付け焼き刃の覚え書き

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「紅一点論」 斎藤美奈子

2021-05-01 | エッセー・人文・科学
 「男の中に女がひとり」は、テレビやアニメで非常に見慣れた光景であるけれど、そうした構図を「女の子が座れる席はひとつしかない」という社会の仕組みを教えるものだと看破するところから始めて、男子向けの物語を「科学立国の軍事大国=男の子の国」、女子向けの物語を「恋愛立国のおとぎの国=女の子の国」と定義づけたものを基軸にして、さまざまな物語の構成や登場人物の役割を分析していく、ヒロイン論にして現代社会論。
 ただ、根本は社会論なので、ジャンヌ・ダルク、ナイチンゲール、キュリー夫人、ヘレン・ケラーら女性偉人の虚像と現実、それがなぜ成立したかということに重点が置かれ、アニメ・特撮については単なるマクラになってしまった感じはあります。1つ1つの分析は面白いんですよ。紅一点の延長線で「(男の子の国では)女が増えると組織はめちゃくちゃになる」とか。

 いくつかの作品を取り上げて全体像を語る。それに対して「こういう作品もあるではないか」という反論を視野が狭くて些末事に拘っているだけなので話にならないと切って捨てるのだけれど、そこで自分が取り上げた作品が紛れもなく主流であり、反論に挙がった作品は取るに足りない異物だという論拠が論者の主観しかないのはもの足りないかな。同じような古い作品、たとえば『キャプテン・スカーレット』のエンジェル、ウルトラマンやウルトラセブンには紅一点でしか女性の居場所がないというけれど女性隊長の『ウルトラマンテイガ』とか女性だけの戦闘機チームがある『ウルトラマンガイア』あたりまで含めて語ってもらえれば面白かったんだけれど、伝記の女性に紙幅が費やされる上に、1998年の本なので題材が全体的に古くて、取り上げる題材が限定的でちょっともの足りない。かろうじてエヴァなんですよね。
 確かに語りたくなる面白い本。2000年以降、紅一点が逆に珍しくなってきたアニメ・特撮界を改めて語って欲しいですね。エヴァも完結したことですし。

「碇ゲンドウというおっさんを核にした公私混同が、どう考えても、諸悪の根源なのである」

 いやはやまったく。

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