見もの・読みもの日記

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ムコクセキ・モダン/日本民藝館

2005-02-15 21:55:58 | 行ったもの(美術館・見仏)
○日本民藝館 特別展『大津絵』

http://www.mingeikan.or.jp/

 週末、思い立って駒場の日本民藝館に出かけたのは、特別展『大津絵』に惹かれたわけではなく、『藤森照信の特選美術館三昧』を読んだためである。

 同書の著者は、民藝館の外装にふんだんに用いられた大谷石に着目する。昭和初期、大谷石という材料は、オシャレで洋風でモダンなものだった。「日本民藝館は一見すると伝統的だが、ちゃんと見ると、大谷石のみならずそうとうヘンなのである」と言う。そこから著者は、柳宗悦の目指した「民芸」とは、ある土地や文化に固有なものではなく「ムコクセキ」で「インターナショナル」なものだったのではないか、と読み解く。

 しかし、そういう先入観を持って訪ねたにもかかわらず、民藝館の外観の「そうとうヘン」な具合は、素人にはいまひとつピンとこない。白壁の腰まわりに、風呂場の軽石みたいなボンヤリした印象の大谷石をはめ込んだナマコ壁は、どこかで見たようでもあり、見たことがないようでもある。よほど日本の伝統建築に詳しくなければ、こんな様式もあったかしら?で、丸め込まれてしまうだろう。

 しかし、玄関ホールで正面から来館者を迎える堂々とした階段、「真っすぐ上がって、大きな踊り場で左右に分かれる階段」が、日本の伝統建築と全く無関係なことは、さすがの私にも看破できる。まるでパリのオペラ座ではないか(知らないけど)。この大階段を中心に回遊するような展示室の間取りも、極めて意図的に設計されたものだと思う。

 日本民藝館の収蔵品の多くは、染色・陶芸・木工など、無名の工人の手によって成り、民衆の生活の中で用いられてきた品々である。しかし、それらを収める“うつわ”としての建築は、意志的で、モダンな精神性を感じさせる。それは、伝統的な工芸品や生活用品を全て良しとするのではなく、ある審美眼によって選ばれたものだけが「民芸」となることを示しているのかもしれない。

 そうは言いながら、今回の特別展『大津絵』は、かなり”日本的”な味わいがする。建築や陶芸の「ムコクセキ性」に比べると、絵画って、土着的にならざるを得ないんだなあ、と感じられて、その差異がおもしろかった。
コメント
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