見もの・読みもの日記

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風神雷神礼賛/出光美術館

2006-09-14 08:45:49 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館『国宝 風神雷神図屏風-宗達・光琳・抱一 琳派芸術の継承と創造-』

http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/index.html

 琳派を代表する3人の絵師、宗達・光琳・抱一が描いた『風神雷神図屏風』を一堂に集めて比較してみようという展覧会である。宗達作品は、ついこの間、京博の『開館110年記念展』で見てきた。光琳のは、今年のGWに見た。抱一も、ずいぶん昔になるが、一度は見た記憶がある。

 会場に入って、おやおやと思った。広いホールはパーテーションで仕切られ、観客は、宗達→光琳→抱一の順に誘導される。各作品の間には、解説パネルが設けられ、適度な距離と時間を空けるよう、工夫されている。見比べると言っても、3作品を並べて、ためつすがめつするような下世話な真似は許されないのだった。

 とはいえ、ちょっと遠くはなるが、少なくとも2作品ずつ(宗達と光琳、光琳と抱一)、一度に視界に収めることのできるビューポイントがある。せっかくの機会なので、この立ち位置を見つけて、じっくり見比べてみてはどうかと思う。

 私の好みは絶対に宗達である。今回の展示解説で、光琳は、宗達の輪郭線を、ほとんどそのまま写しているということを知った。にもかかわらず、絵の印象が違うのは、画面に対する雷神の配置を少し下げていること、それから黒雲の書き込みが多い(濃い)ことによると思う。

 元来の姿は分からないが、現状の宗達作品では、雷神にまとわりつく雲が少ない。なので、力の漲った全身が、一点の隈もなく、見る者の目に飛び込んでくる。虚空を踏みつける左足の指の反り具合がいい。風神が、前に踏み出そうとしている右足も同じ。ところが、光琳作品では、この大事な足先が黒雲に塗り隠されているのだ。私は、どうもそこが気に入らない。

 まあ、風神雷神の「むくむく」した造型に表われた生命力は、やっぱり、宗達のものだ。光琳の魅力は、もうちょっと幾何的な造型にあると思う。抱一は、光琳作品を手本にしたらしいが、かなり自由に写していて、抱一らしい、洒脱で品のある仕上がりになっている。

 3作品のほかにも、「梅」「秋草」「燕子花」などのモチーフで集めた琳派小特集が見られる。金地屏風の『紅白梅図』は前にも一度、見たかなあ。あんまりモダンで、現代人の名前が添えられていても全く違和感がないように思う。個人的には、光琳の『菅公と松梅図(草稿)』が気に入ってしまった。盆栽みたいな松と梅の上空に浮いた菅公が、かわいい~。
コメント
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