付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「星を継ぐもの」 ジェイムズ・P・ホーガン

2010-05-08 | 宇宙・スペースオペラ
 ニュートリノ・ビームを使って物体を破壊せずに内部を透視するトライマグニスコープを発明した物理学者ヴィクター・ハント博士が国連宇宙軍に引っ張り出されたのは、月面で発見された死体の調査のためだった。
 死因が知りたければ膨大な予算をかけずとも(そして自分の手を煩わせずとも)普通に解剖すればいいじゃないかというハント博士だったが、この真紅の宇宙服をまとった死体は死後5万年が経過しているらしいというのだ……。

 そりゃあ、気軽にメスも入れられませんね。

 最初はいかにもつまらなさそうで地味で、手に取る気もなかったのです。買ってしまったのはその年の創元推理文庫目録が抱き合わせになってラッピングされていたためで、その月の新刊で他に欲しい本がなかったから……という非常に後ろ向きの理由。
 ところが読み始めてしまうと面白かったんですね。派手な展開はほとんどなく、さまざまな学者たちが調査したデータをもとに論争し合うだけのような話なのですが、それが本格ミステリといって良い謎解きになっており、最後の結末には涙するしかありません(私の涙腺は変な方向にゆるいのです)。
 ただ、謎解きの爽快感というよりも、それまで対立していたハント博士とダンチェッカー教授が地球から離れた地で和解するというか、互いに認め合うシーンが好きなのです。この巻だけなら大傑作という本書も、のちに3部作となりプラスアルファがついて並の傑作となってしまいましたが、そこではこのハント博士とダンチェッカー教授が良いコンビとなるのです。互いに反発するくらい物事に対するアプローチが違うだけに、タッグを組んだら互いに補完しあって死角無しの無敵モードというやつです。

 読み直しで枕元に置いてあった本の表紙を見た妻が「あら懐かしい。これ好きだったの」とひとこと。きみ、通だね。

【星を継ぐもの】【ジェイムズ・P・ホーガン】【加藤直之】【本格ミステリ】【ハードSF】【ガニメアン三部作】【月】【ガニメデ】【体内時計】
コメント
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