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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

オカルト

2013-01-05 18:05:45 | 読んだ本
森達也 2012年 角川書店
サブタイトルは、「現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ」。
買ったのは去年の秋だったと思うけど、二か月くらいほっぽらかしたままで、年末年始の休みで読んだ。
著者名とタイトルみたときは、あーこれはきっと『職業欄はエスパー』の続編だなと思ったんで、すぐ手にとったんだったけど。
読みだしたらすぐ、だって面白いから。
雑誌連載のものが元らしいけど、だからか知らないが、各章がスピード感サクサクある感じで、とても読みやすかった。
内容は、オカルト全般の取材。
清田益章くんのスプーン曲げ、恐山のイタコ、秋山眞人の霊視、元テレビプロデューサーで日本心霊科学協会の常任理事を介してのその協会理事長へのインタビュー、スピリチュアル・ワーカーへの取材。
毎日夕方の決まった時刻に勝手に自動ドアが開く寿司屋、出るとよく噂される八柱霊園への現地取材。
永田町の風水師だか陰陽師だかの冨士谷紹憲の取材、OFUという団体によるUFO観測会への同行、明治大学大学院での堤裕司のダウジング実験。
彗星探索家で臨死体験者の木内鶴彦の話、メンタリストDaigoのパフォーマンス。
もう何でもあり、てんこ盛り。とてもおもしろい。
で、著者の態度は、前作と同様、ある・ないを決めてかかったりしない。すこし距離をおいている感じ。
そして、オカルトの「隠れたい」という性質に、とまどいながらも注目する。
いろんな超常現象みたいなのを実際に取材してくと、トリックだろと思うのも多くあるが、どうしても「これは説明できないけど、超常現象としか言いようがないだろ」というものも存在する。
ただ、それを注視しようとカメラを向けたり、実験で再現しようとすると、それは見えないっていうか現れない。
そんな性質があることを理解して、たとえば勝手にあくドアのところに赤外線カメラを持ち込んだりしたら、きっと失敗する確率が高いだろうなんて読み切ってたりする。
そのへんを、「オカルトは人目を避ける。でも同時に媚びる。」とか、「それを信じたい人には信じるに足る材料を与えてくれるけれど、疑う人にまで信じるに足る証拠はない。超常現象の解明というのは本質的にそういう限界を持っている」とか、ってメタレベルで見破ってる。
超能力肯定派が実験するのと否定派が実験するのでは、結果が違ってくる「羊・山羊効果」という学説もあるそうで、現象が観察者に迎合するのがオカルトのもどかしいところ。そういうことを明らかにしてるって点がおもしろい。
著者みたいに「結局はわからない。断定できない。曖昧なままだ。やっぱりらちがあかない。」という思いを持ち続けて、いろんなオカルトに接するのが実はいちばんいい態度なのかもしれないと思わされる部分はある。
だって、はっきりしない、わかんないことあってもいいぢゃない、あったほうがおもしろいし。
コメント
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