見もの・読みもの日記

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平安仏画勢ぞろい/京都国立博物館

2005-02-01 08:45:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
○京都国立博物館 新春特集陳列『十二天画像と山水屏風-平安の雅-』

http://www.kyohaku.go.jp/

 新春特集とは言いながら、あまりの贅沢さに、涙が出るほどびっくりした。私はこの「十二天」掛幅画が大好きなので、このうち数点でも見られるなら、東京から新幹線代を払って出かけても惜しくないと思う。今回は十二幅まとめて見られるらしいので、一層うきうきして出かけた。

 「十二天」特集陳列のセクションに入ると、まず小さな別室があった。あ、曼殊院の「黄不動」だ。これって展覧会では模本に当たる率のほうが高いのに、本物(国宝)に出会えるなんて運がいいなあ、と思って隣を見たら、松永記念館旧蔵の「釈迦金棺出現図」(国宝)。それから、松尾寺の「普賢延命像」(国宝)、もしかしたら本物は初見の「赤釈迦」(国宝)と、これでもかというように名品が続く。

 奥の大部屋には「十二天像」(国宝)と「山水屏風」(国宝)がゆったり展示されていた。この十二天は本当になまめかしい。十二天と、それぞれの左右に配された従者たちは、菩薩形のもの、僧形のもの、髭をたくわえた武人、献花する女人など、さまざざまだが、いずれも赤い唇が生々しい。色黒の痩せさらばえた行者さえ、唇だけは赤いのだ。やっぱり、いちばん心ひかれるのは、涼やかな青年貴族のような「帝釈天」かなあ。逆に永遠の女性を感じるのは「水天」。

 「釈迦金棺出現図」も堪能した。孔雀のような光背とともに「ゆらり」と身を起こした巨大な釈迦如来。集まった人々と動物の顔に浮かぶ、さまざまな驚きの表情(象も獅子も驚いている!)。この一瞬の表情を切り取る鮮やかさは、絵巻ものから現代マンガまで続く、日本美術のお家芸であると思う。唐美人ふうにふくよかな摩耶夫人も慕わしい。

 この国宝勢ぞろいが、なんと常設展料金である(私は東博パスポート会員なので無料)。たぶん特別展にすると、それなりに混むのだろうが、この特集陳列なら、こころゆくまで、十二天ひとり占めも可能だ。どうか古美術ファンはいますぐ京都へ!(2月13日まで)
コメント
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