おはようございます。アドラー心理に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨日(7月21日)は、夜遅くまでパソコンにずっと向かっていた1日でした。
ペルグリーノ博士のワークショップのテキストの翻訳の手直しをするのと、日本能率協会マネジメントセンターから8月発刊の『マンガでやさしくわかるアドラー心理学 人間関係編』の原稿の校正のためです。
我ながらよく働いた1日でした。
うちのカミさんも会社に来て、収納の知識と経験をふんだんに生かしていました。
本当によく働く夫婦だ。
さて、「アドラー本」の1冊として『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(内藤誼人著、ぱる出版、1,400円+税)を読みました。
内藤誼人の本は今までに何冊も読んでいて、どちらかというとそこそこの評価を与えていました。
その内藤氏がアドラーの言葉をどう料理するか、とても楽しみでした。
Lesson01から Lesson56までアドラーあるいはその弟子たちの言葉を散りばめ、内藤氏流の解説を加える方式の本で、「なるほど、なるほど」と読んでいました。
「アドラーの心理学は、ものすごく前向きな心理学である。いちいち、クヨクヨと思い悩むより、将来にどうすればいいのかを考える心理学である」
というところには線を引き、「よくわかってるじゃないの、この人」と思いました。
ただ、94ページの「共同体感覚の重要性」を説いた
「共同体感覚というのは、他の人の気持ちを正しく読み取る能力のことであり、他の人を喜ばせる技術のことである」
の記述には、「え~!」とのけぞってしまう自分がいました。
私の訳書『アドラーのケース・セミナー ― ライフ・パターンの心理学』(A.アドラー著、W.B.ウルフ解説、一光社、2,850円+税)からの引用も2か所ありました。
この本はそもそも一人の大人と11人の子どもたちのケースに解説を加え面接を行った、いわゆるライブの症例研究の本です。
内藤氏の本では「下心を持つな」というLesson46があり、こう引用されていました。
「もし私が、誰かに気に入ってもらいたいという下心があって、誰かにプレゼントをあげるとしたら、本当の友情は築けないけど、もし私がある人を好きで、その人に嘘をつかなければ、その人は本当の友達になってくれる」
この文章は、アドラーがカールという、嘘をつき、盗みを働く8歳の少年に対して面接を行ったもので、アドラーは、将来医師になりたいというカールにこんなことを言っています。
「君はお医者さんになりたいんだってね。とても素晴らしい職業だよ。私もお医者さんなんだよ。お医者さんになるためなら、自分のことよりも他の人にもっと関心を向けなければならない。そうすれば、人が病気になったとき、何が必要か理解できるからね。よい友達になろうとするのが先で、自分のことをあまり考えようとしてはならない。もし私が、誰かに気に入ってもらいたいという下心があって、誰かにプレゼントをあげるとしたら、本当の友情は築けないけど、もし私がある人を好きで、その人に嘘をつかなければ、その人は本当の友達になってくれる。君も同じようにできると信じているよ」
他の人に関心を持つこと(いわゆる「共感」)についての文脈の中での言葉なのに、「下心を持つな」で語られては、私ならずともアドラー先生も、アドラー心理学をしっかりと学んでいる人も「ちょっと待って!」という気持ちになるのではないでしょうか?
パーツであるアドラーの言葉をいくら散りばめても、それはアドラー心理学にはなりません。
やはりアドラー心理学を学ぶには、体系的に把握するのが必要で、そのためには自分の「私的論理」のかたよりを仲間との切磋琢磨しながら学ぶのが一番だと思うのですが、いかがでしょうか?
◆アドラー心理学をしっかり学ぶためには こちら をご参照ください。
<お目休めコーナー> 7月の花(22)
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