一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

大山の名局・11

2022-07-26 23:42:32 | 名局
きょう7月26日は、大山康晴十五世名人の命日である。平成4年の没だから、もう30年も経ってしまった。
当時私は北海道を旅行中で、当日は旭川にいた。家に電話を掛けたところ、オヤジから「大山が死んだ」と聞かされ、呆然としたのであった。
それから30年、大山十五世名人は、現在もあっちこっちのネットで話題になっている。肉体はほろびても、大山将棋は現在も生きているのだ。
さて恒例の「大山の名局」第11弾は、1974年1月7日・8日に指された、第12期十段戦第7局(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)である。
前年の2月、第22期王将戦で中原誠名人に0-4で敗れ無冠に転落した大山十五世名人。当時はテレビで特集番組が放送されるなど、大変な衝撃だった。
しかし大山「九段」はすぐに立ち直ってきた。この年の秋、第12期十段戦で挑戦者になり、中原十段(名人、王将、王位)に挑戦したのである。
七番勝負はシーソーゲームとなり、翌年1月7日、最終決戦を迎えた。
将棋は大山九段の先手になり、三間飛車に振った。中原十段は舟囲いから急戦を狙う。
△8六歩を大山九段は▲同角と取り、数手後、▲9六香と上がった。端の香上がりはいまや常識だが、4段目まで上がったのは珍しい。
そこから華麗な攻め合いとなり、大山九段がわずかにリードを保ち、中盤戦から終盤戦に突入した。

第1図以下の指し手。△3五香▲2六桂△3三桂▲1七桂△3一角▲3四桂△4一金▲7七銀△7二銀▲同竜△8七角成▲同歩△7八飛(第2図)

△3五香は先手玉にプレッシャーを掛けた手。対して大山九段の▲2六桂があまりよくなかったようだ。
なぜなら後手に銀が入ると、△2八銀で一発だから。そしてその銀は8六に落ちている。そこで後手は△8五歩▲9五銀△9七香成▲8五飛△7七角成として、この銀を狙いに行くのがよかった。
しかるに中原十段は△3三桂。むろん△2五桂を狙ったものだが、これには▲1七桂の対抗がピッタリである。
▲3四桂の両取りを防いで中原十段は△3一角と引いたが、大山九段はそれでも桂を跳ね、▲7七銀と飛車筋を開いて指し易くなった。
中原十段は△8七角成だが、先手は半分遊んでいた飛車が急所の角と交換になり、十分である。

第2図以下の指し手。▲6三銀△6二歩▲5二銀不成△同金▲6一竜△5一銀(第3図)

第2図で後手は△4八桂成の切り札があるが、▲3六歩で耐えている。よって、▲6三銀と攻め合った。ここ、▲8五角もよさそうだが、△6二歩と受けられてパッとしない。
本譜も似た展開になったが、金銀交換後の▲6一竜が厳しい。後手は△5一銀と受けざるを得ず、先手がいよいよよくなった。
とはいえ、ここらあたりで決め手がほしいところである。

第3図以下の指し手。▲6六銀△1三角▲5七銀 以下、113手まで大山九段の勝ち。

第3図では▲8五角の攻め合いもあるが、優勢なほうが斬り合いに持ち込まなくてもよい。
じっと▲6六銀が大山九段らしい手で、こう躱しておけば後手は指し切り、の読みである。
△1三角には▲5七銀と引き、8六の僻地にいた銀が、立派に守り駒になった。遊び駒を巧妙に働かせる。これぞ大山将棋の真骨頂である。
以下113手まで、大山九段の勝利となった。ときに大山新十段50歳。この後大山十段は「50歳の新人」を宣言し、中原名人との激闘を繰り広げていくのである。
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第34回将棋ペンクラブ大賞、決定

2022-07-25 23:09:13 | 将棋ペンクラブ
きょう25日、将棋ペンクラブから、「第34回将棋ペンクラブ大賞・受賞作品」が発表された。

【観戦記部門】
◎大賞
椎名龍一 第80期A級順位戦・豊島将之竜王VS佐藤天彦九段(毎日新聞)

○優秀賞
藤井奈々 第34期竜王戦第3局・藤井聡太三冠VS豊島将之竜王(読売新聞)

