見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

モダン・ライフ/芹沢介展

2005-02-17 08:37:48 | 行ったもの(美術館・見仏)
○そごう美術館(横浜そごう)『生誕110年 芹沢介展-用の美に魅せられた生涯-』

http://www2.sogo-gogo.com/common/museum/index.html

 日本民藝館でこの展覧会を知って、ふらりと出かけた。芹沢介は「民藝」同人のひとり。沖縄の紅型(びんがた) に学びつつ、型絵染という独自の表現方法を確立した染色家である、ということは、なんとなく耳学問で知っていたが、あまり興味はなかった。

 ところが、この展覧会で、芹沢の作品の多くが、単なる染色にとどまらず、着物、帯、暖簾などの具体的なデザインに着地していること、絵本、挿絵、装丁、さらには飲食店のマッチやグリーティングカード、うちわ、行灯など、さまざまな商業デザインを手がけていることを知って、俄然、興味が増した。JALの鶴のマークや、銀座の名店・日本料理の「ざくろ」(1回だけ行ったことがあるぞ!)のお品書きも芹沢の作品である。

 芹沢のデザインは、どれも明るく軽やかで、快適感、清潔感に満ちている。「今ここにある生活」ではなくて、理想化された生活の匂いがする。なぜか、子供の頃、雑誌「暮らしの手帖」で、我が家にはない最新の家電製品(食器洗い機とか)を眺めていたときの気持ちを思い出してしまった。片や「民藝」で片やアメリカン・モダン・ライフなんだけど、実は通底しているものがあると思う。

 会場には20点ほどの着物が展示されていたが、誰かが袖を通した気配は希薄である。不思議なものだ。以前、千葉の歴史民族博物館で、民家から採集された古着の展覧会を見たときは、1点1点に持ち主の情念が残っていそうで、総毛立つような怖さがあった。夜になったら、展示室からすすり泣きが聞こえるのではないかと思った。それに比べると、芹沢の「作品」は安心して見ていられる。

 私は着物の「型」をよく知らないのだが、ひとつ気づいたことがある。芹沢の「作品」としての着物は、1例を除き、どれも袖の脇が完全には縫い閉じていないものだった。会場の最後に、芹沢の収集品が展示されており、芹沢のデザインの原型のような染め生地の着物が数点あったが、これらは逆に、1例を除き、袖がしっかり身頃に縫い閉じてあった。たまたまなのかも知れないが、そうだよな、生活着だったら縫い閉じておくよな、と思った。
コメント
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