付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「背表紙は歌う」 大崎梢

2011-02-14 | 本屋・図書館・愛書家
「あの店は本の洪水にのまれ、溺れ死んだのだ」
 取次会社のデビル大越の言葉。まったく世に出る本の数は多く、小さな本屋では扱いきれなくなっているかのようです。

 人気作家の昔なじみだという書店員の正体は? 地方都市の小さな本屋の経営がどうして苦しくなっているのか? 文学賞がデキレースだとデマを流しているのは誰か?
 書店や取次を駆け回り、1冊でも多くの本を並べてもらい、1冊でもたくさん売って欲しい。それが出版社の営業担当者の願い。しかし、世の中には物語の中以外にも謎は多くて……。

 シリーズ2作目……って、同じ作者の「成風堂書店事件メモ」シリーズは読んでますが、こちらは1冊目を読んでません。文庫落ちを待っていたのです。本の置き場を考えたら小さくて薄い方が良いし、なによりこの創元のソフトカバーは本の幅が微妙に大きくて読みづらいのです。ユーザーフレンドリーではありません。
 でも、借りてしまったから読んじゃったのですけどね。

【背表紙は歌う】【出版社営業・井辻智紀の業務日誌】【大崎梢】【成風堂】【ブログ】【サイン会】【謎かけ】
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「デュラララ!!×9」 成田良悟

2011-02-13 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
『あ、自分から話すんだ!?』

 異常な愛情や性癖を持つ、老若男女怪人妖怪の登場する『デュラララ!!』のシリーズだけれども、折原臨也というキャラがいなければ、9巻も続いて未だ終わる気配が見えないなどありえない。たぶん5巻くらいで大団円を迎えていたはずだ。なんというか、「**の革命の黒幕はCIAだ」とか「アメリカ軍は宇宙人の死体を隠している」というようなことを実際にすべて1人でやっている、<一人陰謀論>みたいなキャラクター。
 そういう、みんなの嫌われ者であり、トラブルメイカーにしてキングメイカーでありながら、頭も良いし要領も良いし、またみんなに必要とされる存在であり続けるためになかなか退場しない。なんというか、ヨブ・トリューニヒトの件みたいに後先考えない人間に通り魔的にやられるしかないだろうなと思います(でも、こいつは死なない……)。
 そんな臨也が主役となって、折原3兄妹を中心に臨也の過去と現在が語られるアレコレ。すべての人間に興味があり観察したいという臨也と、人間に興味のない新羅の中学時代とか。

 ただ、あまりに“そういうキャラ”ということが周知されてしまったために、こいつがどんなに窮地に陥っても「どうせ、みんなこいつの手のひらの上で踊っているだけなんだろうなあ」と思ってしまうので、緊迫感も期待感もあまり無し。逆「水戸黄門」とか、よくも悪くもそんな感じ。
 でも、今回の表紙イラストはなんかいいよね?

【デュラララ!!×9】【成田良悟】【コイン】【食虫植物】【モンハン】【水着】
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「わたしと男子と思春期妄想の彼女たち」 やのゆい

2011-02-12 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「使える物は効率的に擦り切れるまで使い続ける。物も人も同じよ」
 2足のスニーカーを交互に使えば飛躍的に長持ちする。人も同じとユイヒメの教え。

 悪霊に取り憑かれているぞと、ある朝、怪しい虚無僧にお守りとコンタクトレンズを渡された中学生2年生の峰倉あすみ。そのレンズを通して彼女が見たものは、教室の男子生徒にまとわりつく美少女たちだった。
 どうやら、コンタクトレンズの力で、彼女のいない男子たちが妄想で生み出した<妄想少女>が見えたり話したりできるようになったらしい。
 ところが、水着やブルマやメイド服の美少女たちの中に、あすみの愛する高柳君の<妄想少女>はいない! 妄想の必要がない彼女持ちには妄想少女は生まれないのだ。
 略奪愛を成し遂げんと、あすみは学校一の妄想美少女リサやユイヒメたちと高柳君の彼女を捜し出そうとするのだが……。

 パワフルな少女が他人には見ることのできない美少女たちと繰り広げる問題だらけの大捜査。第12回えんため大賞優秀賞受賞作。今年の新人は豊作です。
 こういう話の主人公はえてして我が強くて他人の迷惑など考えないはた迷惑なキャラになりがちですが、そんな風にみえない、ならないのがすごいな。ガラッパチでノリの良い一人称のせいもあるでしょうし、捜索の途中で出会った人たちの言葉をきちんと聞いて成長しているからかもしれません。

