付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ミイラにダンスを踊らせて」 トマス・ホーヴィング

2010-05-30 | 伝記・ノンフィクション
 名古屋駅前にジェイアール名古屋タカシマヤができたとき、そこに入った三省堂書店は名古屋地区最大と言われていました。こういう大規模書店は完成した当初はとにかく取次に勧められるまま適当に本を並べているだけのような気がして(京都とか他の大規模書店で懲りた)しばらく足を運ばなかったのですが、ふと立ち寄って美術書コーナーでびっくり。美麗な大型本をさしおいて平棚を占拠していたのは波津彬子の『雨柳堂夢咄』と細野不二彦の『ギャラリーフェイク』だったのです……。
 その『ギャラリーフェイク』の主人公フジタがキュレーター(学芸員)を務めていたのがメトロポリタン美術館(メット)。そして、そのメットの館長だったホーヴィングが堅苦しくて陰鬱かつ停滞していたメットを再生し、追い出されるまでの身も蓋もない美術館運営の内幕を赤裸々に描いたのが本書。

『メットの館長は、優れた鑑識力と審美眼の持ち主で、十分に経験を積んだ学識者で、粘り強い外交官で、寄付を募ることに長け、経営能力があり、かつ調停や懐柔をこなせても、それだけでは足りない』
 美術品は集めるのにも維持するのにも金がかかる。そして予算と倉庫のスペースは有限。館長は海賊だったりギャングだったりアナーキストだったりもしなくてはならないのです。

【ミイラにダンスを踊らせて】【メトロポリタン美術館の内幕】【トマス・ホーヴィング】【理事会】
コメント
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