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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

サイコパス 秘められた能力

2016-05-05 19:50:42 | 読んだ本
ケヴィン・ダットン/小林由香利訳 2013年 NHK出版
原題は「THE WISDOM of PSYCHOPATHS」、その副題は「What Saints,Spies,and Serial Killers Can Teach Us About Success」という、邦題にくらべてより衝撃的なもの。
去年だったかな、著者が出てたテレビ番組(NHK総合だか教育だか)があったのを見て、えらくおもしろかったので、本買って、最近読んでみた。
サイコパスってのは狂気的な犯罪者ばかりぢゃなくて、ある種の職業において社会的に成功してる人たちのなかに、その素質がある人いっぱいいるという話など。
常に冷静沈着、そのときの最適な判断をくだすことができる、っていう才能については言うまでもないんだけど。
(ただし、非情だ。放っておくと5人が死ぬって場面で、それを救うために別の一人が死ぬっていうプランを、何のためらいもなく選択できるのがサイコパス。)
それに加えて、弱みをもってる人間を見抜く能力があるってのが、けっこう興味深かった。
たとえば、税関を模したテストをすると、何人かの被験者のなかから何かを隠し持ってる人物を外見で当てるのは、サイコパスのほうが率高いんだそうだ。
(これを悪いほうに使うと、カモを簡単に見つける連続殺人犯になれる。)
ということで、サイコパスについて、完全否定的ではなくて、
>サイコパスは怖いもの知らずで、自信にあふれ、カリスマ性があり、非情で、一点に集中する。(p.33)
とか、
>非情さ、精神の強靭さ、カリスマ性、一点集中力、説得力、プレッシャーのもとでの冷静さという性質(p.98)
とかって面を、ポジティブにとらえれば、そこから学ぶことあるだろうってことになる。
>特有の人格的特徴の三位一体(ナルシシズムの特徴である人並みはずれたうぬぼれの強さ。サイコパシーの特徴である恐怖心の欠如、非情さ、衝動性、スリルの追求。マキャベリズムの特徴である不実さと、人を食いものにすること)を備えた男性は、じつは社会の一定の階層では独力で大成功できる。(p.147)
なんて言われちゃうと、そうなりたいような気までしてくる。
サイコパスというのは、たいそう魅力的な人柄だそうだが(ジェームズ・ボンドが典型例らしい)、サイコパス本人に言わせると、
>魅力とは「我慢ならないやつを丁重にもてなして、一気に順調かつ効率よく自分の思いどおりに動かせるようにする能力」だという(p.239)
ので、人を操ることのできる魅力なんである、やっぱちょっと危険?
一方、非情な決断が可能な才能については、恐怖心の欠如からきてるという説もあるが、ある実験によるとサイコパス的特質の高い者は、刺激に対するドーパミンの分泌量が過剰なまでに多いらしい。
そこから考えられるのは、恐れの感情が欠如してるから冷静とかってんぢゃなくて、見返りの報酬が与えられれば異常に集中するっていう性質ってことになる。サイコパスが、ビジネスで成功者になる理由。
そういう科学的な研究が、私にとってはおもしろくて、著者が施設に収容されてるサイコパスを訪問するとこなんかもいいんだけど、著者自身が自分の頭に何かの装置をつけて、脳のどっかを刺激することによりサイコパスの感覚をもつことができた実験のほうが、興味もてた。
>自分が何を言おうと何をしようと、やましさ、良心の呵責、恥、遺憾、恐怖(略)に煩わされることなく、人生のドライブを楽しめるという感じ(p.220)
がするんだそうだ、すごい。
ちなみに、サイコパスの脳が活性化してるときって、精神の高揚にもつながるようなものらしいけど、それが、
>(略)ヒマラヤ高地に住む仏教の高僧が深い瞑想状態にあるとき(p.278)
と同じ脳波だっていうんだけど、悟りの境地なのかな。
コメント
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