ロバート・B・パーカー/菊池光=訳 2005年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
ことしに入ってから古本屋で買った、スペンサーシリーズの第26作目。
原題は「HUSH MONEY」、口止め料?
前作でスーザンの過去が出てきたことから、次はホークの過去が出てきたりしてとか言ってたら、ホントにそんな展開になってしまった。
依頼人は黒人のアメリカ文学の大学教授で、不当に学内での身分を侵害されたから、潔白を証明してくれという。
彼をスペンサーのとこにつれてきたのはホークなんだが、彼の父親が、若いときのホークのトレイナーで、恩人だというつながり。
依頼人が巻きこまれたトラブルに関する誹謗中傷のネタは、同性の学生と愛人関係にあったとかそれがこじれて学生が自殺したんではとか、ドロドロしたもの。
謝礼なんか抜きで引き受けたスペンサーは、いつものように、あっちこっち行っては、だれかれとなく突っつきまわす。
そうしているうちに、誰かが怒りだす、そこを糸口にして探り当てていくというのは、スペンサー流探偵術の常套手段。
ところが、今回は、依頼人の処分に深く関係ありそうな、べつの黒人教授のとこに行った際に、些細なことからホークが激怒して、相手を殴るという事態が勃発する。
「彼はおれの感情を傷つけたんだ」と理由を言うホークに、スペンサーは「お前は感情なんかないんだ」と言う。
後日、スペンサーは「お前は徹底した実際的な男だ」とも面と向かって言う。
>人がなんと呼ぼうと気にしない。人が腹立たしい言動を見せても気にしない。肌の色など問題にしていない。怒らないし、感傷的になることはない。人に恨みを抱かない。怯えたり、混乱を来したり、ばか陽気になったり、嫉妬することはない。誰をも憎悪しない。誰をも愛さない。暴力をいとわない。暴力を楽しまない。
そんなお前が急にあんなに怒ったのは何故だと訊くスペンサーだが、さすが長年の親友、ホークに関してこんなわかりやすい人物紹介のしかたはない。
誰をも愛さないってとこについて、「スーザンは一応好きだよ」とだけクールに返すホークが、そのあとちょっとだけ自身の過去について語る。
で、その事件のほうは、死んだ学生ってのは自殺ぢゃなかったんぢゃないの、という方に目が向けられていって、やがて解決に至るんだが。
もうひとつ並行して、こちらはスーザンから持ちかけられた相談があって、長年の友人であるバツイチの美人が最近ストーカーに付きまとわれているんで、解決してくれというもの。
まあ、ストーカーを突きとめるのはそれほど困難ぢゃなくて、見つけ出した男には、左フックを叩きこんで、やめろと言ったんだが。
困ったことに、救われたはずの被害者だった彼女のほうが、こんどはスペンサーに執拗に接触してくるようになる。
そうこうしてるうちに、殴って言って聞かしたはずの男が、ふたたび彼女に暴行するという事態が起きて、もっと効果のある抑止策をスペンサーは考えなければいけなくなってくる。
「彼女になんと約束したの?」と訊くスーザン、長年スペンサーと一緒にいるので、スペンサーのことだから彼女となにか約束を取り交わしたに違いないとわかってる。
その男に二度と煩わされることがないようにすると約束していたスペンサーは責任を感じている、「おれは約束した」と。
どうするのか多分すこしだけ心配したスーザンは、「どの程度強硬にやるつもりなの?」の後に、「ホークはどうなの」と訊く。
それに対してスペンサーは、「だめだ。ホークが約束したのではない。おれが約束したんだ。自分がやりたくないからといって、彼になにかを頼むことはできない」と宣言する、こういうとこ相変わらずカッコイイ。
どうでもいいけど、初期作品のころからもあったと思うが、事件の舞台が大学って設定よくあるような気がしてきた。
スペンサーが、若者から見たらかなりオジサンなのに、若い女子学生なんかに対して、ひとつ俺の魅力で話を聞き出してみせようみたいな感じで話をきいてまわるシーンは、昔も今もけっこうおもしろい。
ことしに入ってから古本屋で買った、スペンサーシリーズの第26作目。
原題は「HUSH MONEY」、口止め料?
