どこかのウェブ小説の感想を読んでいたら「これはパクりだ」と指摘するものがありました。Aという基本設定で、メインキャラの特徴にBやCの要素があって、DやEみたいなアイテムが登場するから……って、アホですか? そんな要素、今どきどこにでもありますよ。お話が「昔々あるところに……」で始まったらパクりですか? 王女様を守って王子が戦ったら何かのマネですか? そんなテレビや雑誌の占いみたいに漠然としてそう言い出せばなんでも引っかかりそうな要素を取り上げたら、なんだって引っかかりますよ。『グリッドマン・ユニバース』と『うる星やつら~ビューティフル・ドリーマー~』だって、ネタの組み合わせ的にはほとんど同じなんです。
ただ、パクりかどうかは別として、なにかそれまでと違うアイデアとかアイテムとか出てきたときに、その先駆けが何処なのか確認しておくのは面白そうです。ちょっと目に付いた、気になるものをリストにまとめておきましょう。
【最弱スライム】
粘液状のモンスターといえば、1931年のラブクラフトの小説『狂気山脈』とかD&Dでは1958年映画『マックイーンの絶対の危機』では世界を滅ぼしかねないモンスター。1974年のTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』でも強敵の部類だったのに、1981年のコンピュータRPG『ウィザードリィ』では雑魚扱いになり、その影響を受けた1986年のファミコンRPG『ドラゴンクエスト』でもスライムは雑魚だったけれど、その鳥山明デザインの可愛さとも相まってぽよよんとした「かわいい最弱キャラ」イメージが定着。
弱いモンスターの代名詞として扱われているのが『
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』、その弱キャラが使いこなすと意外と便利というのが『
神達に拾われた男』や『
スライムなダンジョンから天下をとろうと思う。』、弱キャラが成長して誰よりも強くなるのが『
転生したらスライムだった件』とか。
いや、もともと強いモンスターだったんだよ? それが今ではトイレの処理係に……。
【生活魔法】
作品によって魔法の分類はいろいろありましたが、比較的新しそうなのが「生活魔法」というもの。攻撃魔法とか火魔法とか精霊魔法とか白魔法とか魔力の根源とか影響する事象とかには関係なく、日常生活に必要な、ちょっと物を片付けたり、料理したり日常生活に密着した便利な魔法を引っくるめて「生活」というジャンルにくくったのはちょっとした発明。
今のところ最初に見かけたのは2015年の小説『
生活魔術師達、ダンジョンに挑む』。その後しばらくフォロワーは見当たらなかったけれど、このメアリー・ポピンズ系の魔法ジャンルは20年代に入って目立ち始め、2021年の『生活魔法使いの下剋上』『生活魔法はハズレスキルじゃない』『異世界に来たけど、生活魔法しか使えません』あたりから普通に「生活魔法しか使えないし」という、最弱スキルの代名詞となり始めています。
【風魔法】
前にもチェックしたけど、空気をぶつけてモノを切断するというのは日本以外では一般的ではない魔法の使い方。そもそも水を高速で放出するのはウォータージェット切断加工といって金属も加工できるリアルな技術だけれど、空気を圧縮しても何も斬れません。砂をエアーで放出して研磨するサンドブラスターがリアルの限界です。
それが風でモノが斬れるというのは、妖怪かまいたちから1954年のマンガ『赤胴鈴之介』の真空切りへと継承され、そこからRPG『ドラゴンクエスト』のバギ系風魔法で定着した感じです。風魔法の理屈を説明しているものとしては、マンガ『クレオパトラDC』に高層ビルの谷間を吹き抜ける突風によって真空状態が発生し、それで人が斬られる……というエピソードがありました。
【隣の彼女】
ここ数年ライトノベルでも多い「ヒロインが主人公の隣部屋/隣家/同じ家に住んでいる」というのは昔ながらの少女マンガの王道。お寺の息子と病院の娘が家族ぐるみでケンカしていて、最後はゆりかごから墓場までセットで面倒見ます!で大団円というのもあったけれど、いちばん有名なのはあだち充の代表作、1981年の『タッチ』。新しいかと思ったけど、もう40年以上前かあ……。