付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「宿命の子ら~マロリオン物語(5)」 デイヴィッド・エディングス

2009-10-20 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 ベルガリアード物語『予言の守護者』から始まった光と闇の戦いの物語もついに決着ですが、そこまでに予言者の都市ケルでの探索、騎士の島ペリヴォーでの馬術試合や竜退治とイベント盛りだくさんの内容となっています。しかし、大長編の最終巻となればあらすじを書けばネタバレ、最終巻の感想でいきなり1巻から読み始める人もなかろうというものなので、「読み終わって面白かったなあ」というあたりを少々。

「あいまいに話せば、人はわたしの言葉をより注意深く吟味する。いわれたことがわかりかけてきた人々を見ていると、満足の念がわいてくる」
 なぜ、ことさらに回りくどくややこしい言い方しかできないかと問い詰められた女予言者シラディスの返事。目で見ることを禁じられ、ただ予言の選択だけのために生きている予言者たちにもストレス発散の方法はあったようで……。
 もったいぶった女予言者の性根が1枚1枚薄皮を剥ぐように表れてくるのも、この最終巻です。

「隣人の言葉を学ぶのは礼儀だ」
 砂金掘りの老人の言葉。
 会話のひとつひとつに含みがあり、ユーモアがあります。通りすがりの老人の言葉といえども疎かにできません。

「自分の求めているものを知っていれば、他人の顔は開いた本みたいに読める」
 こちらはドラスニアの密偵養成課程で学ぶことの1つ。
 凄腕の商人やら密偵やらが跳梁跋扈しているのがこの作品。プロ同士の駆け引きは常に見物です。マーゴスのウルギット王とドラスニア情報部のトップであるケンドン辺境伯との会談、ナドラクの商人ヤーブレックとドラスニアのポレン王妃の舌戦に止めを刺す若き王の冴えとか名勝負も数知れず。

 遙かなる太古に分裂した宇宙の運命を担う者は、歴史上常に2人存在した。
 しかし、本来同格である2つの運命であったが、<闇の予言>が<闇の子>ただ1人にその力を注ぎ込んだのに対し、<光の予言>は<光の子>1人ではなくその仲間となる者たちにまで力を分散させていた。
 そして「もはや存在しない場所」にてベルガリオンたちが魔女ザンドラマスと対峙したちょうどそのとき、選択の時を告げる光が天空より降りそそぐのだが……。

 こういう重大な事件はどんよりした雲の下で起きるものらしく、空が真っ青な好天のもとで起きることはないのだとシルクも文句たれていましたが、これにて完結。エピローグ部分もたっぷり。全体の1/4は過去現在未来に続く運命に決着がついた後の物語が延々と語られて嬉しい限り。ドラクエで竜王を倒した後に世界各地を歩いて回る気分です。

【マロリオン物語】【デイヴィッド・エディングス】【宿命の子ら】【ケルの女予言者】【宿命の戦い】【おおやちき】【HACCAN】【アホウドリ】【集団意識】【珊瑚礁】【馬上試合】【結婚式】

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「切れない糸」 坂木司 | トップ | 「霧の夜の戦慄」 赤川次郎 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー」カテゴリの最新記事