町山智浩 2012年 ちくま文庫版
町山さんの書くものはおもしろいので、映画評論以外のものも読んでみたくなった。
副題は「アメリカが最もバカだった4年間」、具体的には2000年から2004年まで。
ゴタゴタの選挙でブッシュが大統領になっちゃって、911でヒステリックになって、イラクに戦争しかけて、ブッシュが再選しちゃうまで。
4年間に新聞とか雑誌に載せたエッセイを集めて、2004年に刊行した単行本に、文庫では「2004年大統領選挙日記」が加えられたようで。
著者は当時家族といっしょにオークランドに住んでたそうだけど、
>住んでから一年以上経ってようやく、ここがどういう場所なのかわかってきた。早い話、全米で最も危険な街だったのだ。(p.123「三丁目はもう戦争です!」)
なんて怖いことになってる、2002年に人口40万の都市で殺された人が102人だって。
そのへんは長引く不況とかが関係してるらしいけど、それにしても、そのころの戦争イケイケの翼賛体制になってるアメリカのさまは不気味だ。
テキサスでゴッド・ブレス・アメリカの歌が流れたときに起立しなかった少年が群衆に袋叩きにされるとか、60歳の弁護士が「戦争反対」ってTシャツを着てたらニューヨークのショッピングモールで入店拒否されて、抗議したら逮捕されちゃったとか。
あと、勉強になるのは、アメリカのメディアってのは支配してる資本で偏ってるってことについて。
FOXニュースってのは、ブッシュべったりで、その視聴者は他のニュースを見てる人より、イラクに大量破壊兵器があったと信じてるひとが多いとか。
アメリカ軍を讃美するばっかりで、イラクの民間の被害なんか絶対に報じなかったそうで、FOXとCNNぢゃ全然スタンス違うって、どっちも見たことないからピンとこないけど。
でも、そこんとこでメディア企業を買収して覇権争いになってるさまを、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』って映画を引き合いに出してくるのは、さすが映画評論家らしい。
メディアの変化について、もうひとつあげられてるのは、ラジオのこと。
クリア・チャンネルというブッシュを支援してるテキサスのラジオ局が、全米の6割を買収して、リベラルなDJや企業のCMを無くしていった。
コンサートのプロモーターから金をうけとり、レコード会社が予算をかけた曲だけをガンガンかけつづけるという放送スタイルになったそうな。
で、たまにトークをする人物がでてくると、これがいわゆる右翼DJ、愛国心を鼓舞して、マイノリティを罵倒する。
これが、意外にもけっこう影響力あるらしく、選挙なんかで片方の候補者への支持を呼びかけるとリスナーは現実に動くらしい。
>それにしても、今やハワードこそがアメリカ、いや、世界の運命を決める大統領選のカギを握っているのだ。世界でいちばん下品なDJが!(p.270-271)
って著者はいうんだけど、そのあとに「これだから、やっぱりアメリカって好きさ。」って言うのがいいねえ。
あと、2004年に、ブッシュを落選させるために『華氏911』をつくったマイケル・ムーアがよく登場するけど、彼の発言はおもしろい。
2002年のイラク開戦前に、ブッシュが「アメリカは絶対に負けない」とか言ってるのに対して、
>しかし、絶対に負けないなら、それは戦争じゃない、侵略とか虐殺と呼ぶんだよ(p.114「「僕はニュースを読み上げるだけのニュース・キャスターじゃない。人間だ」」)
って言うのは、鋭いと思う。
ちなみに著者は、ムーアへのインタビューのときに、1971年の映画の引用を指摘して、
>今まで数え切れないほどのインタビューを受けたけど、『オメガマン』を使った理由に気づいたのは君だけだ。ありがとう!(p.110同)
って喜ばれるオタクぶりを発揮している。さすがだ。
町山さんの書くものはおもしろいので、映画評論以外のものも読んでみたくなった。
副題は「アメリカが最もバカだった4年間」、具体的には2000年から2004年まで。
ゴタゴタの選挙でブッシュが大統領になっちゃって、911でヒステリックになって、イラクに戦争しかけて、ブッシュが再選しちゃうまで。
4年間に新聞とか雑誌に載せたエッセイを集めて、2004年に刊行した単行本に、文庫では「2004年大統領選挙日記」が加えられたようで。
著者は当時家族といっしょにオークランドに住んでたそうだけど、
>住んでから一年以上経ってようやく、ここがどういう場所なのかわかってきた。早い話、全米で最も危険な街だったのだ。(p.123「三丁目はもう戦争です!」)
なんて怖いことになってる、2002年に人口40万の都市で殺された人が102人だって。
そのへんは長引く不況とかが関係してるらしいけど、それにしても、そのころの戦争イケイケの翼賛体制になってるアメリカのさまは不気味だ。
テキサスでゴッド・ブレス・アメリカの歌が流れたときに起立しなかった少年が群衆に袋叩きにされるとか、60歳の弁護士が「戦争反対」ってTシャツを着てたらニューヨークのショッピングモールで入店拒否されて、抗議したら逮捕されちゃったとか。
あと、勉強になるのは、アメリカのメディアってのは支配してる資本で偏ってるってことについて。
FOXニュースってのは、ブッシュべったりで、その視聴者は他のニュースを見てる人より、イラクに大量破壊兵器があったと信じてるひとが多いとか。
アメリカ軍を讃美するばっかりで、イラクの民間の被害なんか絶対に報じなかったそうで、FOXとCNNぢゃ全然スタンス違うって、どっちも見たことないからピンとこないけど。
でも、そこんとこでメディア企業を買収して覇権争いになってるさまを、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』って映画を引き合いに出してくるのは、さすが映画評論家らしい。
メディアの変化について、もうひとつあげられてるのは、ラジオのこと。
クリア・チャンネルというブッシュを支援してるテキサスのラジオ局が、全米の6割を買収して、リベラルなDJや企業のCMを無くしていった。
コンサートのプロモーターから金をうけとり、レコード会社が予算をかけた曲だけをガンガンかけつづけるという放送スタイルになったそうな。
で、たまにトークをする人物がでてくると、これがいわゆる右翼DJ、愛国心を鼓舞して、マイノリティを罵倒する。
これが、意外にもけっこう影響力あるらしく、選挙なんかで片方の候補者への支持を呼びかけるとリスナーは現実に動くらしい。
>それにしても、今やハワードこそがアメリカ、いや、世界の運命を決める大統領選のカギを握っているのだ。世界でいちばん下品なDJが!(p.270-271)
って著者はいうんだけど、そのあとに「これだから、やっぱりアメリカって好きさ。」って言うのがいいねえ。
あと、2004年に、ブッシュを落選させるために『華氏911』をつくったマイケル・ムーアがよく登場するけど、彼の発言はおもしろい。
2002年のイラク開戦前に、ブッシュが「アメリカは絶対に負けない」とか言ってるのに対して、
>しかし、絶対に負けないなら、それは戦争じゃない、侵略とか虐殺と呼ぶんだよ(p.114「「僕はニュースを読み上げるだけのニュース・キャスターじゃない。人間だ」」)
って言うのは、鋭いと思う。
ちなみに著者は、ムーアへのインタビューのときに、1971年の映画の引用を指摘して、
>今まで数え切れないほどのインタビューを受けたけど、『オメガマン』を使った理由に気づいたのは君だけだ。ありがとう!(p.110同)
って喜ばれるオタクぶりを発揮している。さすがだ。