付け焼き刃の覚え書き

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「飛鳥昔語り」 清原なつの

2008-10-03 | 時間SF・次元・平行宇宙
 21世紀になってから早川書房は清原なつの作品を相次いで刊行し始めました。しかもJAです。
 清原なつのの『千の王国百の城』『ワンダフルライフ』『花図鑑』は、栗本薫の『グイン・サーガ』や神林長平の『敵は海賊』とか菅浩江の『博物館惑星』とか高千穂遥の『ダーティ・ペア』と同じレーベルで並んでしまいました。
 1980年代に彼女が「りぼん」で『花岡ちゃんの夏休み』といった、ラブコメともシリアスともつかない不思議な少女マンガを発表していた頃、なぜか周囲の男どもはみんな清原なつのを読んでいて、作中に出てくる書物『ロバート・ブラウン物語』(または『ロバとブラウンさん物語』)が本当に存在しないか探し回ったりしていました。
 でも、それは僕の周りだけの話ではなかったらしく、SFファンにはけっこうそういう過去を持つのがいるようです。ペンネームに作中人物の名前を使った翻訳家もいましたし、2004年のSF大会レポートを読んでいると「清原なつののサインをもらえたら死んでもいい」という記述もありました。
 個人的には有間皇子を主人公にした『飛鳥昔語り』が好きですが、SF的にオチをつけてハッピーエンドにしてしまった単行本版より、悲恋に終わった雑誌連載版の方が好きでした。あの当時は発表作品が単行本化されないことも多く、また単行本化にあたって描き足しや描き直しがしばしば行われていました。
 それに2004年8月のSF大会にはゲスト参加していてサイン会をしてました。終わってから気づいたんですよ。「え~っ!! 来てたのお!?」って感じで、ていとくに言ったら彼はシール交換をしてもらったとか。悔しい……。(2007-08-26)


「磐代の浜松が枝を引きむすび
  真幸くあれば また還り見む」


 清原なつのは、高校時代にはわたしらの周囲では人気作家の1人。“周囲”といっても男ばっかりだし、掲載誌は「りぼん」だけどなー。「花岡ちゃんの夏休み」で高校生男子を惹きつけた不思議なテンポで軽く淡々と、それでいて心の動きはしっかりと描写して、中大兄皇子との政争に巻き込まれ処刑された有間皇子の物語が語られていたのです。
 そうしたら、20年後の2006年にはハヤカワJAのコミック文庫で復刻するんだから、好きな人はしっかりいるんだなあと、そちらの意味で感動。同士はいるもんだよ。

 コミックではSFオチがついていたけれど、普通の歴史物の雑誌掲載バージョンが好きだったなあ。話的にもコミック版のオチは優しさではあっても蛇足だと思う。
 ここ最近「月刊フラワーズ」に昔話やおとぎ話をモチーフにしたシュールな作品を連載していて、それも頻繁にSFネタに走るけれど、あれは作品と一帯になっているから気にならないんだよね。(2008-10-03)

【飛鳥昔語り】【清原なつの】【大化の改新】【ロバートブラウン】【ロバとブラウンさん】【タイムマシン】【花岡ちゃんの夏休み】

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