【文芸部門】
◎大賞
松浦寿輝『無月の譜』(毎日新聞出版)

○優秀賞
芦沢央『神の悪手』(新潮社)

【技術部門】
◎大賞
石川泰『将棋 とっておきの速度計算』(マイナビ出版)

○優秀賞
飯島篤也『級位者のための将棋上達法』(マイナビ出版)

☆特別賞
日本女子プロ将棋協会『駒我心~初代女流名人 蛸島彰子の歩み~』(日本女子プロ将棋協会)
初の女流棋士である蛸島彰子女流六段の足跡や記録、その歩みとともに草創期からの女流棋界の歴史を記した貴重な書籍の出版に対して。

・最終選考委員
川北亮司(作家)
西上心太(文芸評論家)
所司和晴(棋士七段)
森田正光(気象予報士・株式会社ウェザーマップ創業者)

今年の最終選考委員は、木村晋介会長が勇退し、川北亮司氏が復帰。森田正光氏が新加入した。選考委員は多いほど良いので、増員には大賛成である。
観戦記大賞の椎名氏は昨年の第33回に続き、2年連続の大賞受賞。これは史上初の快挙である。椎名氏は第32回でも優秀賞を獲っており、ここに来て椎名旋風が吹いている。
本文は、「11年周期」の考察が秀逸だった。
優秀賞の藤井さんは、旅館で指すタイトル戦の雰囲気を余すところなく伝えている。藤井さんは女性ならではの視点、細やかな描写が魅力で、今後も期待大である。

松浦氏は、数々の文芸賞を受賞している大家。本書は「元奨励会員」「名駒探しの旅」がやや類型的に思えたが、その駒探しの冒険譚が読ませる。
余談だが、松浦氏と私は同じ誕生日の一回り違い。同じ星の下に生まれているはずだが、そのストーリーには雲泥の差がある。
優秀賞の芦沢央さん「神の悪手」は、短編集。表題作がいちばん面白い。ちょっと脚色したら、サスペンス2時間ドラマになりそうな素材だ。
蛸島女流六段の本は、当然何がしかの賞が贈られるべき。特別賞は、いい落としどころだったと思う。

技術部門は、ともに愛棋家が受賞した。昔は棋士のネームバリューで売り上げが左右されたが、現在は内容本位になっているようだ。
以上の皆様、おめでとうございます。

なお、今年の贈呈式は、未定である。
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最近、夢を見ない(2022-06-15、07-17)

2022-07-24 23:20:14 | 
最近はあまり夢を見ない。いや見ているのだが、印象的なシーンが頭に残らない。
頭に残っても、夢は生ものなので、メモをするのに手間取ると、すぐに忘れてしまう。
とりあえず、2回分だけ記しておく。

まずは6月15日に見た夢。
この日はいろいろな夢を見たが、ひとつだけ憶えていること。自宅の庭がかなり大きくなって崖状になり、そこのアリの巣もかなり大きくなり、多くのアリが出入りしていた。
これは我が家を食い荒らすのではなく、おとなしいものだ。それを私は好ましく思っていた。
というところで、尿意で目が覚めた。
実は今月になって、台所に大量のアリが出没するようになった。幸いシロアリの類ではないが、拙宅は木造の古民家(大げさではない。拙宅の居間は掘りごたつなのだ!)なので、あまりこういう生き物にのさばられたくないのである。
いまはアイスを家で食べても、袋やバーを水につけて寝る始末だ。
私がこのとき見た夢は、予知夢だったかもしれない。
余談だが、それより前、6月28日には、拙宅にネズミが出た。拙宅に出たのは20年近くぶり。
怖ろしい世の中になった。

続いてかなり飛ぶのだが、7月17日に見た夢。
朝の7時半ごろに1回小便で起きた。このとき、何か夢を見たのだが、内容は忘れてしまった。
寝直して見た夢。私は警備員で、どこかを警備することになった。ほかにも警備員が3名おり、そのリーダー格の人が、私に「お前はあっちへ行け」と言った。
そのあたりまでしか記憶がない。
このあたりで、アップしておこう。
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堀口七段の連敗続く

