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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (139) 長尾家 52

2024年07月14日 09時30分01秒 | 甲越軍記
 これは小者などを使わせたため気を害されたと思い、今一度今度は侍女を彼の若者の若党に遣わせ、丁寧に聞けば
「このお方は館のお部屋様(藤紫)の弟君、原三郎様であると申し捨てて去って行った。

これより、お時の方の胸の中は三郎の面影が全てを占めて心苦しき日々を過ごす
三郎君と言えば名高き御名、越後守護代長尾晴景が寵愛する稀なる御人、いかなる伝手もなく季節は春から夏へと移る
ここに小督(こごう)という目の不自由な女芸人がある
琴、早歌を歌い諸家へ立ち入って芸を披露するが、この日は新発田家に招かれて、内室お時の前で琴を弾き、扇の舞を披露してみせた
そのとき、総金に柳を描いた扇を見ると、何やらの詩歌が書かれてある
あきらかに一首書かれた扇に、ただならぬものを感じて「それを見せて見よ」と言うと、小督は慌てて扇を懐に隠そうとしたのを、無理やりに押さえつけて引き出してみれば
「人ずてにしらせてしがなかくれぬの、みごもりにのみ恋やわたらん」
新古今集、中納言朝忠が恋の歌をしどけなく書かれてある
「これはどなたの形見であるか」と問えば、小督は頬を赤く染めて「神に近い、これは形見などではありません、このほどお部屋(藤紫)の弟君原三郎様邸にて演じた時に、原様が戯れにお書きになり私めに給わられたものでございます」と言った。

これを聞いたお時の方は、これ幸い、渡りに船と小督に胸の内を打ち明けて、三郎との間を取り持ってもらいたいと頼んだ
流石に、事がことであれば小督も五度、六度と断り続けたが、女の執念ついに口説き落とし小督に三郎への恋文を持たせたのであった。

小督は、お時の方より授けられたとおりに細々とお時の胸の内を伝え、文を渡すと、好色な原三郎は拒むことなく受け入れ、その日より幾度となくお時との文の交換は積もっていった。

その頃、お時の夫、新発田尾張守は長尾家の勢として新山砦に出陣していた
「よき折り」と小督を使い、三郎を女装に作り、縫い箔した緋綸子の小袖を打ち重ね、帽子を長く頭を隠し、刀、脇差を琴箱に入れて新発田の屋敷に入ったが誰も三郎を疑うものなく、すんなりと錠口を通過した。
部屋に入ると、腰元たちが三郎を男姿に戻し、内室お時の居間に通す。 


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