付け焼き刃の覚え書き

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「リーングラードの学び舎より」 いえこけい

2015-09-01 | 魔法の学園
 どうしても「スターリングラード……」としか覚えられないミリタリ脳が恨めしいです。

「人材は爆発だ!」
 賢いのかバカなのか、見方次第で評価が変わるのがランスバール王であった。

 隣国との戦争、内乱、飢餓という災厄から立ち直りつつあるリスリア王国で賢王、身近な人物に言わせればバカの思いつきで新たな計画がスタートした。貴族にも平民にも同じ教育を与え、次代の人材を育てて国力を充実させていこうという「義務教育推進計画」である。
 しかし、いまなお勢力を維持する貴族派からは反対の声が根強く、妥協案として隔離された辺境の施設で1年間の実験教育をおこない、その成否で判断しようということになった。
 その教師の1人として登用されたのが、さえない青年ヨシュアン・グラム。
 いつも爆発を起こしている術式具職人としてしか近所の住人には認識されていないが、ヨシュアは王国の賓客であり、ランスバール王の友であり、戦場では悪名高かった戦略級術式師であり、この国唯一の義務教育経験者でもあった……。

 戦争の英雄が正体を隠して問題児相手に先生をやっていく話。
 5人の少女の心を開いていく中で自分自身も過去の呪縛から解き放たれる……かどうかはまだ分からないとして、1人の教師が5人の問題児の少女を担任して……というと、PCゲーム『卒業』みたいなテンプレ学園恋愛ストーリーかと思っていたら大間違いでした。あるいは学園ものといいつつ、いきなり実践教育と称しての迷宮攻略ものとかになるのかなといった先読みも失敗。どこまでも、あくまでも、なによりも教師物語。
 義務教育なんて発想がそもそもどこにもなかった0からのスタートの中で、見切り発進の指導要領に翻弄され、カリキュラムの組み直しに右往左往し、生徒たちの長所を伸ばすか短所を克服させるか悩み、他の同僚教諭との関係に悩む合間に、反対派や隣国のイリーガルな工作員対策や周囲の深い森に隠された謎に翻弄される物語でした。
 学園コメディとかアドベンチャーとかいろいろやっているようで、あくまで教育という軸足がぶれず、先生と生徒5人のチームの信頼と友情の物語であると同時に、6人の教師のチームが千差万別な生徒たちを見守り意見を戦わせながらカリキュラムを組み上げていく物語でもあるのです。

【リーングラードの学び舎より】【いえこけい】【天之有】【オーバーラップ文庫】【異世界ファンタジー教師物語】【輝く青銅】
コメント
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