付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「レジンキャストミルク(3)(4)」 藤原祐

2009-05-16 | 超能力・超人・サイボーグ
 ずいぶん前に購入したまま積ん読になっていた本を発見し、読了し、覚え書きをブログに書き込もうとしたらかなり前に読み終わって投稿済になってました。なんなんだ……。オレの記憶は一体どこに?

「世界をちゃんと理解しないと、世界は滅ぼせないってこと。どんなに力を持っていても、自分のことを理解できてもいない奴に身を委ねるほど世界は小さくも脆くもないんだ」
 速見殊子の言葉。

 姫島姫は死んでしまった。

 生まれては消えていく平行世界【虚軸】の最後の生き残りは、固定剤といわれる存在と出会うことで現実世界に定着し(あるいは現実世界の人間に寄生し)、消え去った世界そのものを体現する異能を発揮する。

 【虚軸】と関わった姫の死は、その同類である虚構(キャスト)以外には誰にも認識されることはない。しかし【全一】である城島硝子は、姫が消えたことで仲良し四人組が三人組になったことにいつまでも違和感を覚えていた。これはバグではなかろうか。機械人形である硝子には感情はないはずだ。ただ計算するだけなのに。
 何かが狂い始めていた。
 だが、自分の求める世界を構築しようとする【無限回廊】は死んだはずの“ひめひめ”の姿で現れ、三人組の1人である直川君子を道具に新たな計略を実行に移していた……。

 蜜と君子の過去話を中心にした、硝子と晶の関係の再構築話。【壊れた万華鏡】はあいかわらず壊れてますが、今回はいろいろな意味で壊れました。

 ほのぼのとコメディタッチの描写が続いたかと思うと一転してダークな陰謀とアクションという展開が繰り返される話なので、油断も隙もあらず。今回もなし崩しの宴会シーンの後に二転三転して続いてしまったので、3巻を読み終えたときには4巻も手元にあって良かったと思いました。面白いけれど気軽に読み飛ばせないので、いつの間にか未読が積み上がってしまい、5・6巻はなくて7・8巻はあるという歯抜けの状態だったのです。さあ、5・6巻をどこかで買ってこないと……。

 最近のライトノベルでは、二つ名、その個性を体現する呼び名がついたキャラクターが登場して特異な技を使って戦うというのが売れ筋パターンなのだとも聞いたことがあります。それを言ったら『水滸伝』だって同じで、まあ、面白い物語の基本フォーマットは500年変わらずということですね。
 そういう意味で、この作品は王道路線ということができます。【壊れた万華鏡】舞鶴蜜、【有識分体】柿原里緒、【目覚まし時計】速見殊子、【アンノウン】佐伯ネア、そして【全一】城島硝子とその固定剤である城島晶。なんというか、中高生レベルで思いつく最強能力設定を集大成して洗練させたといったところでしょうか? これが行き着くとこまで行ってしまうと「行動が三択で表示される」『フラグの王子様』になってしまうんでしょう。
 ちなみに【全一】は「オール・イン・ワン」と読みます。漢字で表記して英語で読むというのは『ジョジョの奇妙な冒険』以来の新しい伝統なのかも知れません。これ以前は二つ名はあっても、素直にそのまま読んでいた気がします。

【レジンキャストミルク】【藤原祐】【椋本夏夜】【プリン】【火曜サスペンス】

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