見もの・読みもの日記

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藤森照信の特選美術館三昧

2005-02-14 00:25:38 | 読んだもの(書籍)
○藤森照信著、藤塚光政写真『藤森照信の特選美術館三昧』TOTO出版 2004.6

 私は美術品を見るのが好きで、美術館にはよく足を運ぶ。それから、建築を見るのも好きだ。しかし、美術館自体を建築として見ることには、これまであまり熱心でなかった(例外は、著者の作品である秋野不矩美術館くらいか)。

 本書には、初めて名前を聞くような新しい美術館と並んで、定番どころも取り上げられている。しかし、国立西洋美術館、鎌倉の近代美術館、渋谷の松涛美術館などは、本書の写真を見ると、え?こんな美しい建物だったかしら?と、記憶に残る印象とのズレに大きな戸惑いを感じてしまう。

 写真の詐術ということもある。しかし、より大きな問題は、多くの美術館が、「建物を作品として見せる」という姿勢を貫いていないことにあると思う。経営上、いたしかたないのだろうけれど、いくぶん小規模な展覧会だと、不要スペースには「立入禁止」の札を立てて観覧者の導線を切ってしまったり、省エネを理由に灯りを消したり、あるべき窓にブラインドを下ろしたりして、設計のコンセプトをずたずたにしているのは日常茶飯なケースだと思う。

 奈良の大和文華館は、展示室の中央にガラス張りの中庭を持っている。しかし、私が訪ねたのは二度とも古典書画の展示会だったせいか、光を嫌って、完全にブラインドが下ろされていた。このブラインドが取り払われたときの開放的な展示室の姿を、私は写真と空想でしか体験したことがない。

 渋谷の松涛美術館が、円形の吹き抜けを囲むようなかたちをしていることには気がついていた。でも、エントランスホールから、対面の展示室に向かって、吹き抜けの真下を通り、噴水付きの池の上を渡る橋が架かっているなんて初めて知った! 廊下をまわっていくのが唯一の「順路」だと信じて疑っていなかったから。今度行ったら、ぜったい、この橋のアプローチを渡ってみたい。

 まだ見ぬ美術館で、行ってみたいと思ったのは、廃校となった小学校の木造校舎を利用して作られたという、北海道の「アルテピアッツア美唄」。それから、香川県の「イサム・ノグチ庭園美術館」。明治時代の酒蔵に立つ現代彫刻の写真を見ていると、この佇まいを自分の目で確かめずにおれなくなる。それから、石山修武の「リアスアーク美術館」。箱根の「ポーラ美術館」は日帰りできそうである。ああ、旅行好きの虫が騒ぐなあ...
コメント (1)
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