見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

仏像と写真/京都国立博物館

2005-02-02 08:47:37 | 行ったもの(美術館・見仏)
○京都国立博物館 新春特集陳列『仏像と写真』

http://www.kyohaku.go.jp/

 京都国立博物館の新春特集のひとつ。仏像とその写真を併せて展示し、鑑賞してみようという試み。見る角度やライティングにこだわることによって、ふだん信仰の対象である仏像を、「美」という観点から捉えなおしてみようというのが、企画者の意図であるらしい(京博のホームページ)。しかし、我々はすでに仏像を美的に鑑賞することに慣れ過ぎており、この展示は、立体造型としての「美」とモノクロ写真としての「美」の比較しか呼び覚まさないのではないかと思う。

 その点に留保をつければ、いろいろと興味深かった。仏像と写真は、並んでいるものもあれば、少し距離を置いて展示しているものもある。そうすると、写真と仏像とで、ほとんど印象が変わらない場合もあれば、全く異なる場合もある。特に写真から受ける「大きさ」の印象は、全くあてにならない。本物を見て、あれっ、こんなに小さいのかと驚くことがたびたびあった。また、不思議なことに、モノクロ写真の場合は、たとえば頭頂の宝冠と腰の天衣と台座の蓮華とか、いくつかの特徴を瞬間的に把握することができる。これに対して、本物の仏像に向かい合うと、どうしても視線が顔のまわりに集中してしまうので、細部がなかなか印象に残りにくい。

 個別の作品では、西往寺の「宝誌和尚立像」を初めて実見することができた。僧形の顔が左右に割れて、中から菩薩の顔が覗いているという、悪夢のような仏像である。これってロラン・バルトの『表象の帝国』(ちくま学芸文庫)の表紙に使われていなかったかしら? 私の記憶違いだろうか。ネットで検索した限りでは、佐藤弘夫『偽書の精神史』(講談社選書メチエ)の表紙に使われていたという情報しかヒットしなかったのだけど。

 この仏像、写真だけは何度も見ていたはずだが、これほど鉈彫(なたぼり)の顕著な、東国ふうの仏像だとは一度も気づかなかった。鉈跡の目立つ胴体を捨てて、特徴的な頭部をアップにし、しかもフラットなライティングで撮影した写真が多いんだろうな。たぶん。
コメント
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