付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「微睡みのセフィロト」 冲方丁

2007-08-25 | 超能力・超人・サイボーグ
 冲方丁は面白いよね。なんか、ディレーニなんかを彷彿とさせる異形の世界に怖じ気づいてしまい(量に関係なくボリュームたっぷり…という感じかな)、なかなか手を伸ばしにくいのだけれど、読めば確実に面白いのだな。
 『微睡みのセフィロト』も、『マルドゥック・スクランブル』を読んで、もっと読みたいと思った人向き。話的には関連はないけれど、世界観は似ていて、話が短い分、ハードボイルド・アクションとして話がぎゅっとまとまっていて良し。『マルドゥック』における少女の成長ストーリーも良いのだけれどね。

「微睡みのセフィロト」★★★★

【超能力者】
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「復活の地(2)」 小川一水

2007-08-25 | 破滅SF・侵略・新世界
「わしらにしかできん仕事だ」

 小川一水の『復活の地』の2巻。万単位の死者を出しつつも最初の災害は沈静化していくが、その一方で新たな内部の権力闘争や星系外列強の干渉もあって復興は思うにまかせない。目先の損得やマスコミの操作によって、何が自分たちに最前の道なのか見えなくなっている大衆の扱いもまる。完結編が楽しみ。

【復活の地(2)】【小川一水】【二次災害】【災厄】
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「顔の美醜について-ドキュメンタリー」 テッド・チャン

2007-08-25 | その他SF(スコシフシギとかも)
 昔、何百人もの顔のデータを平均化すると、いわゆる「器量のいい顔」になるという記事を読みました。『ナショナル・ジオグラフィック』だったと思います。テレビでもそんな特集を組んだことがあったかな。
 それが正しいかどうかは分からないけれど、結局、人間も本能で生きているんだと考えれば納得しちゃいます。「身体が要求する栄養を含んでいる」から「美味しい」という信号を脳が発信するわけだし、色彩工学でも「青い色は食欲を減退させる」という話を聞きましたが、だいたい青い実は熟していないことが多いですよね。性欲・食欲・睡眠欲というのは、ヒトが生き物として生存していくために必要だからこそ気持ちいいのです。ですから「食事はシリアルとビタミン錠で」という人は、既に生物としてダメダメなわけです(読子さんも生物としてダメダメですね)。
 同じ事で、人間が美しいとか格好良いとか感じるのは、相手が繁殖の相手として望ましい条件を満たしているという判断を言葉に置き換えているだけなのです。
 そういう視点では、テッド・チャンの『顔の美醜について-ドキュメンタリー』というのは、マスコミ戦略とか美術への貢献とかの問題ではなく、人間が生き物としてやってはいけないことではなかろうか……って、ナノマシンで全部いじくるから反応による取捨選択は不要ですか、そうですか。

「顔の美醜について-ドキュメンタリー」★★★

【美】
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「揺籃の星」 J.P.ホーガン

2007-08-25 | 破滅SF・侵略・新世界
 久々のホーガンSF、『揺籃の星』。帯には「パニック+ハードSF」とあるけれど、実際には「パニック+トンデモSF」で、その比率は3:2くらい。でももともと荒唐無稽な科学理論を虚実取り混ぜた証拠で補完していって、意外な結末に持ち込むのがホーガンの醍醐味なので、常識的な説を主張する科学者の方が、頭の固い無能者に見えるのはいつもと同じ。だってトンデモ学説を裏付ける事件が実際に起こっちゃったんだもの……☆
 なんにせよ物足りない。理屈はどうあれ『ディープ・インパクト』と同じで、感動的といえば感動的だけれど、それは「必死で生き延びようとする人々の群像劇」というパニック映画としての感動であって、「科学的発見と探求によりストーリーが動く」というSFの感動じゃない。結局、主人公の科学者たちは、地球文明の崩壊に対して何一つ有効な手段を打ち出せないし、その暇もない。パニック小説の主人公ではあっても、SFの主人公になっていないんんですね。
 3部作ということで、残り2冊に期待。

【揺籃の星】【J.P.ホーガン】【災厄】【隕石】
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「メディシン・クエスト」 マーク・プロトキン