【わたしと男子と思春期妄想の彼女たち】【1 リア中ですが何か?】【やのゆい】【みやびあきの】【地球はかい爆弾】【ブルマ】【笹かま】【ガス爆発】【放火】【ソックスハンター】【デスラー総統】【銭形平次】【リーマン予想】【優しい連鎖】
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「ガンパレード・マーチ2K~北海道独立(1)」 榊涼介

2011-02-11 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 幻獣との戦いにおける日本の生産拠点として特区となった北海道。そこは自衛軍最大の兵器工廠であり、燃料生産地であり、食糧供給源であり、難民の受入先であり、北海道が自力で生み出せないものは娯楽産業だけともいわれている。
 その北海道の自衛軍は、九州での幻獣戦の際も、東京でのクーデターの際も、東北でのシベリアの王の軍勢の戦いの際にも動かなかった。日本の産業拠点である北海道を守るという大義名分のもとに一歩も、一兵たりとて動かさなかった。
 そして、極東での幻獣戦に決着がついた今、北海道は静かに動き出そうとしていた。東京から反逆者として逃亡した樺山が潜伏したのは札幌。北海道はまた軍需産業である樺山の拠点でもあった……。

 えっと、ひとことでいえば、デストピア篇。アイドレス的に言うなら、「あっ、ちょっと目を離した隙に、設定国民がとんでもないことをしてる! とりあえず質疑で状況を把握しつつ……ああっ、もうr:実行で現地調査しないと何もわからない!(>_<)」といった感じ。なんか、もう、ガンバレ!としか言えません。
 単に目の前の正体不明な怪物を倒せば良い戦いではなくなっていて、敵も味方も同じ人間で、戦争というより政争で、さらにいえば謀略戦で、レギュラーメンバーはみんな戦争神経症との境目をうろうろしているし、研究者は人間をやめてるし、読んでいても息抜き部分が少なくなっていて辛いですね。面白いけど、(ちらりと言及のあった)黒い月までこんな感じが続くのかな……。

【ガンパレード・マーチ2K】【北海道独立】【榊涼介】【きむらじゅんこ】【セバスチャン】【多脚戦車】
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「はたらく魔王さま!」 和ヶ原聡司

2011-02-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「お前悪魔だ」
「悪魔ですが、何か」


 今月発売の第17回電撃大賞の受賞作品をざっと眺めて、面白そうかなと思ったのを購入。これは銀賞だけれど、大賞とか金賞はあらすじ紹介を読んでもあまり面白そうに思えなかったのですから、わたしの感性は銀賞クラスということでしょう。

「魔王サタン! 何故あなたが幡ヶ谷のマグロナルドでバイトしているの!」

 『聖☆おにいさん』とか、好きな人にはお勧めかな。文章のテンポがいい。
 あちらはブッダやキリストが骨休めに地上に降りてきて安アパートで、妙に小市民的な日々を過ごす話ですが、こちらは、勇者との戦いに負けて逃亡してきた魔王サタンと悪魔大元帥アルシエルが、捲土重来を期すために現代日本の安アパートで妙に小市民的な日々を過ごす話。追いかけてきた勇者や後輩バイトの女の子とゆるゆるぐだぐだに続くのかと思いきや、危機感あおってスペクタクルに盛り上げて、最後にさらっと小市民ワールドに回帰させて幕。
 いつかエンテ・イスラの世界へ帰還し、今度こそ世界征服を成し遂げんと、ハンバーガーショップで真面目に働く魔王の姿が涙を誘います。信じられないペースで時給が上がるのには「さすが魔王さま!」と感嘆。イラストもがんばっているけれど、脳内イメージは中村光と西森博之が代わる代わる来ますね。というか、この話なら、最初のカラー口絵くらい、勇者と魔王の最終決戦とか、首都高大破壊とか、盛り上がる場面を描いてくれればいいのに……。

【はたらく魔王さま!】【和ヶ原聡司】【029】【スーパーサイズミー】【へそくり】【身元保証人】【B級】【スクランブルエッグ】【キュウリの酢の物】
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「カナクのキセキ1」 上総朋大

2011-02-09 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 帯の惹き句によれば、ヒロインのユーリエが「可愛い」というのが選考委員に評価されての、第22回ファンタジア大賞の金賞受賞作。ストーリーはシンプルだけれど、キャラクターの魅力で売るタイプかな?……

