付け焼き刃の覚え書き

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「切れない糸」 坂木司

2009-10-20 | ミステリー・推理小説
「愛されていたという記憶さえあれば、人は一人になっても生きていける」
 沢田の言葉。 

 父親の急死で心ならずも実家のクリーニング店の跡を継ぐことになった新井。東京の昔ながらの商店街の小さなクリーニング店が自分にふさわしい仕事なのか迷いつつも無我夢中で日々を送る新井をサポートするのは、母親であり、松竹梅のパートのおばちゃん3人であり、父親の右腕だった職人のシゲさん。
 そんな新井が預かった洗濯物の中からかいま見えるのは人生の不思議や謎。そしてその謎を解くのは、新井の大学での同級生で、今は住み込みで喫茶店のバイトをしている沢田だった……。

 小泉時代の規制緩和で各地に出現した大規模店舗に押され、今や各地の商店街はどこも瀕死の状態。そんな中でも、昔ながらの商店は店の人が1人1人プロフェッショナルな職人集団なんだという視点で捉え直した上で繰り広げられる謎解き話です。
 坂木司の作品は、謎を解く人も解かれる人もその場限りで消え去るのではなく、その世界の一部として主人公たちの周りにとどまり続けます。それが心地よいのですね。謎を解いて解かれた後に残るのが不幸だけではないという証拠ですから。

【切れない糸】【坂木司】【クリーニング屋】【バグダット・カフェ】【秋祭り】【コーヒー全部入り】【日常系】【安楽椅子探偵】【幽霊】【凧糸】

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