北杜夫 昭和49年 新潮文庫版
前回から、奇病つながり、というわけでもないが。
けっこうとってあって、いまになって読み返している北杜夫の文庫本、持ってるのは昭和56年の16刷、そのころ読んだんだろう。
主人公の山高武平(ヤマタカブヘイ)は37歳独身の男。
ジャーナリストになるのが夢だったが、一流新聞社・出版社の新卒採用には落ち、小さい出版社に何度か勤めるが、入社するたびにその会社がつぶれていくという不運の持ち主で、いまは製薬会社で薄っぺらなPR誌の編集をしている。
で、彼の奇病というのが、歩きはじめるとしばらくのあいだ、四歩目ごとに爪先だちでピョコリと伸びあがる、そうしないと歩けない。緊張しているときとか、長く座ったあと立ち上がって歩き出すときとかは、特にひどい。
医者の見立てでは、強迫神経症の一症状で、実はこの癖が出たのは三年前からだけど、それ以前は靴ひもを何度も結び直さないと歩きだせないという、やっぱり強迫神経症だった。
そんなヘンな癖が、なんだかわからないけど財界の黒幕で、66歳だけどやたら健康で病気ひとつしない、会長と呼ばれる人物がつくった、奇病連盟のスカウトの目にとまる。
奇病連盟の会員は、たしかに変わった症状の持ち主ばかりだが、特に悲惨という感じのしない種類の病人が集められてて、わりと明るい雰囲気である。
でも、奇病連盟の活動はそれほど詳細にわたって展開されてくわけぢゃなくて、そこに誘われたのを契機に、会長の若い娘に妙に気に入られたり、むかしの彼女とヨリが戻りそうになったり、っていう武平の生活のほうが主の物語である。
最後、新しい道を歩み出すとこで、
>大体サラリーマンにとって一番嬉しいのは、入社したとき、上役がバナナの皮に辷って転ぶのを見るとき、自発的に辞表を出すときだ。
って一文があるんだけど、そりゃやってみたいもんだね。
どうでもいいけど、巻末の解説によれば、この小説は1966年10月から半年間、朝日新聞に連載されてたものらしい。
いま新聞にどういうものが連載されてるかは知らないけど、今ぢゃちょっとウケないんぢゃないかな、こういうの、って思う。昭和な感じのユーモア。
前回から、奇病つながり、というわけでもないが。
けっこうとってあって、いまになって読み返している北杜夫の文庫本、持ってるのは昭和56年の16刷、そのころ読んだんだろう。
主人公の山高武平(ヤマタカブヘイ)は37歳独身の男。
ジャーナリストになるのが夢だったが、一流新聞社・出版社の新卒採用には落ち、小さい出版社に何度か勤めるが、入社するたびにその会社がつぶれていくという不運の持ち主で、いまは製薬会社で薄っぺらなPR誌の編集をしている。
で、彼の奇病というのが、歩きはじめるとしばらくのあいだ、四歩目ごとに爪先だちでピョコリと伸びあがる、そうしないと歩けない。緊張しているときとか、長く座ったあと立ち上がって歩き出すときとかは、特にひどい。
医者の見立てでは、強迫神経症の一症状で、実はこの癖が出たのは三年前からだけど、それ以前は靴ひもを何度も結び直さないと歩きだせないという、やっぱり強迫神経症だった。
そんなヘンな癖が、なんだかわからないけど財界の黒幕で、66歳だけどやたら健康で病気ひとつしない、会長と呼ばれる人物がつくった、奇病連盟のスカウトの目にとまる。
奇病連盟の会員は、たしかに変わった症状の持ち主ばかりだが、特に悲惨という感じのしない種類の病人が集められてて、わりと明るい雰囲気である。
でも、奇病連盟の活動はそれほど詳細にわたって展開されてくわけぢゃなくて、そこに誘われたのを契機に、会長の若い娘に妙に気に入られたり、むかしの彼女とヨリが戻りそうになったり、っていう武平の生活のほうが主の物語である。
最後、新しい道を歩み出すとこで、
>大体サラリーマンにとって一番嬉しいのは、入社したとき、上役がバナナの皮に辷って転ぶのを見るとき、自発的に辞表を出すときだ。
って一文があるんだけど、そりゃやってみたいもんだね。
どうでもいいけど、巻末の解説によれば、この小説は1966年10月から半年間、朝日新聞に連載されてたものらしい。
いま新聞にどういうものが連載されてるかは知らないけど、今ぢゃちょっとウケないんぢゃないかな、こういうの、って思う。昭和な感じのユーモア。