2022-07-23 23:09:47 | 男性棋士
今年の5月10日、堀口一史座七段は、第94期棋聖戦の一次予選・石川陽生七段戦で勝利し、八段昇段まで「あと1」とした。
ここ数年、体力的な問題で不調をかこっている堀口七段。しかしここまでくれば八段昇段は時間の問題と思われた。
しかしここからが長い。そこから堀口七段は5連敗。トンネルに入ってしまった。

5月10日 第94期棋聖戦一次予選2回戦 ●西尾明七段
6月16日 第81期順位戦C級2組1回戦 ●井田明宏四段
7月8日 第8期叡王戦七段戦1回戦 ●近藤正和七段
7月14日 第81期順位戦C級2組2回戦 ●古賀悠聖四段
7月21日 第16回朝日杯一次予選1回戦 ●藤森哲也五段

連敗地獄はいつかは止まるが、堀口七段は2020年度、9月10日から3月5日まで15連敗。2021年度は5月20日から12月16日まで14連敗している。
この、2021年3月5日から5月20日の間は、わずか1勝。上野裕和六段に勝ったのみだった。
連敗地獄といえば、2018年~2019年の桐山清澄九段もひどかったが、堀口七段もかなりのものだったことが分かる。これでは今後も連敗が続いてもおかしくない。
その一方で堀口七段は、第79期C級2組順位戦で、気鋭の梶浦宏孝六段を破っている。ときどき往年の力を発揮することがある。だから、誰にも負けそうな雰囲気がありながら、誰にも勝つ可能性があるという、不思議な状況になっているのだ。
とりあえず今年度は、C級2組順位戦の残り8局、銀河戦、王座戦、竜王戦、王将戦、棋王戦、NHK杯と、対局自体はいっぱい付く。
現将棋界は藤井聡太竜王を中心に回っているが、C級2組であえぐベテラン棋士の勝利に注目している将棋ファンもいるのだ。堀口七段の連敗は、昇段の楽しみが先延ばしされたと解して、のんびり構えてみようか。
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「六本木クラス」の将棋の場面

2022-07-22 21:02:27 | 将棋雑記
テレビ朝日で木曜夜9時から放映している「六本木クラス」は、韓国の人気ドラマ「梨泰院クラス」のリメイク版だ。
平たく言うと、父を殺された宮部新(竹内涼真)による、復讐劇。新の敵は、長屋ホールディングス会長の長屋茂(香川照之)、その息子の龍河(早乙女太一)だ。
第3話では、その長屋親子が将棋を指すシーンがあった。その部分図が以下である。

この▲6二金で、龍河は「オレの勝ちだね」と席を立つ。
しかしこの局面は詰みではなかった。遠くに馬が利いていて、茂は△6二同馬と取りつつ、「だからお前はバカなんだ」とつぶやくのである。
実はこの回、私は別番組を見ていて、これはビデオに録っていた。だから全局面も目にしたのだが、見終えて消してしまったのである。上図は私のかすかな記憶だった。
が、こうしてブログネタにするなら、とりあえず残しておくべきだった。
それはともかく、ここから親子の関係がある程度類推できる。
まず龍河だが、馬の利きに気付かないとは、有段者ではあり得ない。そもそも、茂が頭金を許すわけがないではないか。しかも龍河が感想戦をやらずに席を立つのも褒められた行為ではなく、明らかに級位者といえる。
対して茂の棋力がどうか。局面が不明なので何ともいえないが、クレバーな茂のこと、アマ高段ではないだろうか。
とすると、この対局は平手で指されたはずだから、手合い違いということになる。
それでも「いい勝負」になったということは、茂が手加減していたということだ。
しかし、龍河がそのことに気付いていない。いままで龍河はさんざんバカをやってきたが、そのたびに陰で茂が尻ぬぐいをしてきた。それでも龍河は反省しない。だから龍河はバカなのである。
それにしても、長屋ホールディングの会長とあろう者が、よく将棋を指す時間があるものだ。もっとも、「忙中閑あり」という諺もある。
また龍河にしても、親と将棋を指す気になるのだから、親子の仲はいいのだろう。
今後の展開も楽しみにしている。
コメント (2)
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