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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ホルムヘッドの謎

2013-06-21 20:52:43 | 読んだ本
林望 1992年 文藝春秋
「イギリスはおいしい」のあとくらいに読んだのかな、同じ著者のエッセイ集。
なくなったかと思ってたら、ひさしぶりに発見したんで、読んでみた。
「イギリスはおいしい」なんかの話のおもしろさに、ついつい気にしないで当時サクサク読んでたと思うんだが、あらためて読んでみると、このひとの文章はちょいと古風な感じするし、ぎっしり書かれてる感じで、読むのにパワーがいる。
専門は書誌学で、ロンドン大学とかケンブリッジ大学の文献目録をつくった、なんてのは今回読み直すまで、まったく忘れてた。
12編からなるエッセイは、それぞれ独立してるけど、うまいこと微妙に連鎖している。
各国の公衆トイレ事情を書いた章なんかは、リアルな描写でとても食事中には読めないけど(読まないって)、ロシア(当時はソ連)に行って、不都合を通り越して不気味な体験をした章なんかもおもしろい。
でも、私がいちばん好きなのは、やっぱイギリスのことを書いたもの。
イギリスの交通事情に関して、やたら信号をつくるんぢゃなくて、「ラウンドアバウト」っていうシステムをつくったとこが合理的だとかね。
道路を横断するのも、ムダに信号で人や車を用もなく止めるんぢゃなく、当事者が左右をみれば無理なく渡れるはずという精神にのっとって、ルールというか慣習ができているとか。
でも、やっぱり横断歩道みたいな、ちゃんとしたシステムが必要だと思えば、それをつくるんだが、そのへんの気質について書いた部分がいい。
>イギリス人は、なにか新しく事を起こそうと思うときは、行動を起こすに先だって、まず徹底的に考える。あらゆる方法を模索して、どの方法が最も合理的であるかということを、考えて考え抜いて、それからおもむろに行動するのである。だから、その行動は極めて合理的でゆるぎない。いやしくも、十全に熟慮を巡らして後、最も合理的と思惟される方法で一たび行動を起こす上からは、彼らは容易なことではその方法を変えることはない。
コメント
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