おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
久しぶりに遠藤周作のエッセイを読みました。『楽天主義のすすめ』の新装版が出ているからです。
遠藤氏のイタズラぶり、ユーモアにはつい笑ってしまいます。
遠藤氏によれば、イタズラには3種類あるのだそうです。
1.相手への思いやり、迷惑を考慮せず、ただ相手をひっかけるという快感でやるイタズラ
これは本当のイタズラと悪フザケとを混同したもので、氏の最も嫌悪するもの。
2.反逆精神や風刺精神に基づいて行われるイタズラ
世の既成道徳に一寸水をかけてやろうとする気持ちがこうしたイタズラとなる。
3.この世知辛い世の中にもう少しユーモアの種をまきましょうというもの
原則としては自分も笑うが、ひっかけた相手も笑わせるということを目的としている。
遠藤氏は、結核で入院中、3.のタイプのイタズラをしでかしていました。
新しい患者が入室してくると、必ず大部屋のイタズラ好きが遠藤氏を呼びに来ます。遠藤氏は、医師に化けるべく大急ぎで背広に着替え、診察着を上からはおり、聴診器を持って、糞真面目な顔をして新入り患者のいる大部屋を尋ねて行きます。
同室の連中はみな示し合わせているから遠藤氏が入室すると、わざと恐縮した表情を見せ、頭を下げたりします。
「私が山田助教授であります。一寸、脈を見ましょう」
何も知らない新入り患者は、言われるままに手を出したり、口をあけたりするのですが、そのたびに遠藤氏はエルンストハイネンとか、ブロンコピァッセンとか、出鱈目のドイツ語を呟き、
「いや、ありがとう。あとから私の弟子が参りますから、あれに精密検査を命じておきましょう。不出来な男だが、もし不満がおありなら私にいつでも言ってください」
そう言って部屋を立ち去っていったのです。
これがやがて主任看護師に知れ、イタズラ仲間は看護婦室に呼ばれ、さんざん説教されたのです。
他にも声に出して笑ってしまう箇所が満載。
さすが「狐狸庵」こと遠藤周作先生。
<お目休めコーナー> 港の見える丘公園(横浜)で
