付け焼き刃の覚え書き

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「ナツコ~沖縄密貿易の女王」 奥野修司

2014-10-19 | 伝記・ノンフィクション
「あんたの目の前にあるのはなんだ? ただの海じゃないよ。海の向こうには黄金があるさ。さあ、黄金の海を渡りなさい」
 密貿易もこう語るとすごくカッコ良く聞こえます。
 もともと台湾と八重山は隣町感覚だったので、国同士が決めた国境線という意識はあまりなかったようですね。

 敗戦直後の沖縄は荒廃していた。
 もともと食糧自給率の低かった沖縄本島は焦土と化し、それに対して占領軍は群島間の交易すら禁じる管理貿易をおよそ5年間にわたって継続したのだ。
 礼儀正しく権威に従うとされていた沖縄の人々の間に、密貿易が広がるのは当然の流れだった。最初は旧日本軍の備蓄物資を、やがては駐留米軍の補給物資を隠匿し横流しし、台湾や本土へと彼らは船を出した。
 そんな自由商人の中に「ナツコ」と呼ばれる女性がいた。わずか数年だった沖縄密貿易の黄金時代を駆け抜けた女傑の生涯。

 50年以上前に死んだ1人の女性の一生を追うことが、そのまま沖縄や台湾の政治情勢あるいは極東地域の緊張状態の変遷を追うことになるのです。また、戦後50年以上も経ち、証人たちが次々と鬼籍に入ってしまったり、事が密貿易ということで50年経っても嘘をついたりしらばっくれる人も多く、著者の追跡の苦労が忍ばれます……というか、あとがき以後の刊行してから「実は」「本当は」と露見するネタの方が本番なのかもしれません。(2007/10/21 2014/10/19改稿)

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