見もの・読みもの日記

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寺院に響く妙音/金沢文庫

2006-09-21 22:51:37 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神奈川県立金沢文庫 企画展『寺院に響く妙音』

http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

 「寺院に響く妙音」と聞いて、最初に連想したのは鐘の音だった。しかし、そうではなくて、仏をたたえる僧侶の歌声「声明(しょうみょう)」がテーマである。「声明」とは、元来、音韻学のことで、僧侶の歌唱=梵唄(ぼんばい)を声明と呼ぶようになったのは、鎌倉以降のことだという。へえー。私は禅宗で使う「梵唄」のほうが新しいのかと思っていた。

 開山・審海上人の名前の入った鈸子(ばっし=シンバル)など、実物展示も多少はあるが、中心は文書類なので、華やかさに欠ける。しかし、これだけまとまった数の楽譜を見たことはないので、ものめずらしかった。声明の旋律は、詞章の隣に記された、クネクネと折れ曲がった線(博士と呼ぶ)で表される。寺院には、同じ楽曲の譜が多数、残っていることがあるが、全て手書きなので、微妙に線の曲がり具合が違っている。

 それから、同じ旋律を、さまざまな詞章に宛てることもあったようだ。パターン練習用の楽譜では、詞章を「□○△」に略していたりする。泉鏡花の『草迷宮』を思い出すのは、考え過ぎかしら。

 金沢文庫は、平成2年、いまの建物を建設した記念行事に、所蔵の楽譜から古代の声明を復元して、演奏したそうだ。1階のホールでは、その録音が流れていた。ひとつは「三十二相」と言って、雅楽つきの声明である。そういえば、東京国立博物館の「天台声明公演」で聴いたのも、雅楽つきだった。

 余談になるが、「○○菩薩讃」「○○経讃」に混じって、「天龍八部讃」の楽譜が目立って多かったように思う。金庸の武侠小説を思い出して、にんまり。

コメント
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