前作でスーザンの過去が出てきたことから、次はホークの過去が出てきたりしてとか言ってたら、ホントにそんな展開になってしまった。
依頼人は黒人のアメリカ文学の大学教授で、不当に学内での身分を侵害されたから、潔白を証明してくれという。
彼をスペンサーのとこにつれてきたのはホークなんだが、彼の父親が、若いときのホークのトレイナーで、恩人だというつながり。
依頼人が巻きこまれたトラブルに関する誹謗中傷のネタは、同性の学生と愛人関係にあったとかそれがこじれて学生が自殺したんではとか、ドロドロしたもの。
謝礼なんか抜きで引き受けたスペンサーは、いつものように、あっちこっち行っては、だれかれとなく突っつきまわす。
そうしているうちに、誰かが怒りだす、そこを糸口にして探り当てていくというのは、スペンサー流探偵術の常套手段。
ところが、今回は、依頼人の処分に深く関係ありそうな、べつの黒人教授のとこに行った際に、些細なことからホークが激怒して、相手を殴るという事態が勃発する。
「彼はおれの感情を傷つけたんだ」と理由を言うホークに、スペンサーは「お前は感情なんかないんだ」と言う。
後日、スペンサーは「お前は徹底した実際的な男だ」とも面と向かって言う。
>人がなんと呼ぼうと気にしない。人が腹立たしい言動を見せても気にしない。肌の色など問題にしていない。怒らないし、感傷的になることはない。人に恨みを抱かない。怯えたり、混乱を来したり、ばか陽気になったり、嫉妬することはない。誰をも憎悪しない。誰をも愛さない。暴力をいとわない。暴力を楽しまない。
そんなお前が急にあんなに怒ったのは何故だと訊くスペンサーだが、さすが長年の親友、ホークに関してこんなわかりやすい人物紹介のしかたはない。
誰をも愛さないってとこについて、「スーザンは一応好きだよ」とだけクールに返すホークが、そのあとちょっとだけ自身の過去について語る。
で、その事件のほうは、死んだ学生ってのは自殺ぢゃなかったんぢゃないの、という方に目が向けられていって、やがて解決に至るんだが。
もうひとつ並行して、こちらはスーザンから持ちかけられた相談があって、長年の友人であるバツイチの美人が最近ストーカーに付きまとわれているんで、解決してくれというもの。
まあ、ストーカーを突きとめるのはそれほど困難ぢゃなくて、見つけ出した男には、左フックを叩きこんで、やめろと言ったんだが。
困ったことに、救われたはずの被害者だった彼女のほうが、こんどはスペンサーに執拗に接触してくるようになる。
そうこうしてるうちに、殴って言って聞かしたはずの男が、ふたたび彼女に暴行するという事態が起きて、もっと効果のある抑止策をスペンサーは考えなければいけなくなってくる。
「彼女になんと約束したの?」と訊くスーザン、長年スペンサーと一緒にいるので、スペンサーのことだから彼女となにか約束を取り交わしたに違いないとわかってる。
その男に二度と煩わされることがないようにすると約束していたスペンサーは責任を感じている、「おれは約束した」と。
どうするのか多分すこしだけ心配したスーザンは、「どの程度強硬にやるつもりなの?」の後に、「ホークはどうなの」と訊く。
それに対してスペンサーは、「だめだ。ホークが約束したのではない。おれが約束したんだ。自分がやりたくないからといって、彼になにかを頼むことはできない」と宣言する、こういうとこ相変わらずカッコイイ。
どうでもいいけど、初期作品のころからもあったと思うが、事件の舞台が大学って設定よくあるような気がしてきた。
スペンサーが、若者から見たらかなりオジサンなのに、若い女子学生なんかに対して、ひとつ俺の魅力で話を聞き出してみせようみたいな感じで話をきいてまわるシーンは、昔も今もけっこうおもしろい。