「やるしかないね。私は、受験生なんだから」全世界注目のＶＲＭＭＯ『new world』は、体感時間が現実の３倍というフルダイブ型ゲーム。これに飛びついたのが受験生、画智是伊奈野だった。「これで、みんなより長い時間勉強できる！！」と。
機材だけでも10万円超というゲームで、数多のプレイヤーが剣と魔法のファンタジーを堪能する中、伊奈野はひたすら勉強し続けた。参考書やノートなどはデータでダウンロードできるから便利。静かに勉強できる場所を探して街中を彷徨い、辿り着いた図書館もプレイヤーが押しかけて入館不可となり、海外サーバに避難してみたりとあれこれやりながらも結局は勉強しかしていない彼女なのだが、その行為が気がつけば周囲のＮＰＣに影響を与え始めた。風が吹けば桶屋が儲かり、雪玉は転がれば大きくなるように、伊奈野の受験ガチモードがゲームのシナリオを大きく動かしていく。
だが、彼女はログは見ていないし、ステイタスもチェックしていないし、所持金もろくに確認していないから、自分にどんな称号がつき、どんな立場にあるのか何も知らない……。
これまでもゲームはしてても攻略は重視しないと畑仕事とか物作りだけするという話はあったけど、こちらは体感時間の差を利用してテキストとかはクラウドデータからダウンロードして受験勉強だけするＪＫ受験生の話で、ただ受験勉強をしているだけなのに、風が吹けば桶屋でゲーム内に伝説を作っていくことになります。
ただ、本人は勉強場所を確保して参考書を読んでまとめたり問題集を解いているだけなので、《スキル「神聖魔法1」を獲得しました》とか《称号「禁忌の生みの親」を獲得しました》とかのログが流れても見てもいないから、自分が現在進行形でやらかしていることに気づいてもいないのだ。「なんかやらかしちゃいました？」のわざとらしい無自覚系ではなく、本当に勉強しかしていなく、他プレイヤーと接触もせず、勉強場所を確保するためにＮＰＣと交渉しているだけってあたりが良いね。
一方、日本サーバ以外の外国サーバでは、数の暴力や開発した銃器でＮＰＣを襲って監禁したり、宗教や主義が蔓延したりとワールドシュミレーター的なゲーム世界が殺伐としています。いかにもありそうで怖いですね。
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