
魔法学校を卒業した少年カナクは、賢者マールの足跡を辿る巡礼の旅に出た。
かつて紅の魔女と呼ばれ、恐れられ蔑まれてきた女性も、没後1000年を経た今ではその功績を認められ、暁の賢者として彼女を崇めて信仰する者は一大勢力となっていた。そして、彼女が死の間際に建てた4つの石碑を巡る旅は、旅の困難からおこなう者は多くなかったが、敬虔なマール信徒として神官をめざすカナクにとってはなんとしても実現したい目標だった。
ところが、このカナクの旅に学校一の天才魔法少女ユーリエが無理やり同行してしまい……。
どちらかというと『ドーム郡ものがたり』とかのラインの「児童文学」的な香りの作品。2つのエピソードが平行して流れ、最後に円環が閉じる構成は、奇をてらわず手堅いもの。キャラクターも普通に良い感じ。あまりにオーソドックスな良品ぶりに、かえってメインターゲットの中高生に受けないんじゃないかと不安になるくらい。『ヘルカム!』が読者賞を取ったということは、読者層的にはああいうのが求められているのだと思うし。
まずは近刊らしい2作目に期待したいと思います。
【カナクのキセキ】【上総朋大】【さらちよみ】【巡礼】【時間移動】