2007-08-25 | エッセー・人文・科学
 少年サンデーに連載していた皆川亮二の『D-LIVE!!』というコミックに、アマゾンの遺伝子資源の話がありました。アマゾンの動植物は研究がまったく進んでおらず、難病の特効薬がみつかる可能性がまだまだあるというのが基本のネタ。
 なんとなく東洋医学は自然のもの、西洋医学は化学のものというイメージがあるけれど、結局のところ、西洋医学にしてもいまだに動植物の成分なんかを分析し、その効能を発見し、その組成を解析してコピーするというレベルなんですね。
 なんか、研究室でA薬とB薬を合成すると新薬Cが誕生する!……みたいなイメージがあったけれど、マーク・プロトキンの『メディシン・クエスト』を読んでいると、そういうものではないみたい。
 あくまで自然が生み出した物質、ヒルの唾液とか、ツブ貝の貝毒とか、カエルの体液とか、植物のエキスとかを調べ、何かの薬効があると判明したらその成分を分析してコピーで大量生産する……というのが正しい解釈に近いようです。つまり病気の原因をみつけ、それに対抗する物質を探すというより、民間伝承などをもとに「薬効のありそうな物を探す」ですね。
 そういえば、健康食品などの宣伝にも「××地方では元気な高齢者が多いことから(中略)そうして発見されたのがこの△△のエキス!」みたいなのをやってるよなー。

【メディシン・クエスト】【新薬発見のあくなき探求】【マーク・プロトキン】【築地書館】【薬草】【メディスンハンター】
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「税務署長の冒険」 宮澤賢治

2007-08-25 | ミステリー・推理小説
 宮澤賢治の作品に『税務署長の冒険』というのがあります。
 大正12年頃書かれたまま埋もれていた作品を、昭和24年に北海道酒類密造防止協力会が租税PRの一環として刊行したものだとか。密造取締りに税務署長が活躍する話で、最後は内偵中に犯人たちに見つかって縛り上げられ……という、なかなか波瀾万丈。
 でも、このタイトルのセンス、いいよなあ。個人的には『銀河鉄道の夜』に匹敵すると思います。警察署長じゃなくて税務署長だものね。
 今でも組織的に実力行使する団体をバックにつけている企業への税務調査は難しいそうですが、宮澤賢治の時代はまだまだ密造酒が横行していた時代。明治32年に税収アップのためにいきなり「酒類の自醸自飲は禁止」とされたものの、それに従わない地域が多かった時代。村ぐるみ密造に手を染めていて、官憲と正面衝突することも多かったといいます。
 その後も昭和の中頃までは、酒密造に限らず税務調査に警官隊が投入されるケースは散見されます。昭和22年6月23日の調査は、占領第8軍の肝いりで検事2名、警官隊206名を伴って、税務署員88名が突入というものだったとか……。
 そういや、「アンタッチャブル」も財務省のエージェントなんだよなあ。

【税金】【密造】【税務署長の冒険】【宮沢賢治】
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「火星の土方歳三」 吉岡平

2007-08-25 | その他SF(スコシフシギとかも)
「あなたはやっぱり、そっちに行くのですね、土方さん」
 沖田の声が一瞬そう聞こえたように感じた。

 蝦夷地で壮絶な戦死を遂げた土方歳三の魂は、時空を超えて紅き凶星へと運ばれた。
 死してなお斗いを欲する土方は火星(バルスーム)の大地に転生。数多の都市を巡り、様々な魔物や戦士との戦いを繰り広げながら、巡り会った女戦士アイシアと向かうは同じ地球からの来訪者が統治しているというヘリウム王国。
 しかし、たどり着いたヘリウムには地球人ジョン・カーターの姿はなかった。大気製造工場の危機を救うべく旅立ったまま行方不明なのだという。そしてカーター捜索に皇帝たちが飛行艦隊で出立した都では、ここぞとばかりに不逞の輩が跳梁跋扈して治安が悪化していた。
 この混乱から回復させるべく市中警護隊が結成されるという話に、土方歳三は自分もはせ参じることを決意した……。

 吉岡平の『火星の土方歳三』を読了。意外にも面白かった。タイトルを見て、栗本薫の『火星の大統領カーター』みたいに原作をちゃかすような斜にかまえたパロディかと警戒したのだけれど杞憂でした。どちらかというと『サムライ・レンズマン』みたいに、外伝として挿入されてもおかしくない、原作を真正面から受け止めた作品でした。ただレンズマンの方は、いかにもアメリカ人が思うサムライを出しているのに対し、火星の方は日本人が思う侍を出してきてましたが。
 新撰組というのは旧体制に殉じた滅びの美学が売りだと思うので、たとえIFでも幕府が勝ってしまうのは新撰組の物語としては面白くない。でも彼らにもっと活躍してもらいたい……となると、もし五稜郭の戦いで倒れた土方歳三がジョン・カーターのごとく火星に転移していたらというIFの方が良いのでしょうね。
(2023/01/22改稿)