 魔法学校を卒業した少年カナクは、賢者マールの足跡を辿る巡礼の旅に出た。
 かつて紅の魔女と呼ばれ、恐れられ蔑まれてきた女性も、没後1000年を経た今ではその功績を認められ、暁の賢者として彼女を崇めて信仰する者は一大勢力となっていた。そして、彼女が死の間際に建てた4つの石碑を巡る旅は、旅の困難からおこなう者は多くなかったが、敬虔なマール信徒として神官をめざすカナクにとってはなんとしても実現したい目標だった。
 ところが、このカナクの旅に学校一の天才魔法少女ユーリエが無理やり同行してしまい……。

 どちらかというと『ドーム郡ものがたり』とかのラインの「児童文学」的な香りの作品。2つのエピソードが平行して流れ、最後に円環が閉じる構成は、奇をてらわず手堅いもの。キャラクターも普通に良い感じ。あまりにオーソドックスな良品ぶりに、かえってメインターゲットの中高生に受けないんじゃないかと不安になるくらい。『ヘルカム!』が読者賞を取ったということは、読者層的にはああいうのが求められているのだと思うし。
 まずは近刊らしい2作目に期待したいと思います。

【カナクのキセキ】【上総朋大】【さらちよみ】【巡礼】【時間移動】
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「ねっとりぐちゃぐちゃセルロイド~○×△べーす(1)」 月本一

2011-02-08 | スポーツ・武道
『「青は藍より出でて藍より青し。ならば、藍は藍らしく振舞うだけのこと。青になる必要は、まったくない』

 数年前までは強豪だったはずの野球部が、ワンマン校長の怒りをかって今や廃部寸前。
 その野球部がなぜかピンポイントで目をつけた桂木は、のんべんだらりとした高校生活を夢見る新入生だった……。

 序盤は暑苦しい男の大声連呼と人の話を聞かない大騒ぎで読むのが辛かったけれど、このキャッチャー中村の「ねっとりぐちゃぐちゃセルロイド」とか「練れば練るほどぐらつくセメント」といった意味不明の言葉遊びさえ無視すれば、普通の熱血野球コメディでした。こいつ頭は良いけれど粘着質だよね。
 努力した凡人は果たして天才に勝てるのか? そもそも人生における勝ち負けなんて誰が決めるの? それって自分だけの思い込みに過ぎないのではないだろうか……そんな真っ当なテーマを、ひねた努力家と素直すぎる天才を主軸に描いた青春小説。楽しければ良いんじゃない?
 個人的には、尊敬できそうな大人がまったく出てこなかったのが残念。敵役とはいえ、校長の大人げなさは尋常ではありません。普通に廃部寸前の部が頑張る話でも良かったのになあと思いましたが、そうすると平凡になっちゃいますかね?

【○×△べーす】【ねっとりぐちゃぐちゃセルロイド】【月本一】【日高フウロ】【金魚】【高校野球】【第12回えんため大賞特別賞】【熱血】【努力】【完全領域】
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「神明解ろーどぐらす4」 比嘉智康

2011-02-07 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 ゆるゆるぐだぐだな男1人に女3人の放課後下校物語が、前巻末から急転直下。エア友達のトモちゃんの同類かと思っていた留萌の正体も二転三転。

 いろいろトラブルが発生するのだけれど、みんなその都度で解決しようと動く姿勢なので、話が陰湿にならず前向きなのですね。登場人物たちが、誤解が起きたらすぐに解こうとする、問題の芽は小さいうちに摘もうとするという姿勢の話は好きです。よくある「おかしいと思ったけれど、よく確認せずに放置」とか「ちょっとした誤解を大したことがないと後回し」というのは、登場人物が余りにもバカに見えて嫌いなのです。
 ただ、なにか問題が起こったときに、自分だけ、自分たちだけでなんとかしようと思うのは、ミステリーやサイコホラーなら死亡フラグ。ここに至って、そんなものを立てないで欲しいなあ。
 このままゆるゆる10巻でも20巻でも続くんじゃないのかと思っていたのに5巻完結とのことで、内容的にもかなり危機的状況で「続く」となっているので、作品としての評価は5巻が完結してから。
 できれば、ゆるゆるぐだぐだな放課後下校物語に戻って終わってくれると良いな。

【神明解ろーどぐらす】【比嘉智康】【すばち】【クイズ】【通り魔】【サイコパス】
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「変態王子と笑わない猫。(2)」 さがら総

2011-02-06 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「美化できる思い出があるのなら、好きなだけ美化する。そうして我々は死者の縁を抱いて、生者のために生きていくのだ」
 “鋼鉄の王”こと筒隠つくしの言葉。

