見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

秋の特集陳列から/東京国立博物館

2006-09-11 23:56:49 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館

http://www.tnm.jp/

 まだ夏休みの余韻が抜けないが、カレンダーは既に9月。各地で秋の優品展が始まっている。ということで、まず、上野の国立博物館から。

■特集陳列:佐竹本三十六歌仙絵(本館特別1室)

 だいぶ前に、この特集陳列の予告を発見したとき、おお!佐竹本三十六歌仙絵が東博に勢揃いか?!と早合点してしまった。なかなか、そうは行かない。出陳されるのは、「住吉明神」(ただし神像ではなく、風景画)「小野小町」「壬生忠峯」「藤原興風」(9/20~)の4点である。しかし「小野小町」は、この1点だけでも見に行く価値のある優品。三十六歌仙には女性が5人いるが、佐竹本では、小野小町だけは後ろ姿にして顔を描かない。かすかに見えそうな横顔を前髪で隠して見せないところが絶妙で、ニクイ。

■国宝:一遍上人伝絵巻 巻第七(国宝室)

 『一遍上人伝絵巻(一遍聖絵)』全12巻は、6年がかりの保存修復作業が終わったあと、2002年に京都国立博物館と奈良国立博物館で全巻展示が行われた。このとき感じたことだが、この絵巻は、たぶん複数の画家の手で作られており、しかも巻によって、出来栄えの差がいちじるしい。その中で、巻七は出色の巻である。小さなお堂で一心に念仏を修する一遍上人とその弟子たち(上人の厳しい表情が印象的)、物見高く集まった善男善女、念仏堂の床下で無心に遊び興じる子ども、そして、少し離れて一遍に付き従うような乞食や病人たち。のびのびと穏やかな山水描写の中に嵌め込まれた「人の世」の情景には、微熱のような、やるせない熱さと冷徹さが同居している。私は、この「世俗」に対する高い関心は、日本絵画の特質ではないかと思う。

※作品の詳細は「文化財オンライン」で。
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=36748

■久隅守景筆『鷹狩図屏風』(本館7室)

 「屏風と襖絵」の本館7室では、8月に引き続き、酒井抱一筆『夏秋草図屏風』を公開中。出光美術館の『風神雷神図屏風』を見に行く前に、ぜひどうぞ。また、久隅守景筆『納涼図屏風』に代わって、同じ作者の『鷹狩図屏風』が出ている。これは初めて見る作品だが、何だか面白い。田園風景の中を、人々が駆けつまろびつして鷹狩をしている。狩られているのは、鶴のようだ。鶴ってデカいんだなあ。全体に不思議なユーモアが漂う作品である。

■特集陳列:博物図譜-写生とそのかたち-(本館16室)

 ごひいきの「日本の博物学シリーズ」。今回は、誰が見ても楽しめる博物図譜の特集である。きちんとした図譜を作る前に、さまざまな姿態を書き込んだスケッチ帖が見どころである。

■特集陳列:中国書画精華(東洋館第8室)

 東洋館の秋のお楽しみ。これまで、古い作品は前期、新しいものは後期だったと思うのだが、今年は制作年代で分けていないようだ。そのため、後期(10月)のほうが、有名作品が多いかも知れない。前期(9月)は小品が多い。おなじみ『瀟湘臥遊図巻』は、清の乾隆帝の愛蔵品で、冒頭に御筆が書き付けられている。均整の取れた美しい文字である。今夏の旅行で訪ねた、乾隆帝の御陵の情景と合わせ、いろいろ感慨深かった。
コメント
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