【火星の土方歳三】【吉岡平】【末弥純】【バロウズ・リスペクト・シリーズ】【ソノラマ文庫】【燃えよ剣】【新撰組】
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「まかせてイルか!」 監督:大地丙太郎

2007-08-25 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 大地丙太郎監督の『まかせてイルか!』を観る。湘南を舞台にした何でも屋の小学6年生3人娘の活躍を描いていて、江ノ電がやたら出てくる話。
 テンポよく元気よく話が進み、素直に(理屈をこねず親子で観ても)面白い作品。いつもの全力疾走やマシンガントークも健在だけれど、今回は手話でマシンガントークをしているのも売り物。ただ、手話は口の開き方なんかも補助的に参考にしているはずなので、あのトークが本当に通じるかは不明。日米同時発売なんだそうだけれど、日本語圏以外に通じる手話なのかも不明。そんなことは気にせず観るが大吉。
 自主製作"的"作品と銘打っているけれど、これはプロデューサーや広告代理店にピンハネされないで予算を使っているという意味かな。

【まかせてイルか!】【不登校】【手話】【何でも屋】
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「ヴァンパイヤー戦争」 笠井潔

2007-08-25 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 今や伝奇とミステリーの重鎮となった笠井潔の『ヴァンパイヤー戦争』が講談社文庫から復刊。1982年、最初にカドカワノベルスから刊行されたときは生頼範義のイラストでした。嫌いな絵でしたね。派手で、重くて、暗くて、迫力があって、自分は嫌いだけれど作品内容には合ってました。平井和正の『ゾンビハンター』を光と闇の宇宙戦争にまで広げたような話。
 これを読んだのが、大学受験で東京のホテルに泊まり込んだとき。そこの売店で買って読んで、受験のヤマはピンポイントで当たっていたのに覚えてなくて木っ端微塵になっちゃったわけですが、そのヤマが「歴代ローマ法王の人物と業績」なんて意味深ですね。法王のことを書いているのに、頭の中が「吸血神ヴァーオゥ!」「ソドミィは初めてなのか」なんてのでいっぱいじゃあね……。
 これが天野喜孝の絵で角川文庫となり、最近では作品社から笠井潔全集として豪華愛蔵版となり、ついに講談社文庫だ! しかもイラストは武内崇だ!!……って、ちょっと違いませんか? 確かに『月姫』で評判になった人ですし、吸血鬼によるバトルつながりですが、優しさも情緒もユーモアも微塵もない伝奇バイオレンス小説です。
 『月姫』から入ってきた人、ライトノベルっぽいので手を出してみた人なんかの感想を聞きたいですね。そういう人には案外とミスマッチではないかもしれませんから。

【ヴァンパイヤー戦争~吸血神ヴァーオゥの復活】【笠井潔】【生頼範義】【武内崇】【カドカワノベルス】【講談社文庫】【壮大な伝奇世界の扉が、いま開かれる!】【吸血鬼】【光と闇】【ガスコーニュ出身】
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「SAMURAI-7」 GONZO

2007-08-25 | その他SF(スコシフシギとかも)
 『 SAMURAI-7 』を見る。黒澤明の『七人の侍』をSF仕立てにしたもので、今のところ、原作に沿って話が進んでいます。冒頭の合戦シーンは「これをクライマックスに持ってくると、エルガイムかFFSになるんだろうな」と思いつつ堪能。ただサムライは「ヘッドライナー」よりは「侍」に近いので、FFSよりは『風雲涌起』の雰囲気になっているかも。
 『七人の侍』も(その正式な翻訳作品である)『荒野の七人』も面白い作品でした。クライマックスの戦は「足を止めるのは死んだときだけだ」とばかりにノンストップで続きます。この作品も、それらに続くことを祈ってます。間違っても『宇宙の七人』に続きませんように。

「SAMURAI-7」★★★★
「七人の侍」★★★★★

【王道】【侍】
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「ブラッドツリー解放戦線」 GDW

2007-08-25 | 宇宙・スペースオペラ
 『ブラッドツリー解放戦線』はGDW社のSFシミュレーションゲーム。2サイドに分かれてのゲリラ戦争なのだけれど、一方の軍隊がマイキン大佐だったかのクローンで構成されているという設定でした(スターウォーズの先取りだね)。司令官から一兵卒までみんな同じ人間なんです(設定は面白いけど、ゲームとしては意味ないよ…)。

