原作者トーベ・ヤンソン(1914-2001)の、ムーミンの本を買った
「ムーミン」と言えば、お子様向けの童話か小学生向けのアニメだと思っていたが、テレビ番組「アナザーストーリーズ」で見て、大人へのメッセージであることを知った。
「ムーミン」のベースがヤンソンの母国「フィンランド」とレーニンのソビエトとの戦争であったことも知った。
全部で9巻あって、1945年の第一巻「小さなトロールと大きな洪水」から1970年発行の第九巻まで25年間かけて書いている。
第二巻(1946年)の彗星衝突の話は、日本では敗戦の翌年昭和21年であり、長崎、広島の原爆投下を、彗星の地球衝突で表しているとのこと
しかも長崎に原爆が落とされた日はヤンソンの誕生日でもあった
1巻、2巻は戦争を非難しているのは明らかで、事実ヒットラーやスターリンの風刺画を何度も書いて発禁処分にもなっている。
因みに、フィンランドとソビエト(現、ロシア)の戦争とは1939年から1940年に起こった3か月間の戦争
ソビエトが国防上のことからフィンランドに領土交換を持ちかけたが、不平等な提案であったからフィンランドは断った
するとソビエトは軍事力をもって力で攻め取ろうと侵略戦争を仕掛けて来た、現在のウクライナ戦争に似ている
軍事力でも人口でもフィンランドはソビエトに対抗できる力はなかったが、国土を守るために戦った。
初戦は楽勝気分のソビエトが、冬でもあり必死のフィンランドに手痛い敗北を喫したが、本気モードになったソビエトは物量作戦で勝利した
しかしフィンランド軍の死傷者約7万に対して、ソビエト軍の死傷者は33万という信じられないものだった。
フィンランドはカレリア地方などをソビエトに奪われた、第二次大戦では、単独で失地回復の為、ソビエトと再び戦い負けたがソビエトに侵攻したドイツとは同盟しなかった
しかし連合軍のソビエトと戦ったために、日本同様枢軸国と見なされた
トーベ・ヤンソンは戦争を憎み続けた、そんな中からムーミンは生まれたから、テレビなどの平和なムーミン谷ではなく、原書は暗くて辛いムーミン谷から始まっている。
これが私が今頃急にムーミンの原本版を読みだした理由だ。
ヤンソンは、近年になってようやく日本で取り上げられている同性愛のマイノリティであり、フィンランド人でありながら一割に満たないスウェーデン系で、人種的マイノリティでもあったと言う
でも彼女は自分の心に従い、自由に生きた
そんな孤独を作品の中で「孤独な冷凍魔物?」として登場させている。
ヤンソンのムーミン作品は、この番組を見た限り人生の教訓や生きざま、愛と孤独、人とのつながりを描き、戦争と独裁者を憎む
私が、すぐにムーミンの原作に飛びついたのはそんなわけだ。
この全9巻を読み終えたら、今度は「源氏物語」を読んでみる
とは言え、古典を読み切ることなど無理なので、あらすじ的な漫画で大筋だけでも知りたいと思っている
源氏物語には795首の和歌が書かれているという、当然ながら登場人物がそれぞれに詠んだことになっているが、登場人物の心情を紫式部がストーリーの一部として一人で書いたのだから恐れ入る。
ちょっと今思ったのだけど、源氏物語を映像化したらミュージカルになるのでは? 大河ドラマで「ミュージカル源氏物語」をやらないだろうか。
詩だけは学生時代に興味をもって書いても見たが、俳句、川柳、和歌、短歌などは全くの無知であるから、源氏物語の訳本全集などとても読む気にはならないだろう
とりあえず、質の良い漫画であらすじだけでも捉えておいて、機会あれば知ったかぶりをしてみようと思う。
寺内タケシ / 霧のカレリア