付け焼き刃の覚え書き

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「獄門島」 横溝正史

2010-05-28 | ミステリー・推理小説
 太平洋戦争が終わったが、人々の生活が以前と同じに戻ることはない。
 獄門島は瀬戸内海に浮ぶ小島で、南北朝時代には海賊が基地にしていたという。
 その島に、軍に供出させられていた寺の鐘が戻ってくるという。そして、時を同じくして島に降り立ったのは、ニューギニアの戦場から引き揚げてきた名探偵・金田一耕助。彼は戦友だった鬼頭千万太の遺言により、連続殺人を食い止めようとするのだが……。
「おれがかえってやらないと、三人の妹たちが殺される……代わりに獄門島へ行ってくれ」

 ミステリーには「見立て殺人」という、誰でも知っている童謡などの内容に従って人が殺されていくテーマがあります。マザー・グースの童謡のままに殺人がおこなわれるヴァン・ダインの『僧正殺人事件』やアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』が有名ですが、横溝正史はその「見立て殺人」に芭蕉と其角の俳句で挑みました。
 古き因習と新しい時代の風がぶつかり合う戦後の混乱期に、血縁関係が混沌としている田舎の旧家で繰り広げられる連続殺人という、横溝正史の典型的な作品であり代表作。あいかわらず金田一耕助は為すすべもなく雪枝・月代・花子の三姉妹が殺されてしまい、しかも犯人は……というやるせない結末でしたが、後味は『八墓村』ほど悪くなかったです(八墓村が悪すぎただけかも)。

 昔、東海地方の某大学のゲームサークルで古今東西のヒーローが戦うというゲームが製作されたとき、ジョーカーとなったのが金田一耕助だったそうです。金田一耕助カードが場にオープンされたら即座に連続殺人事件が発生し、1枚、また1枚とヒーローカードが問答無用で捨札となっていくんだそうです。
「ああっ、ぼくがもっと早く気がついていればっ!!」
 そんな特殊能力は他の名探偵ではしっくりこないのに、金田一耕助だというとなぜかみんな納得してしまうのです。金田一耕助が来たなら仕方がないなあと。

【獄門島】【横溝正史】【見立て殺人】【海賊】【むざんやな甲の下のきりぎりす】【鶯の身をさかさまに初音かな】【一家に遊女も寝たり萩と月】
コメント
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