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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

野良犬トビーの愛すべき転生

2020-07-18 18:30:48 | 読んだ本

W・ブルース・キャメロン/青木多香子訳 平成二十四年 新潮文庫版
つい最近のことだが、リサイクル書店で文庫の外国作家ものの棚をボヤーっと見てると、本書のタイトルの背が数冊、目に入った。
おや、これって、もしかして、あれぢゃないかな、と引き出してカバーの表紙みると、やっぱそうだった。

『僕のワンダフル・ライフ』(2017)って映画をテレビ録画して観たのは、ちょっと前だった。
べつに何の予備知識もなくて、なんとなく、犬を使ってるらしいのに興味はあり、ひまつぶしのつもりで選んでみたのだが。
最初のうちは、犬に喋らせたりって反則だよな、とか、ひどい犬の飼い方だ、人間がボスにならなきゃダメだ、とかブツブツ言ってたんだけど。
最後のほうになると、なんたって犬好きなもんだから、もう、犬がんばれー、とか、犬よかったなー、とかって感情に支配されてウルウルする破目になってしまった。
なので、原作があるんだ、ってことに気づいたら、読んでみたくなってしまったのはしょうがない。
原題「A Dog's Purpose」は2010年の作品、著者のほかのものは知らないけどコラムニストらしい。
映画とは微妙にちがうけど、大筋はいっしょでした。
すてきなアイデアとして、犬が転生、生まれ変わります、何度も何度も。
六道輪廻とはちがうよね、人間が畜生道におちるとかぢゃなく、犬が生まれ変わっても犬だから、どこまでいっても犬。
それで、語り手が犬、有名な「猫」がいる日本以外の国で、動物の視点から物語書くような発想がでてくるとは思わなかったけど。
はじめは野良犬として生まれて、なんかそういうのの飼育場やってる人に拾われる、トビーって呼ばれる。
母犬が去ってしまい、きょうだい犬と残されるんだけど、そこで
>人生とは、それがどんなものかがわかった途端にまた変わってしまう、僕はそう思い始めていた。(p.48)
ってことに気づく、たいした悟りですな、まだ子犬なのに。
そうこうしているうちに死んぢゃう、たぶん人間の都合、残念だねえ。
ところが、ゴールデン・レトリーバーに生まれ変わる。
前の一生をはっきり覚えてるのに、母親のおなかのとこでもぞもぞするしかない子犬からまたやりなおし。
で、いろいろあって、8歳の少年イーサンに飼われることになる、運命の出会い、ここがメインの人生。時代は人間が初めて月に降り立ったころ、場所はミシガン州のどっか。
ベイリーって名付けられ、いい子だってホメられたり、悪い子だって叱られたり、ドジな子と言われたりしながら、犬と少年は仲良く暮らす。
いろいろアクシデントもあったけど、そうやって長年つれそって、
>僕の目的は、一生を通じて、彼を愛し、いつも一緒にいて、彼を幸せにすることだった。(p.243)
って境地にベイリーは達する、いいねえ。
でも犬と暮らして何が悲しいかって、犬のほうがトシとるの速いんだよね、人の1年が犬のなかでは7年だっけ、だいたい。
最初は8歳の少年と生まれてすぐの子犬だったのに、犬の寿命のほうがずっと先に終わる、それはしかたない。
かくしてだいぶ大人になったイーサンにみとられて、ベイリーは大往生。
でも転生する。こんどはメスのシェパードに生まれる、もちろんイーサンはどうしただろうとか前世の記憶はある。
こんどは警察犬エリーとして訓練されて、多くの人を救助して英雄犬になる、この人生はわるくないと思う。
それでもやがて年老いて死んぢゃう、ところがやっぱり生まれ変わる、こんどは黒のラブラドール・レトリーバー。
血統書つきらしいけど、何故か売れ残って、あまりよろしくない飼い主がついたが、すぐに捨てられてしまう。
ところが、捨てられてからあてもなく腹減らして歩いてると、ベイリーだったときに少年イーサンと来たことのある場所に気づく。
そこからイーサンの家を探し当てて、運命の再会、かつての少年は半分隠居している老人になってたけど。
犬のほうは前世の記憶あるけど、人間から見たら犬種はちがうし、だいいち転生するなんて知りっこないから、最初はどっか保護施設にやられちゃいそうになるけど、結局飼ってくれることになる、そういう運命。
再会できてめでたしだけでなく、犬としての自分の目的は少年を幸せにすることだって信念は変わらず持っているから、あまり幸せそうぢゃない今の彼のためにひと肌脱ぐことになる、偉いぞ、犬。
いやー、ストーリーだけぢゃなく、いいんだよね、ところどころ出てくる犬の感情の描写のようなものが、単純なエピソードのようなとこでもときどきツボにくる。
同意を示すために尻尾を振った、とか、これはどういうゲームだろうかと思った、とか、まあ考えてそうなことだなってのもいいが、迷子になってピンチな状況で、「一番いいのは、家に帰ってもっとチキンを食べることだと思った(p.155)」なんて犬らしい結論を出してくると、カワイイとしか言いようがない。
でも、人間を観察していて、「2人の間にはあふれんばかりの愛があって」とか「僕は若干の悲しみが彼から漂い出ているのを感じた(p.228-229)」とか、するどい洞察力を発揮して対応考えたりしてると、ホントかどうかは知らんが犬好きとしては単純に信じてしまう。
「僕は、彼女を慰めたい気持ちと、車に乗らなきゃという思いとの間で引き裂かれた(p.299)」とか、いいですねえ。
ああ、そうそう、この犬は車に乗るのが好きっていう性格です、それも荷台のケージなんかぢゃなく、人といっしょの前部座席がお気に入り、何回生まれ変わっても、いいなあ、そういうの。

(↑二枚重ねのカバーの映画の宣伝版のほうをはがすと、これが本来のカバー。)


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