 この頃のGDW社のSFゲームには面白いシステムや設定の作品がいろいろありましたね。太陽系内の宇宙戦闘を扱った『トリプラネタリー』は、慣性移動なので宇宙船の移動はすべてベクトル線を引いて決定しました。これで重力カタパルトというものを理解した気がします(フライバイの意味を思い知らされます)。ただ、これで戦闘をやろうとすると、相対速度の関係でほとんど弾が当たらない展開になるので、素直に砲戦なしのヨットレース・シナリオでベクトル計算してた方が面白いです。中学時代にこのゲームを知っていたら、高校数学もラクだったろうに……。

 イスカンダルとガミラスのような二連星を舞台にした『ダブルスター』は、イスラム系植民星と中国系植民星の星間戦争。艦隊戦が特色のはずですが、苦労して艦隊戦に勝っても敵方の防衛網で簡単に粉砕され、最後は双方の星間ミサイルの応酬という結末に……。惑星間戦争はコストに見合わないという教訓が得られます。

 『ベルター』はアステロイドベルトでの探鉱夫のゲームで、大資本の搾取が骨身に凍みるゲーム。いくら真面目に働いても儲からず、借金を踏み倒して海賊に転向し、やっと他のPCの採掘船を拿捕しても、奪った積み荷を搭載するスペースが自船になく、船ごといただこうと思えばローンで買った武装を廃棄することになり、両方とも動かそうと思えば操縦士が足りないというオチのつく作品。
「貧乏からはどうやっても脱出できないようにできてるんよ」

【ブラッドツリー解放戦線】【トリプラネタリー】【ダブルスター】【ベルター】【GDW】【ボードゲーム】【シミュレーション】【恒星間戦争】【借金】【クローン兵】
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「ドルセイ!」 ゴードン・R・ディクスン

2007-08-25 | 宇宙・スペースオペラ
 個人的には『ドラゴンになった青年』が大好きで、世間的にはポール・アンダースンとの共著『地球人のお荷物』のホーカ・シリーズが有名なディクスンだけれど、作品的には『ドルセイ!』に代表されるチャイルドサイクル・シリーズの方が重要かもしれません。
 人類が宇宙に拡散した時代、傭兵を送り出すことが主要産業になっていた惑星ドルセイの軍人たちをテーマにした作品群です。でも、純粋に宇宙時代の歩兵戦闘を堪能したいならジェリー・パーネルの作品の方が楽しめるかな。ディクスンは政治と軍人の関係とか、軍人の生き方・死に方みたいなテーマが中心になるもので、ミリタリーSFといっても意外に派手な戦闘描写は少ないですね。

【ドルセイ!】【ゴードン・R・ディクスン】【チャイルドサイクル】【軍人の本分】【傭兵】
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「ドリトル先生航海記」 ヒュー・ロフティング

2007-08-25 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 日本の民俗学者といえば、稗田礼次郎、宗像伝奇、柳田國男、南方熊楠といったところでしょうか。あっ、三大民俗学者にならなくなった……と思ったけれど、南方熊楠は博物学者でしたね。なぜか自分の中で、柳田と南方はワンセットで出てきてしまいます。(それをいうなら稗田と宗像もワンセットだな……)
 博物学というと、まだ科学が動物学や植物学や地質学なんかに分化していない頃の学問。プロペラ推進の発明者である平賀源内もあえて区分するなら博物学者です。でも日本では博物学の前にもう1段階ありました。本草学です。
 本草学とは薬となる植物や鉱物・動物などを研究する学問のことであり、唐の時代には既にその体系が出来ていたそうです。その中から生まれた書物の中でも代表的なもので、日本に大きな影響を与えたのが宋の『證類本草』です。
 ただ本草学はきわめて実用的な学問でしたが、当初は中国から渡来した文献も貴族僧侶の教養書に留まり、広く普及することはありませんでした。それが16世紀半ばから17世紀にかけて田代三喜門下の医者たちの手によって普及していくわけですが、コンニャクもお屠蘇ももともとは王侯貴族のための健康食品。お屠蘇は宮中儀式に、コンニャクは進物に使われてます。
 つまり医学の発達と本草学は表裏一体なのですね。偉大な博物学者であるジョン・ドリトルが医学博士であることにもちゃんと理由があるのです。

「ドリトル先生航海記」★★★★★

【帆船】【秘境】【動物】
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「ルーフ・ワールド」 クリストファー・ファウラー

2007-08-25 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 映画『スパイダーマン2』の予告編を観ていて、なんかクリストファー・ファウラーの『ルーフワールド』を思い出してしまいました。

