付け焼き刃の覚え書き

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「A君(17)の戦争1~まもるべきもの」  豪屋大介

2011-04-17 | 異世界転移・召喚
『軍隊における予備兵力とは、住宅ローンを抱えた一家にとってのボーナス以上の意味を持っている』

 ある日突然異世界ブラントラントに飛ばされた、いじめられっ子の高校生・小野寺剛士。彼に与えられた使命は、新たな魔王となって人間と戦い、ゴブリンや吸血鬼たち魔族の世界を守るというものだった……。

 「現代社会に生きていた普通の少年が、異世界に召喚されて世界のために戦う」というのは(たぶんナルニア国以来の)ファンタジーの王道パターンであるし、見た目はパッとしない主人公の周囲に美少女が集まってくるという少年マンガやライトノベルでおなじみのハーレム・パターンなのだけれど、そういう話ではないんだよね。出版社的には「大戦略大河ロマン」とか「大逆転ピカレスクバトル」と主張しています。
 魔王といっても魔族の王だから魔王なんだけれど、さまざまな種族が仲良く暮らしている分だけ、封建的で自らの利益のために無意味な戦争を仕掛けてくる人間側よりマシなんじゃね?という話。

 ライトなファンタジーではなく、本格的な戦争小説。ポール・アンダーソンの『大魔王作戦』で物足りなかった部分がしっかり詰め込まれてますね。その、『大魔王作戦』を意識した話だというのではなく、精霊や魔物が実在する世界で繰り広げられる近代戦の醍醐味という意味合いです。
 兵站の改善による部隊の展開速度の向上とか、中身のないアジ演説による士気向上の欺瞞とかから始まり、やがて第三国への外交攻勢とか大型爆撃機による敵本土空襲とかの話にまで至るわけで、これから国家のトップとして戦争指導者になろうという人にはお勧めの1冊。

 カテゴリー分類の是非について私が語るべきものではないけれど、誰が何をどう分類しようとそのものの本質が変わることはない。だから「この作品はハイファンタジーだ」とか「これはライトノベルであってファンタジーではない」みたいな論争は笑止であって、暇つぶし以上のものではないと天に唾吐く宣言をしてみる。
 結局、今の自分が好きか嫌いかに尽きるのであって、これはミリオタ小説だか美少女モンスター小説だかファンタジー戦記だかわからないけれど、面白い話であるのは間違いなくて、読者としてはただただ続きを出して完結させてくれと祈るばかりなのです。

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