 変態王子の夏が終わろうとしていた。他人の好意に気づかず、自分の好意は空回りし、途方に暮れて家路についてみれば……自宅が消滅していた!
「それなら先輩。今夜は、わたしの家に泊まるですか」
 家族は旅行中。途方に暮れた横寺陽人は、筒隠月子の家に身を寄せるのだが、そこで恐るべき“鋼鉄の王”と土蔵に潜む巨大猫と遭遇する……。

 台風クラブなビューティフル・ドリーマー? 
 帯にもチラシにも、大きく「レーベル史上 初動売り上げNo1!!」の文字が。担当編集者がよほど嬉しかったんだろうけれど、ということは初巻の売上としては『あそびにいくヨ!』よりも『IS』よりも『けんぷファー』よりも『緋弾のアリア』よりも『ゼロの使い魔』よりも売れたんだというのは意外。人の感情には敏感なのに恋愛感情にはまるっきり疎く、本音しか言えなくなったどころか本音も立前もぐちゃぐちゃに垂れ流し放題で、こんな男がなぜモテる?的な話ではありますが、女性陣がそれぞれに個性的で可愛いし、確かに面白いとは思います。続きが楽しみだし。
 携帯で読める前日譚も良い話でした。

【変態王子と笑わない猫。】【さがら総】【カントク】【ペット】【お風呂場でドッキリ】【台風】【手錠で拘束】【布団ですまき】【隠し部屋】【戸籍謄本】【なるにあ】【ゾンビ好きなヒロイン】
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「地球戦線4」 ジョン・リンゴー

2011-02-05 | ミリタリーSF・未来戦記
 表紙はいかにも「キングギドラっ!」なんだけれど、首の数が違います。どちらかというとヒュドラかな。

 2004年10月。北米大陸での戦いは首都ワシントンの攻防に突入していた。テレビメディアの流す派手な映像が視聴率を稼いでいる一方、インターネットでは詳細に戦況を解説するウェブサイトにアクセスが集中している。
 しかし、戦いは何も北米だけで起きているわけではなく、中東ではイスラム防衛軍が第二次大戦当時の装備まで投入して激戦に突入し、中国大陸ではアメリカからの支援物資を利用しての人海戦術を繰り広げており……。

 これも一種の仮想戦記かな。
 戦いは死屍累々の激戦ばかり。敵前逃亡も相次ぎますし、それを食い止める努力も綺麗事では済みません。けれども、銀河テクの産物であるコンバットスーツ部隊なんか恐れもしない猪突猛進のポスリーン人たちが、工兵部隊にはビビリまくる姿に爆笑。工兵部隊がここまで活躍する話は、他で読んだことが無い気がします。
 最後の最後にまたまたカリーちゃん登場。まだ8歳とのことです。末恐ろしい8歳だこと……。

【地球戦線】【ポスリーン・ウォー2】【ジョン・リンゴー】【ひろき真冬】【工兵の故郷フォート・ベルボア】【悪魔の掟】【ワシントン記念塔】【クレイジー・オン・ユー】【壁に穴】【電磁投射砲】
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「表裏世界のソーマキューブ」 乙姫式

2011-02-04 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「暴力で作りあげられたものは、いつかそれ以上の暴力で破壊される」
 だが暴力を行使しない者も暴力によって破壊される。

 第二次大戦末期の1945年8月7日、世界各地の大都市で突如発生した大災害は、戦争をうやむやのうちに終結へと導いた。
 その戦禍の中で日本が手に入れたのは魔法の力。<裏界>と呼ばれる異世界からの来訪者である6人の少女を手中に収めた日本は、魔法の力をも我が物とし世界に君臨していた。
 そして2011年……。

 脱ぎたてのほこほこ温かい女性用下着から始まる破壊と殺戮の物語で、スラップスティック・ラブコメで、巨大学園モノで、セカイ系で、魔法バトルもの。生徒数700万人の巨大学園というのは映像化されたら面白いだろーなー。脳内イメージは椎名高志なんだけれども。
 一見、凡庸な主人公が才色兼備の魔法少女たちに偏執狂のように追いまわされるドタバタコメディなのだけれど、伏線はちゃんと回収されて読み終わって「おおうっ!」ポンッと手を叩いてしまうような作品。ネタの振り方とか、広げ方と畳み方とか、巧いわ。
 緞帳からせり上がるように登場する鋼の風紀委員長と真性マゾの風紀委員たちはすごく印象的だったけれど、こういうネタをワンポイントで使い捨てにできる剛毅さは見習いたい。

