「甘く優しい世界で生きるには（１）」 深木

　祖父も父も槍働きで名の知れた勇者で母親は聖女という、名門貴族の総領息子となるはずのドイルだったが……、グレた。身分を笠に着て、横車を押したり気にいらない人間を虐めたり。
　周囲のグレンへの評価はどん底まで落ちていたが、高熱に浮かされ生死の境をさまよっている間に彼は前世の記憶を思い出していた。思い出しただけでなく、このままでは自分には先がないと、15歳の少年ではなく成人男性としての良識が理解させたのだ。
　こんな馬鹿息子でも愛してくれた両親や婚約者たちのためにも、今度こそ真っ当な人生を歩まなければならないと。
　それはマイナスからの再スタートだった……。

「俺の負うべきものを誰かに任せるのではなく、自分自身で背負って生きていきたいと思っているのです」
　ドイル・フォン・アギニスはそう誓った。
　主に自分自身が立ててしまった死亡フラグを折るために。

　剣と魔法の世界での学園生活で、容姿にも家柄にも（何より欲しかったものを除いては）能力すらも恵まれた主人公がどん底から這い上がろうとする話で、これだけ恵まれていたらどん底からだって這い上がるのはラクだろう……と思わないでもありません。結局、チートなんですが、なんかウェブ連載の頃から好きなんですよね。回りが常軌を逸するくらい主人公を好きすぎで、それが一周してしまって嫌み臭さを消しているのかもしれません。
　
　イラストが頑張っているのだけれど華が不足気味。具体的には「バラ100本の花束」がせいぜい15本程度にしか見えない残念感。
　いかにも少女マンガ的な展開になっているし、そんな絵柄だし、もっと花を盛ろうよ？

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