神様がくれた休日 (ホッとしたい時間)


神様がくれた素晴らしい人生(yottin blog)

ムーミンの戦争と平和と愛

2024年09月08日 19時24分17秒 | 小説/詩
原作者トーベ・ヤンソン(1914-2001)の、ムーミンの本を買った
「ムーミン」と言えば、お子様向けの童話か小学生向けのアニメだと思っていたが、テレビ番組「アナザーストーリーズ」で見て、大人へのメッセージであることを知った。
「ムーミン」のベースがヤンソンの母国「フィンランド」とレーニンのソビエトとの戦争であったことも知った。
全部で9巻あって、1945年の第一巻「小さなトロールと大きな洪水」から1970年発行の第九巻まで25年間かけて書いている。
第二巻(1946年)の彗星衝突の話は、日本では敗戦の翌年昭和21年であり、長崎、広島の原爆投下を、彗星の地球衝突で表しているとのこと
しかも長崎に原爆が落とされた日はヤンソンの誕生日でもあった
1巻、2巻は戦争を非難しているのは明らかで、事実ヒットラーやスターリンの風刺画を何度も書いて発禁処分にもなっている。

因みに、フィンランドとソビエト(現、ロシア)の戦争とは1939年から1940年に起こった3か月間の戦争
ソビエトが国防上のことからフィンランドに領土交換を持ちかけたが、不平等な提案であったからフィンランドは断った
するとソビエトは軍事力をもって力で攻め取ろうと侵略戦争を仕掛けて来た、現在のウクライナ戦争に似ている
軍事力でも人口でもフィンランドはソビエトに対抗できる力はなかったが、国土を守るために戦った。
初戦は楽勝気分のソビエトが、冬でもあり必死のフィンランドに手痛い敗北を喫したが、本気モードになったソビエトは物量作戦で勝利した
しかしフィンランド軍の死傷者約7万に対して、ソビエト軍の死傷者は33万という信じられないものだった。
フィンランドはカレリア地方などをソビエトに奪われた、第二次大戦では、単独で失地回復の為、ソビエトと再び戦い負けたがソビエトに侵攻したドイツとは同盟しなかった
しかし連合軍のソビエトと戦ったために、日本同様枢軸国と見なされた

トーベ・ヤンソンは戦争を憎み続けた、そんな中からムーミンは生まれたから、テレビなどの平和なムーミン谷ではなく、原書は暗くて辛いムーミン谷から始まっている。
これが私が今頃急にムーミンの原本版を読みだした理由だ。

ヤンソンは、近年になってようやく日本で取り上げられている同性愛のマイノリティであり、フィンランド人でありながら一割に満たないスウェーデン系で、人種的マイノリティでもあったと言う
でも彼女は自分の心に従い、自由に生きた
そんな孤独を作品の中で「孤独な冷凍魔物?」として登場させている。

ヤンソンのムーミン作品は、この番組を見た限り人生の教訓や生きざま、愛と孤独、人とのつながりを描き、戦争と独裁者を憎む
私が、すぐにムーミンの原作に飛びついたのはそんなわけだ。

この全9巻を読み終えたら、今度は「源氏物語」を読んでみる
とは言え、古典を読み切ることなど無理なので、あらすじ的な漫画で大筋だけでも知りたいと思っている
源氏物語には795首の和歌が書かれているという、当然ながら登場人物がそれぞれに詠んだことになっているが、登場人物の心情を紫式部がストーリーの一部として一人で書いたのだから恐れ入る。
ちょっと今思ったのだけど、源氏物語を映像化したらミュージカルになるのでは? 大河ドラマで「ミュージカル源氏物語」をやらないだろうか。

詩だけは学生時代に興味をもって書いても見たが、俳句、川柳、和歌、短歌などは全くの無知であるから、源氏物語の訳本全集などとても読む気にはならないだろう
とりあえず、質の良い漫画であらすじだけでも捉えておいて、機会あれば知ったかぶりをしてみようと思う。