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「ドイツゲームでしょう!」 小野卓也

2011-02-03 | エッセー・人文・科学
 昔、海外では週末に大人でも仲間同士集まってゲームをするんだと聞いて、そんなに遊べるものがあるの?と思ったものです。麻雀とかなら納得するけれど、ボードゲームというとスゴロクの複雑なやつくらいしか思い浮かばず、碁会所じゃあるまいし将棋やオセロをやりに大人が集まるなんて……。ウォーゲームあたりになると大人向けかもしれないけれど、普通の人たちがパーティでプレイするといったイメージではないし。
 でも、「カタン」のようなドイツ製ボードゲームを知って納得。ルールはシンプルで簡単。運の要素もあるけれど、プレイヤー同士の駆け引きも重要で奥が深い……世の中にはそんなゲームが山ほどあったのです。
 そして、そんなドイツゲームの中でも「ドイツ年間ゲーム大賞」「ドイツゲーム賞」「アラカルト・カードゲーム賞」「ドイツ年間キッズゲーム賞」というタイトルを取った名作ゲーム75作を紹介したのがこの本。調べてみたら2007年版とか2008年版が出てたんですね。
 中学生の頃はハヤカワや創元の文庫目録を読みながら、次は何を買おうかとわくわくしていたものですが、そんな気分をゲームで味わえる本でした。

【ドイツゲームでしょう!】【四大ゲーム賞受賞作2010年版】【小野卓也】
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「子ひつじは迷わない~回るひつじが2ひき」 玩具堂

2011-02-02 | 学園小説(ミステリ)
「常習性の偽りを本質と呼ぶのよ」
 本物だとか偽物だとかいう考えそのものが幻想なのだと仙波明希。

 生徒会長の思いつきでつくられた「迷わない子ひつじの会」も、生徒たちの悩み解決の場として信頼度が急上昇。今では生徒の恋愛相談からクラブ顧問の生徒指導まで、なんでもかんでも引き受けさせられている。
 ところが、今回生徒会長が直々に呼び寄せたような相談者は、メイド服の女子中学生。しかも、相談内容はバイト先の喫茶店がランチにオムライスを出すと死体が出てくるというもので……。

 ハーレクイン風にいうなら「ライトノベル・ミステリー」。とはいえ、物語というものは、たいていどこかしら「あの人はなぜこんなことをしたの?」といった謎解きとか、犯罪にまつわるエピソードなどミステリーの要素を内包していますから、その違いは多いか少ないかにすぎないのかもしれません。
 そう考えると、この話はミステリ濃度70%くらいかな。

 それはともかく、このシリーズは謎を解くこと=相談の解決ではないという二段構えの構成が異色で面白く、日常系ミステリのファンには是非一読を勧めたい作品です。
 生徒会室の隣で謎を瞬時に解いてしまう仙波も、今回は暑さにうなりながらゴロゴロだらだらぶりに磨きがかかっています。風が吹けば桶屋が儲かる今回の話もなかなか好きですが、自分としてはテストの解答話が今回のポイント。まさに「そういう方法だったか!」と脱帽。CDドラマ化もされるということで、これからの展開に期待します。

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「鏡の迷宮、白い蝶」 谷原秋桜子

2011-02-01 | ミステリー・推理小説
「宝の地図を手に入れて、宝島へ船出しないようでは、男がすたる」
 水島啓輔の言葉。

 丼の中から携帯電話が消えたのはなぜ? 万華鏡だらけの部屋に隠されたものとは?
 『美波の事件簿』の前日譚の第2弾にして、水島のじいちゃんがまだ元気だった頃の探偵物語。

 日常の謎系の短編集。まだ中学生の美波と高校生の修矢は互いに面識が(ほとんど)なく、水島のじいちゃんを共通項としてそれぞれがそれぞれの謎に挑むわけですが、美波の親友・直海の江戸っ子ぶりとか、かのこの一癖も二癖もあるお嬢さまぶりとか、先の人間関係が見えているだけに愉しくもあり悲しくもあり。
 巻末にはライトノベルの世界に本格ミステリを取り入れようとして果たしきれなかった、太田忠司の回顧に始まる解説文。結局、編集者もキャラ重視でトリックなんかどうでも良かった……という話。これも一読の価値あり。

【鏡の迷宮、白い蝶】【美波の事件簿】【谷原秋桜子】【ミギー】【万華鏡】【猫】
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