文章に起こした感じで、渡辺棋王がすべての質問に率直に答えているのがよい。後藤元気氏の聞き手がうまかったのだろう。ただ、これを純粋な「文章」として捉えるのは、少々抵抗を感じた。そこが減点になったかもしれない。

【技術部門】
未読なので、コメントは割愛します。

最終選考会の選考過程は、9月中旬発行の「将棋ペン倶楽部」会報・秋号に掲載される。
また将棋ペンクラブ大賞贈呈式は、9月18日(金)18時30分より、東京・JR四ッ谷駅前「スクワール麹町」で行われる。会費は男性・8,000円、女性・6,000円。シルバーウイークの前夜なので微妙だが、私も参加しようと思っている。
受賞の皆様、おめでとうございます。
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