おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨日(2月24日)の10:00~17:00は、超大企業の研究所の研究員を指導する立場にいる14人を対象にカウンセリング・マインドや勇気づけを伝える研修を行ってきました。
この企業の、この研究所での研修は8年目くらいになります。
全員が大学院の修士課程、あるいは博士課程を修了している人たちで、私としては、ご質問・ご意見などを含めて楽しめた研修でした。
これからが本題です。
『マンガでやさしくわかる心理学』(横田正夫著、松尾陽子マンガ原作、山鳥おふう作画、日本能率協会マネジメントセンター、1,500円+税)を読みました。
私としては、心理学としてのアドラー心理学を捉え直すいいきっかけになりました。
まずは、アドラー自身が自分の「個人心理学」を「科学的な方法」を用いることにこだわっていたことを書いておきます。
『人生の意味の心理学 上』(岸見一郎訳、アルテ、1,800円+税、P.18~19)にこんな記述があります。
「世界の偉大なすべての運動において、人は共同体感覚を増進する努力をしたが、宗教はこの方法におけるもっとも重要な努力の1つである」ことを認めつつ、宗教がしばしば誤解されてきているのに対し「個人心理学は、科学的な方法で同じ結論に達しており、それをなしとげるために科学的な提案をしている」とし、人生に与える意味の重要性に触れつつ、「生理学や生物学から区別された心理学の役割とは、われわれに意味とそれが人間の行動と幸福に影響する方法をわれわれに理解させることである」と「共同体感覚」の項を結んでいます。
ここで理解できることは、アドラー自身の思いとしては、アドラー心理学に科学的な方法を駆使しようとしつつも、基礎心理学(後述)で排除される「人生に与える意味」とか「幸福に影響する方法」を模索しようとしていたことです。
ここまでだと本の紹介になっていませんね。
私がこの本をもとに考え、アドラーの見解を確かめたくなったっことはご理解ください。
『マンガでやさしくわかる心理学』は、科学的な方法をもとにした心理学の本です。
私立大学の文学部心理学科で働く遠藤彩子(25歳)を主役に、若き大学教授、神代祐介(39歳)などが絡む、物語としてもかなり面白いマンガで引きつけつつ、横田正夫氏の解説で展開されます。
横田氏は「心理学はひと言で言えば行動の科学」から始め、心理学を個人内の機能を扱う基礎心理学と、現実社会とのかかわり、適応からの逸脱、適応の増進を扱う応用心理学に分け、それぞれを実にわかりやすく説いてくれます。
基礎心理学では、心の機能を感覚、知覚、記憶、思考などに分け、これらのそれぞれの機能を扱います。
応用心理学には、アドラーの「人生に与える意味」とか「幸福に影響する方法」と関わる心理学もあります。
ヴントを起源とする心理学の歴史にも触れ(ただ、これはあっさり過ぎの感あり)、「実験法」「観察法」「心理検査法・調査法」「面接法」の方法論をそれぞれのPARTで伝えてくれます。
この本の最後は、こんな言葉で結ばれます。
「心理学は、心の病にかかわるための有用な方法を提供しているばかりでなく、健康な一般の人が少し生きにくさを感じるようになった時の援助にも有効な方法を提供することができるのです」
私なりの結論としては、こんなに簡潔に心理学の全体像を教えてくれる本はありません。
マンガと解説のマッチングが絶妙です。
読み終えて、視野が広がった気がし、また、アドラー心理学を宗教的に語る人、哲学的に語る人などがいるけれど「アドラー心理学は心理学なのだ」と、あたりまえのことを再認識できた本でした。
強くお勧めです。
◆私なりに考えるアドラー心理学への思いを4月24日(日)11:00~13:00開催の アドラー心理学ゼミナール で「この頃 アドラー心理学に関して思うこと」と題して語ります。
質疑応答の時間もたっぷり設けます。
<お目休めコーナー> 2月の花(25)