 世間の暮らしに馴染めない、既存の枠組みに収まりたくない人々はどうするのでしょうか。夜毎に盗んだバイクで走り回ったり、地下街や公園で野宿をしたりするのでしょうか。
 どうせなら地べたを這いずり回るより、風を感じて空に舞いたい……『ルーフワールド』はそういう話です。

 ボストンのように古い大都会は、何百メートルという高層ビルはないけれど、数十メートルクラスのビルディングが建ち並んでいます。そんな街の頭上を自由自在に飛び回っている一団がいました。普通の社会で生きていけなくなった若者たちです。ビルとビルの間に細いワイヤーを張り巡らし、身につけたフック1つで自在に行き来する天上の民となったのです。地下街や公園に居座る者を世間は排斥しようとしますが、頭上を飛び回り、誰も行かない屋上の一角に目を配る者はいません。もちろん、高層ビルの屋上で作業する工事業者や施錠された屋上を見て回るガードマンがいますが、そういう人たちは天上を飛べなくなった民の、いわばOBなので秘密はこれまで保たれていました。けれども、そんな屋上世界の勢力図を塗り替え、安定を乱そうとする動きが現れます。その首謀者は魔術のような力を使うというのですが……。

 見渡す限り田畑で、7階建て以上の建物を結ぼうと思うといったい何Kmワイヤーを張らないといけないんだ?という田舎の人間には、ちょっとピンとこない異世界のお話です。

 それから、怪人ドクター・オクトパスの動きから『ヒルコ~妖怪ハンター』を連想しましたね。稗田礼次郎を沢田研二が演じているやつ。あれは面白かった。稗田礼次郎は原作とまったく逆のタイプだし、ストーリーもあれこれ混ざってしまったけれど、ヒルコが出てくる1本の怪奇映画としては文句なし。スプラッターみたいな血まみれシーンはほとんど無いのだけれど、逆になにかあるかな、なにか出るかな、なにがくるかな、なにが出るかな…というお化け映画的な見せ方が怖い。いちばん怖かったのは、ただ可愛い女の子が静かにピアノを弾いているシーンだったんです。(田中啓文の『UMAハンター馬子』もこれが元ネタだよね…) 

【ルーフ・ワールド】【クリストファー・ファウラー】【悪魔】【すぐ隣の別世界】
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「ビバ!マリア」 監督ルイ・マル

2007-08-25 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 『ビバ!マリア(VIVA MARIA!)』という映画が好きでした。1965年のフランス映画。監督はヌーヴェル・ヴァーグの旗手、ルイ・マル。彼がブリジット・バルドー(BB)にジャンヌ・モローという当時のフランス二大女優を主役に、出来た映画は西部劇風スラップスティック・コメディ……。他にも好きな映画はあるけれど、よく考えるとこれが自分の「原点」なのだということに気づくのです。

 幼い頃から革命家の親父と一緒に爆弾テロをしてきた娘マリアは、捕まりそうになった父親ごと警官隊を吹き飛ばして逃走。潜り込んだ旅芸人のキャラバンでもう1人の踊り子マリアと出会い、なし崩しに踊り子として一座に加わることになった。
 踊りはまったくのシロウトのマリアだったが、ダブル・マリアでコンビを組んでメキシコ巡業するうちに、踊りを知らないBBマリアのしでかしたストリップ・ダンスが評判になり、一座は瞬く間にスター街道を突っ走ることになる。
 しかしこれまた巡り合わせから革命騒ぎに巻き込まれるのだが、これにヒートアップしてしまったのはテロリスト・マリアではなく踊り子・マリアの方だった……。

 コメディで、でも真面目で、ブラックだけどユーモアで、話が主人公たちのあずかり知らないところで話がどんどん大きくなっていくのが好きなんですね(タイトルの「ビバ!マリア」は革命のときの声)。あと、個性的な仲間がそれぞれ特技を発揮する話。曲芸撃ちや怪力男はともかく、奇術師や軽業師やナイフ投げの(的になる)少年が活躍する市街戦ってのは他ではあまり見ませんね。それで美女2人が(といってもモローも既に30代後半)重機関銃やライフルを撃ちまくって、爆弾で吹き飛ばして回るんです。
 ドイツ軍が市街戦で使ったこともあるという曲射銃身のライフルを初めて見たのも、この映画でした★

【ビバ!マリア】【ルイ・マル】【装甲列車】【革命】【機関銃】【女性】【教会勢力】

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