寺内タケシ / 霧のカレリア

「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた(194) 甲越 川中島血戦 21

2024年09月08日 09時34分06秒 | 甲越軍記
 坂道での上下の合戦は二か所に及び、山や谷に鳴り響き、樹木は震えて動き、今にも崩れ落ちるかと思うほどである
上の道では、板垣、小幡、横田、市川の甲州勢と、小笠原勢の野木、丸山兄弟の勢が互いに一歩も引かず挑み合う
その中から野木備前守の働きは鬼人の如く、これに当たる者は全て命を絶たれる
武田勢は野木備前ただ一人に切り立てられて足並み乱れた
そこに曲淵庄左衛門が兵卒を押し分けてあらわれて野木に向かい
「敵ながら天晴なる豪勇の強者、御大将の名を承らん」と言えば、野木はにっこりと笑い「某は野木備前守にて候、貴殿の名を承らん」と問えば
曲淵は馬を進めて、「某は板垣弥治郎の組頭、曲淵庄左衛門と申す者なり、いざ一手仕らん」と槍をしごいて突きかかる
備前守も槍をりゅうりゅうとしごいて、これに対する
近づいては槍を突き合わせ、飛び違えて突かんとすれば、それを跳ね上げ打ち払い、上段に槍先合わすと見えれば、たちまち下段に絡み、互角に戦う勇姿は獅子の猛り狂うに似たり
「いざ雌雄を決しようぞ」と睨み合うその時、にわかに大雨が車軸を流すかのように降り始めた
日は既に西の山に隠れ、樹木の影鬱々たる山間であれば冥々として足の立ち位置さえわからなくなれば互いに声を掛け合い
「勝負は明日決することとしよう」と左右にさっと引き上げる
下道の戦も同じく谷水溢れて足場不自由なれば、これまた物別れとして引いていく。

かくして雨の勢いは一日では衰えず、両軍共に人馬を休める
ようやく三日を過ぎて雨足次第に衰えていけば、武田勢は小坂を越えて攻め太鼓を打てば、松本勢も金鼓を打ち鳴らして攻めかかる
矢を打ちあい、槍衾を作って叩き合い、互角に渡り合い引いては押し、押しては引くき、互いに敵を一挙に討ち果たそうと思えども、一進一退の攻防なり
しかし、ここに地理案内に勝る松本勢が駆け引きに於いて、一歩先んずれば武田勢はややもすれば、討ちたてられかのように見えたり。

ここに武田勢より曲淵庄左衛門、黒糸縅の鎧、粕毛の馬に白泡食わせたる武者姿にて現れ、大音にて「野木殿はおられようか、昨日の勝負を決しもうそう、いざ出会い給え」と言えば
松本勢の中より野木備前守「おう!」と出でて、萌黄縅の鎧に黒の馬に乗り、同じく槍を構えて睨み合う
双方、聞こえたる勇士であれば、互いに手練れの穂先は鋭く突き結ぶ
猛虎、飛竜のすさまじき戦いは電光閃かせ、火花飛び散る忙しさ
突けば刎ね、引けば付け入り、しばらく勝負の行方は見えず
あまりの激しい両者の打ちあいになれば、敵味方ともに戦をしばし休めて二人の決闘を息をのんで見守る
「曲淵討たれんか、野木突かれんか」と固唾を飲む。

野木は勝敗のつかぬ戦いに苛立ち、一気に勝負を決せんと畳みかけて突きかければ、その恐るべき勢いに、ともすれば曲淵は守勢となって後ずさりする、見守る者は「あわや曲淵討たれるか」と唾を飲み込む
されども死中に僅かの隙間を見つけた曲淵が、大喝して稲妻の如く付け入り、備前守の胸元のはずれから喉をめがけて、グサっと突けば、穂先八寸ばかり突き出て、野木備前守たまらず大地にがばっと落ちるところを曲淵、馬から飛び降りて押さえて首を取る。